上位魔導師になりたくて!・一次試験【4】
試験がまだ始まってもいないと言うのに、早くもチームワークは最悪の状態になっていた。
しかし、こちらとしても譲れない。
もしコンビ名が『胸無し』で決定してしまったのであれば、今後、この試験が終わるまでの全ての期間、ずっと胸無しと言うコンビ名で呼ばれる事になるのだから。
次の順番は、胸無しさん達です!……とか、こんな感じで言われるんだろう?
良い成績を取って、その試験を通過しても『頑張りましたね、胸無しさん!』とか言われるんだろうし、逆に不合格を受けたとすれば『この度は、残念ながら胸無しさんは不合格となりました』とか言って来る事になるのだろう。
違う意味で残念過ぎて草しか生えないわっ!
「ともかく、もっとマシなコンビ名にしてくれませんかねぇ?……と、言いますか? これは完全なる名誉毀損レベルの発言だと思いますし? もう少し真面目になって貰えません?」
苦々しい顔になって言う私がいた頃、卵マニアが面倒臭そうな顔になって眉を寄せた。
「えぇ……良いじゃないの? 二人とも胸無いし? 他の人達も分かり易くて良いと思うんだけど?」
もう一回、爆破してやろうか?
さっきは相手が試験官だと言う事も考慮して、下位の爆発魔法にして置いたが……次はお前が消し炭になるレベルの爆破魔法を叩き込んでやっても良いんだぞ?
心の中で悪態を吐く私がいたが……むやみやたらと減点喰らって不合格になんぞなったら、フラウに一生恨まれそうだったので、どうにか爆破したい欲求をグッと堪えてみせる。
「ともかく、別のにして下さい……お願いします」
私はペコリと頭を下げる。
どうして私が、こんなおかしな理由で頭を下げないと行けないんだろう……理不尽と言うレベルを大幅に超過している気がして仕方ない。
「分かったわ……しょうがないわねぇ……じゃあ、コンビ名は違う物にしましょう」
真摯的な態度を柔軟に見せた私を見て、卵マニアも態度を軟化して来た。
これには、隣にいたフラウも少し安堵の息を吐き出していたのだが、
「じゃあ、コンビ名は『五十歩百歩』で!」
間もなく答えた卵マニアの言葉を耳にして、吐いた息をそのまま飲み込んでしまった。
五十歩百歩コンビ。
……いや、まぁ。
何を指しての五十歩百歩なのかを明らかにしていない分だけ、さっきよりはオブラートに包んでいる部分があるのだが……これ、絶対に枕詞が隠れてるだろっ!?
実はこれ『胸が』五十歩百歩コンビだろっ!?
「一つ聞きたいのですが……何を意味しての五十歩百歩なのですか?」
「え? それを聞いちゃう? ダメよ? 世の中には知らない方が良い事だって、沢山あるのだから」
苦々しい顔になって尋ねた私に、卵マニアは少しばかり上擦った声を吐き出して来る。
確かに、知らぬが仏と言う諺があるぐらいなのだから? 世の中には知らない方が物事が良く流れる事だってあるだろう。
だが、しかし!
これは、どう考えても分かり易いぐらい、五十歩百歩の意図が見えているだろう!
つか、隠す気なんかないだろ! バカなんじゃないのかっ!?
「ともかく、その名前も却下です。コンビ名は私が二人の特徴で決めます」
嘆息混じりになって私は言った。
本当は、バレバレの枕詞を卵マニアの口から引き出してやりたい気持ちもあったのだが、実際にその言葉を耳にした日には、衝動的に超炎熱爆破魔法を放ちそうだったので、敢えてそうとだけ口にして置いた。
「……なら、早く決めて頂戴? 本当なら試験が始まってる時間だけど、まだ全然進んでいないんだから」
卵マニアはボディーランゲージで『困った人だ』と言うばかりにやれやれとやっていた。
時間が押してるのは、お前が遅刻して来たせいもあるだろうっ!? 自分の事は棚に置くとか……どんだけ面の皮が厚いんだ、この試験官は!
図々しさが何歩も先に行ってい卵マニアを前にし……後で、絶対に何か仕返しをしてやると、心に深く刻みつつも……私はアレコレと自分達のコンビ名を考えようとしていた時だった。
「ブロンド&シルバー……ってのはどう?」
フラウが、私達へと提案する形で声を吐き出して来た。
ブロンド&シルバー。
これが何を示しているのか?
答えは二人の髪型だ。
鮮やかなブロンドの髪をしているフラウと、完全なる銀髪……つまりシルバーだった私。
この二人の髪から取ったのが、ブロンド&シルバー……と言う事になる。
「うん、良いんじゃないか?」
フラウの言葉に、私は素早く頷いて見せた。
少なくとも、胸無しコンビとかよりは、断然良かった!
胸が五十歩百歩コンビよりも格段分かり易いコンビ名でもある。
特に後者は意味不明だと思ってたんだ。
だって、フラウの胸と同じレベルとかさ? もう、訳が分からないよ!
「えぇ……分かりにくくない? それなら、プロポーションが五十歩百歩の方が分かり易いコンビ名だと思うんだけど?」
胸だけに止まらず、プロポーションが五十歩百歩とかほざく卵マニアがいた所で、私は右手をフルフル震わせながらも……震えた右手を必死に左手でおさえていた。




