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上位魔導師になりたくて!・一次試験【10】 

『ああ、一撃であれば何発撃っても大丈夫ですよ? あの的は特殊な素材で出来ているので、100ポイント未満のダメージであった場合は数秒で修復されます。失敗した場合は数秒程度の時間さえ置いてくれば、何回でも挑戦して貰っても結構ですよ?』


 ……ほう。

 それはまた……随分とサービスが良いな?


 上位魔導師アークウィザードの試験は、私の知る限りで世界でも難関中の難関とも言える試験だと記憶していただけに、そこまで良心的な事を言って来るとは思っても居なかったのだ。


「今回の試験は、かなりやさしいな? 少し驚いたんだが?」


『今回の試験はまだ一次試験ですからね? 何より、その一次試験の一番簡単なテストですから』


 なるほど、言われてみればそうだな。


「……これで一番簡単なのか……」


 他方、試験精霊の話を耳にして、フラウの表情が見る間に蒼白へと変化して行くのが分かった。


 ……やれやれ。


「実際、簡単だぞ? フラウ? 私がお手本を見せてやる」


 コイツのテンションを少しでも回復させてやる為に、私は試験精霊の用意した的に向かって右手を向けると、


 サンダーアロー魔法!


 雷で出来た一本の矢を出現させる。

 私の魔法で生まれた雷の矢は、そのまま勢い良く的に向かって行くと、


 バリバリバリィィィィッッ!


 的に矢が衝突した瞬間、雷の一撃を受けて派手なスパーク音を放っていた。

 

 落雷を受けた感じになってしまった的は、一瞬で消滅してしまう。


『…………』


 試験精霊、唖然。


「……こんなの、リダしか出来ないし?」


 フラウは白けた目になってぼやきを入れた。


「今のは100を越えてるだろ? ちなみに幾つだったんだ?」


『え?……は、はい……測定結果は……』


 ともかく、お手本程度にはなったと思った私は、試験精霊にそれとなく聞いて見ると、


『…………測定器が壊れました』


 試験精霊は苦々しい顔になって答えて来た。

 

「……随分、脆い測定器を使ってるんだな? これは試験なんだからちゃんと良いのを使えよ?」


『十分な強度の測定器を使ってますよ! 今のなんて、普通ならドラゴンのブレスにすら耐えられるレベルの装置でしたからね!? 普通に考えて、雷の矢魔法で破壊出来る代物じゃないですからねっ!?』 


 試験精霊は半べそになって叫んでいた。

 何も泣く事はないだろうに。


『はぅぅ……どぉぉぉしてくれるんですかっ!? あの的は、次に今の試験を受ける事になった時、別の試験者も使う予定だった的なんですよっ!? 今から新しいのを準備するとか……無理ですからね!』 


 ああ、だから泣きべそなのか。

 それは少し悪い事をしたな。


 ……ん? すると?


「もしかして、この試験は続きが出来ないって事か?」


『当たり前じゃないですか! 測定器でもある的を破壊しちゃったんですから!……それに、あなたはフラウさんの相棒でもあるので、今回の試験はクリアしてます!……してますけど、機材を破壊するのはやめて下さい!』


 試験精霊は、半ば懇願する形で私に答えて来た。


 ……私だって、好きで壊した訳じゃないぞ。

 そもそも、中位魔法程度の一撃を受けただけで、簡単に壊れてしまう様な脆い装置を使ってた方が悪い!……と、私は言いたいね!


「良かった……やっぱり、リダは会長と言うより魔王だよね……」


「誰が魔王だ! つか、結局お前は何もしてないだろうがっ!」


 まずは、レベル1をクリアした事で安堵するフラウへと、私は今の心情をありったけ乗せた言霊を放ってみせた。


 フラウの口がへの字になる。


「私だって、本当はちゃんと試験を受けるつもりでいたんだよ? リダが的を壊すから悪いんだよ!」


 ……う。

 ヤバイ、正論だった。


「……ま、次に行こうか?」


 私は、敢えてこれ以上の言及を避ける形で、次へと向かう。


「ちょっ!? ごまかさないでよっ!」


「別にごまかしてないぞ? 強いて言うのなら、時代が悪い」


「どうして時代が出て来るのっ!?」


「分かった、分かった……ああ、はいはい。私が悪かったですー! 次はしませーん!」


「うぁ……何? この言い方? 全然反省の色とかないし……むしろ殴ってやりたくなるんだけど?」


 フラウは眉をねじった状態で、しつこく私へとねちっこい言葉を飛ばして来た。

 ああ、本当に面倒なヤツだなっ!?


「ともかく次だ次! 一応、制限時間だってあるんだ。難易度の高い試験があるかも知れないから、サクサク行くぞっ!」


「……もう、調子が良いなぁ……」


 完全に話を反らす形で言う私に、フラウは少し呆れる形で声を返した。

 しかし、それ以上の反論には至らない。

 実際に、私の言っている事にも一理あると思ったからだろう。


「次は、私がやるよ。レベルは2で!」


 地道大好きフラウは、順序良く次のレベルを提示していた。

 堅調に、次のステップを順序良く踏むのがフラウスタイルではあるんだが……こう言うのは、やっぱり性格が出る物だな。


 私なら、きっと……いきなり9か10をやりそうだ。

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