上位魔導師になりたくて!・一次試験【11】
レベル1をクリアし、加点5を貰った私達は、順序良くレベル2の試験へと挑む。
レベル2の箱が置かれた場所に立つと、レベル1の時と同様に試験精霊が出現する。
見た目はさっきの精霊と同じだった。
『はい! こちらは毎度お馴染みの試験精霊こと、人工精霊タマコ二号が担当します!』
でも、どうやら違う精霊の様だな。
タマコ2号とか言ってるし。
良く分からないが、今回の試験官でもあるタマコは精霊術を得意としているのかも知れない。
何体の人工精霊を作り出しているのか知らないが……この調子であれば箱の中に一体ずつ人工精霊タマコが入っているのだろう。
そうなると、最低でも十体の人工精霊タマコがいる事になる。
これだけでも精霊術を操る者として、結構な熟練を有する。
きっと、それ以外にもタマコがいるかも知れない……と言う部分を加味すれば、やっぱり今回の試験官は、単なる卵マニアではないと言う結論に達するだろう。
性格は今一つ良くはないけどな?
そこはさて置き。
『最終確認です。このレベルで良いと言うのなら、はいまたは……』
「はい!」
人工精霊・タマコ二号が言葉を終わらせるより先に、私が返事をした。
本当は受験者であるフラウが返事をしないと行けないんだけど、私が即行で頷いた。
『は、はやっ!? 良いですか? まだ説明は終わってないのです! ちゃんと! しっかり! 最後までしっかりと聞いてから返事をして下さい!』
「……いや、それはさっきやったから。二回もやる様なネタじゃないから」
『はわっ! 想定外な返事がやって来ました! 理由は良く分かりませんが、恐ろしく屈辱的な何かを感じます! 何故かと言うと、これは私が最初に編み出した言葉のマジックでもあるからです! つまり? 他の人工精霊がやった二番煎じ、三番煎じと同じにして貰っては困るんですよっ!? オリジナルは私なのですから!』
目をミミズにして、完全に白けた顔の私へと、タマコ二号は必死になって訴えて来た。
オリジナルは私だと言われてもねぇ……。
仮にそうであったとしても、だからどうしたとしか言えない。
この調子だと、毎回こんな微妙な空気が流れるのかなぁ……と、辟易していた時、
「イエッサー!」
フラウが敬礼してみせた。
『早いからっ! まだ、そのネタを振ってないからっ!』
直後、タマコ二号がフラウにツッコミを入れた。
……やっぱり同じネタなんじゃないかよ。
「もう良いだろ? ちゃんと最終確認も取れたんだ。早く試験を開始してくれないか?」
『し、仕方ないですね……じゃあ、始めましょうか』
タマコ二号は渋々ながらも頷きを返した。
『私がオリジナルなのに……私が元祖なのに……』
何やらブツブツと……念仏でも唱えているかのようにぼやいていたタマコ二号が、両手を上に向けた時だった。
ブゥゥゥンッッ……
私とフラウの周囲に、直径十五メートルはあるだろう、巨大な魔法陣が出現する。
……なんだこれは?
魔法陣から浮き上がって来る魔導式から察するに、何らかの結界である模様なのだが……?
「うーむぅ……」
私が手で顎の辺りを触りながら声を吐き出していると、眼前にタマコの様な存在が出現する。
一見すると、タマコ本人にも見えなくはないのだが、実際にしっかり良く見ると、それがタマコではない事が分かる。
タマコと同じく、魔導師のローブみたいな物を着てはいるのだが、根本的に色がない。
厳密に言うと、全身が水色で統一されていた。
ここから判断するに、何らかの魔法で構築された存在なのではないかと予測する事が出来る。
『今回の試験は、この魔法陣の中で、今出て来た人工魔導兵のタマレイバー・レベル1と戦って貰います』
ああ、そう言う試験なのか。
それにしても……タマレイバーか。
「ちょっと、名前が危険な気がするんだが? 気のせいか?」
『気のせいです! こっちは魔導師ですから! 悪事と戦う訳ではありませんから!』
そう言う問題なんだろうか?
ともかく、これ以上掘り下げると危険なワードが出て来そうだから、ここまでにして置こうか。
『魔法陣に描かれている魔導式を見れば分かるかも知れませんが、この魔法陣は強力な結界になっており、かなり強力な壁になっているので、そこから外に出る事は極めて困難な状態です』
つまり、ここから外に出たいのなら、目の前に出て来た人工魔導兵を倒せ……と言いたい訳か。
なるほど? シンプルで良いな。
『今回の相手でもある人工魔導兵・タマレイバーのレベルは1なので、そこまで強くはありませんが……バカにして掛かると、アッサリやられますよ? レベルは1でも魔導兵と呼ばれるだけの能力はありますから!』
タマコ二号は、真剣な顔で私達へと警告半分の注意を促した。
そこも又、分かり易くていいな?
要は、あれだろ?『ふははは! コイツは四天王の中では最弱!』とか言うアレと同じだろ?
弱くはないけど、あんまり強くもない……的な? そう言う微妙な立ち位置な訳で。
まぁ、そこに関しては、実際にやって見れば分かる事だ。
ここも又、実にシンプルで、分かり易い話だな。




