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上位魔導師になりたくて!・一次試験【19】 

『わ、わわわ……分かりました! 分かりましたから、その手を退けてっ!? その手から出て来る、魔王染みた魔力を私に照らすのはやめて! これでもノミの心臓なんですから! 人工精霊だから心臓とか本当はないけど! でも蚤の心臓なんですからっ!?』 


 かなり必死になって叫ぶタマコ九号がいたので、私も右手を降ろしてやる。

 それにしても、人工精霊には心臓がないんだな。

 果てしなくどうでも良い知識だが、一つ勉強になったよ。


「それで? 今回の試験はどんな物だ?」


「そうだね。そこは私も気になっていたよ」


 嘆息混じりに答えた私がいた所で、隣にいたフラウも口を開いて来る。

 きっと、試験内容を言う所まで話が進まない限り、何番煎じになるのか分からない、使い回しのボケに付き合わされると思って、今まで口を動かさなかったのだろう。

 実に賢明な判断ではあるんだが、それを私にさせないで欲しい……私が疲れる。


『はい、今回の試験は、試験者の実力が高ければ高いだけ、難易度が上がる試験です』


「……は?」


 タマコ九号の台詞を耳にして、私は頭にハテナを浮かべて見せる。


「どう言う事ですか?」


 他方のフラウも良く分からなかったらしく、やっぱり不思議そうな顔になってタマコ九号へと尋ねていた。


『答えは簡単です。特にナゾナゾ的な物ではなく、そのままと述べた方が良いですね? まぁ、直接見せた方が早いでしょう。百聞は一見に如かずと言いますからね』


 そこまで答えたタマコ九号が右手を向けると、


 ポンッッッ!


 私達から少し離れた所で、白い煙が巻き上がる。

 そこからしばらく後に……タマコの言いたい事が分かった。


 何故か?


 私とフラウが出て来たからだ。

 

 びっくりするまでにソックリだ。

 ただ、瓜二つ過ぎる事を考慮してか? 服装はタマコの着ている魔導師のローブを身に付けている。


 これで、オリジナルの私やフラウと見間違える事はない。


 それを抜かせば、気持ち悪いまでに本物ソックリだった。


「あれ? おかしいよ? 私の胸が……ちょっと平たくない? 少しオリジナリティーに欠ける気がする」


 真剣な顔してふざけた事を抜かすペッタン子がいたけど、疲れていたので軽く聞き流す事にした。


『え? おかしいですね……ちゃんと試験者の身体的なデータに忠実な形で造形された魔導人形ゴーレムの筈なんですが……』


 ああ、あれは魔導人形ゴーレムだったのか。

 最初はドッペルゲンガーの類いかと思ったぞ。


『えぇと……データと照らし合わせます……あああ! 本当だ! フラウさんのバストが、オリジナルより数センチ大きく設定されてます! ここは修正しないと!』


「そうでしょう、そうでしょう! 私の胸はもっと小さくしないと…………って、違うからっ! 逆だからっ! ねぇ? あなたの目は大丈夫? 眼科に行く? 眼科の先生ならちゃんとあなたの目を治してくれると思うよっ!」


 その前に、お前の目を覚ました方が良いと思う。


 半べそになって叫んでいたフラウを前に、私は飽きれ半分のまま聞き流した。

 こんな会話になんか入りたくないからだ。

 

 そもそも、魔導人形ゴーレムの胸がボインであってもオリジナルのお前の胸が大きくなる訳でもなんでもないんだからな?

 どうして、そこまで本気で必死になれるんだか……。


『……あ! リダさんの胸もオリジナルより数値が大きかった……すいません! 重ね重ね申し訳ない! こちらも早急に修正しますから!』


「そこはしなくて良いから! むしろ、あれで本来の私より小さいとか……正気なのかっ!? 良く見ろ! 大体同じだろっ!? むしろ小さいぐらいだろっ! ちゃんと正確に修正しとけっっ!」


 いや、やっぱりダメだな!

 こう言うのは、やっぱり一定のクオリティを出す為に、本物そっくり……いや、ほら、多少の脚色が必要じゃないのかっ!?


 その後、私とフラウの抗議により、私とフラウの意思に忠実な魔導人形ゴーレムが出来上がって行く。


 その結果、


『いやぁ……これは無理があるんじゃないんですかねぇ?……リダさんの方は、多少本格的なパッド入れれば、まだ現実的にあり得る感じですけど、フラウさんの方は……豊胸手術でもしない限り無理なボリュームになっている気がするんですよ?』


 タマコ九号が苦言を呈する様なフラウが出来上がっていた。

 

 正確に言うのなら、己のアイデンティティーを捨てたらこうなるの図とも言うべき、フラウっぽい何かがいた。


 いくら何でも、これはないな。


「……何か?」


 しかし、貧乳を断固として認めないフラウは、殺意の波動に目覚めたかの様な凶悪な視線を向けつつ、脅迫めいた眼光でタマコ九号を黙らせていた。


 ……いや、もう。

 貧乳の末路と言うか……末期の様な顔は、きっと……こう言うのを言うんだろうな。

 私はこんな顔なんか絶対にしないで置こう!

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