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上位魔導師になりたくて!・一次試験【1】 

「さぁ、頑張るよ相棒! 昨日はカレーを作って待ってたけど、戻って来たら満腹状態で贅沢な料理をちゃっかり食べてたりして、少しだけ殺意を抱いたりもしたけど、今日は大丈夫だから!」


 快活な笑顔に反比例する勢いで、根暗な台詞を臆面もなく爽やかに口から吐き出していたのはフラウだ。


 カワ子の一件が終わり、キャンプに戻った私は……妙な反感を買う羽目になって行った。


 理由は主に二つある。


 一つはカレーを作るに当たっての火力でもあるたきぎを取りに行ったメイちゃんが、私達と一緒に山神様の元へと向かってしまった為、調理に必要な火を使う事が出来なかった事。


 ここらに関しては、全くやって来ないメイちゃんに痺れを切らす形で、他のメンバーが薪を集めに行ったらしいのだが……薪集めなんぞやった事がなかったお姫様二人が、普通にそこらの木の枝を折るなどして、明らかに燃えそうにない枝ばかりを手っ取り早く集めて来た物だから、火を起こすのに滅法めっぽう手間隙が掛かったそうだ。


 余談だが、そこらの木の枝をへし折る行為は、モラル的にもNGだ。

 まぁ、こんな事をやるヤツは早々いないとは思うんだがな?


 どちらにしても、そんな水分がたっぷり入ってるだろう枝を使って火を起こそうとするのなら、かなりの苦労を強いられる事は必死だ。

 あげく、中々燃えない物だから魔法で燃やそうとして、危うく食材もろとも消し炭になる所まで行ったんだとか。


 一体、どんなふざけた展開になっていたのか?……現場にいたのなら、きっと頭痛薬が恋しくなる光景が続いたに違いない。


 そして二つ目は、それだけ苦労した状態でありながらもなんとか調理を終わらせ、後は私達がやって来るのを待つだけになっていた所で……しっかりとごちそうを腹一杯食べて来た事実が判明した事だ。


 フラウ達を始めとする、キャンプ組の視点からするのなら、困った川の精霊を助けるために山の方へと向かったと言う事だけ。

 その後に展開された、想定外のおもてなしがある事なんか、もちろん予測する事は出来なかっただろうし……むしろ、ヘトヘトの状態で空腹のまま戻って来るだろうと、わざわざ誰も食べずに私達の帰りを待っていた始末。


 戻って来て早々……フラウやユニクスが、これでもかと言うばかりに爽やかな笑みを優しく柔和に浮かべて来た時……私の心に良心の呵責かしゃくと言うか……妙に申し訳ない気持ちなんかが生まれたりもする。


 だからと言う訳ではないのだが、山神様のおもてなしを受けていた内容を、ある程度まで脚色……もとい、ぼやけた内容で伝え様とする私がいたのだが……荒ぶる三歳児が、鼻息をジェット噴射する勢いでフンフン! と、大興奮状態で有りのままを素直に言ってしまった物だから……まぁ、なんてか、困った物で。


 結局、苦労している私達の事を気遣って、とっくに出来上がっていたカレーを一口も食べずに待っていたフラウ達のフラストレーションは、とんでもない勢いで膨れ上がって行く事になるのだった。


 冷静に考えれば、私達はカワ子の悩みを聞いてやって、しっかりと物事を解決して来たのだから、それ相応の報酬と言うか……美味しい想いをして来ても、そこまで文句を言われる筋合いなんか無い気もするんだが、やっぱり自分ばっかズルい! と言う気持ちもフラウ達にはあったらしく……その日のキャンプは地味にビミョーな空気の中、みんなと一緒に寝袋にくるまって寝る事になって行く。


 そして、翌日。


 今回の冒頭に繋がる、妙にトゲのある台詞を穏和な笑みを作って吐き出して来る……台詞と表情がイコールじゃないのですが? と、何ともツッコミ甲斐のある行為をやってのけるフラウの言葉に繋がって行く。


 多分……この表情と言うか態度と言うか……そう言った物を含め、現在のフラウが示す、嘘偽りのない代物であるのかも知れない。


 ともかく、昨日の事を蒸し返すと……フラウの顔が露骨に根暗な表情になりそうで怖いので、敢えて触れないで置く。


 それに、今の私達は昨日の事でアレコレ言ってる場合ではない。

 元々、この魔導師組合の宿舎でもある場所へとやって来た主目的は、フラウが上位魔導師アークウィザードになる為の試験をしにやって来ていたのだから。


 そして、私は実地試験をやる上で、試験者であるフラウに欠かせないパートナーとして、現在の場所に立っている。


 翌朝、試験会場でもある魔導師組合の建物へと戻って来た私達は、早速軽い手続きを踏んでから、一次試験を受ける方向へと進んで行くのだった。

  

 試験を受ける手続きを済まして間もなく、私達は一枚の紙を手渡された後、魔導師組合の外にある庭園へと案内される。


 他のメンバーとは、ここで別れていた。

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