上位魔導師になりたくて!・一次試験【2】
別れ際、皆がフラウと私へと、思い思いのエールを送って来た。
最初に口を開いたのはメイちゃん。
メイちゃんは、とびきりの笑みを満面に浮かべ、
『リダお姉ちゃん! フラウ先輩! 頑張って!』
グッジョブしながら、最大限のエールを送っていた。
フラウの顔に自然と笑みが生まれていた。
こう言うのって……なんか、良いよなっ!
『フラウは頑張って! リダは……程よくガンバ!』
直後、メイちゃんに負けない程の爽やかさで上品にエールっぽいのを言って来たルミ。
どうして私は程よくなんだ?
相変わらず、この天然ボケのお姫様は、意味不明な台詞を言って来るなと、内心で苦笑していると、
『フラウさんは全力で丁度良い結果が出ると思います。リダさんは手を抜く程度で丁度良い結果が出ると思います……と言うか、無駄に気合いを入れて建物が崩壊されたら迷惑なので、むしろ適当にやって下さい。大惨事よりマシですから』
ルミの言葉に補足を入れる形でルゥがこんな台詞を口にして来た。
しれっと、酷い事を言ってる気がするのは気のせいではあるまい。
ルミと言い、ルゥと言い……このお姫様コンビは私を魔神か何かと勘違いしているんじゃないだろうか?
失礼極まる二人の応援(?)を受けつつ、私は受け流す感じで返事をしていた頃、
『アリンも行くおぉぉっっ! か~たまばっか、ずっこい! 美味しいの独り占めする気だおーっ!』
食欲の権化が、何か騒いでいた。
三歳にして、早くも美食に目覚めてしまったのか?
どんな物事にも、強引に食べ物を絡めて来る三歳児の姿があった。
私が行く所、必ず美味しい何かが転がっていると勘違するのは良くないと思うんだが?……つか、どうしてそう言うおかしな見解を示す様になってしまったと言うのか?
これは、少し教育方針を改めないと行けないのかも知れない。
こんな事を、ふと考えていた私がいた所で、近くにいたユニクスとメイちゃんの二人が、アリンを宥める役を買って出ていた。
こう言う時は、色々と準備をしているユニクスが居てくれたのは有り難い。
有り難いんだが……だ?
間もなく私の口がへの字になってしまう。
じたばたもがくアリンを、ユニクスが手際よく簀巻きにしていたからだ。
ひとの娘に、何をしてくれちゃってるんだ、コイツわ!
アリンが我が儘全開で『アリンも行くおぉぉっ!』と、捲し立てる中……面倒になったユニクスが、何処から持って来たのか? ロープと布団でアリンを即席ミノムシにし、
『では、リダ様。吉報を心よりお待ち致しております!』
私に向けて、爽やかにグッジョブなんぞしていた。
私の娘を簀巻きにしている状態で、どうしてそこまで爽やかな笑顔を作る事が出来るんだろうか? この悪魔勇者わっっ!?
ハッキリ言って、色々と物申してやりたい気持ちが一杯あったりもするが……今は、実地試験の手続きを優先しなくてはならない。
思った私は、微妙に不本意ながらもユニクスへとグッジョブを返してから、試験の受付へと向かって行くのだった。
……と、まぁ。
この様な経緯を経て、建物の外にあるのだろう一次試験の会場へとやって来た私とフラウ。
見る限り、魔導師組合の敷地内っぽい場所でもあるそこは、見事に広いグラウンドの様な場所だった。
良く手入れされているそこは、雑草一つ生えていない、まっ平らな広場の様な場所で……ちょっとした球技程度なら楽勝で出来そうなスペースが存在していた。
多分、野球とかサッカー程度なら余裕で出来るんじゃないだろうか?
かなり広いスペースがあるグラウンドっぽい場所に立っていた私とフラウなのだが……。
「誰も居ないね?」
キョロキョロと周囲を見渡しながら答えたフラウの言葉通り、そこにいるのは私とフラウの二人しか居ない。
これは一体、どう言う事なんだろうか?
今の自分達の状態と言う物を、今一つ理解していなかった私とフラウは……しばらく、何をする訳でもなく、その場で待ちぼうけする形となってしまった。
それから五分程度の時間が経過した頃、
「ああ、ごめんごめん! ちょっと、朝食を食べてたら遅れちゃった!」
二十歳程度の女性が、魔導師の服っぽい格好をして私達の前にやって来た。
……うむ。
良く分からないが、この魔導師の服っぽい格好をしたお姉さんが、今回の試験での試験官を務める模様だ。
随分とマイペースな雰囲気を全力で醸し出しているみたいだが……大丈夫なんだろうか?
「朝と言ったら、やっぱり目玉焼きじゃない? 私はアレを食べないと、目が覚めないタチでさ? そこの裏にある鶏小屋から毎朝とれる、新鮮な鶏の卵をいつも食べてるんだけどさ? 今日に限っては、中々卵を産まないの! もう、参っちゃったよ!」
そして、遅刻の原因が、鶏の卵が中々産まれなかったから……と説明された私は、どんな返事をするのがベストなんだろうか?
……つか、この試験官は本気で大丈夫なのかっ!?




