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怒れる山神【21】

『な、なんだ……今のは?』


 後方に飛んで逃げた山神様は、かなり動揺した状態で口を開いていた。

 無理もないだろう。


 メイちゃんへとトドメの一撃を喰らわせてやろうとしていた瞬間、全く予想もしない所から、謎の大爆発を受けてしまったのだから。

 この一撃によって、メイちゃんは完全に救われた。

 奇しくも、命の恩人となってしまったアリンは、怒り浸透状態で山神様を睨んでいた。


『そこのワンコ! アリンの御飯! ちゃんと弁償して欲しいおっっ!』

 

 叫んだアリンは、怒りの矛先を思いきり明確にするつもりで、山神様へとビシッ! っと、指を差してみせる。


 果たして、怒ったアリンの姿を見て、山神様が唖然とした態度を見せた。


『今の爆発は……お前がやったと言うのか?』


 すぐには信じられないと言うばかりの声音で尋ねて来る山神様。

 誰だって思わないだろう。

 超炎熱爆破魔法フレインダムドを使う三歳児なんて、世界広しと言えどアリンぐらいなんじゃないだろうか?


超炎熱爆破魔法フレインダムドだったら、アリンがやったお! そんな事より、御飯だおぉぉぉっ!』 


 山神様の言葉に頷いたアリンは、そこから心底悔しそうに地団駄を踏んでいた。

 こう言う態度は、やっぱり三歳児クォリティー。

 あんなアホ見たいな魔法を吐き出した後に見ると、余りのギャップの強さに、妙な脱力感すら抱いてしまう。


『……食べる物など、そこのセツナが作って来るだろう。その程度の事で怒るでない』


『……お? ほ、本当?』


『ああ、嘘は言わん。言わんが……』


 そこまで答えた山神様は、好戦的な雰囲気を露骨に醸し出して来た。

 その上で、再び口を開いて来る。


『この私に勝てれば……の、話だがな?』


『お?』


 アリンは目を丸くした。


 きっと、言ってる意味が分からないのだろう。

 きっと、御飯さえ食べられれば、他はどうでも良いのだろう。

 

 こんな娘に、誰がしたっ!?


『ワンコに勝てば良いお?』 


『そう言う事だ』


『ふつーにやれば良いお?』


『本気で来い!』


『お? 本気で良いお?』


『無論だ! 人間ごときが、この私を前に手を抜くなど、千年早いわ!』


 小首を傾げながら答えたアリンを前に、山神様は何処か怒った感じで怒鳴り声を返した。

 もしかしたら、少し馬鹿にされていると勘違いしていたのかも知れない。


 けど、それは違うな。


 アリンは心配したんだよ。

 アンタの身体を……なぁ?


『じゃぁ、本気出すお? ちゃんと御飯は用意して欲しいおーっ!』 


 そうと宣言したアリンは、


 スーパードラゴン呼吸法ブレイズレベル3!


 私の予想を超過した補助スキルを展開…………って、え? えぇぇっ!?


 ちょっ……待て! 待ちなさい、アリンちゃんっ!

 レベル3て! レベル3って!


 お母さんだってレベル2までしか発動出来ないのにぃぃぃっ!


 私の予想すらも凌駕した、まさかのレベル3を発動させた直後、


 ゴォォォォォッッッ!


 アリンの周囲に光の竜巻の様な物が生まれていた。

 瞬時に発生したエネルギーが爆発的過ぎて、周囲に余剰エネルギーがこぼれている現象なのだろうが……そのこぼれているエネルギーすらも莫大過ぎて、余剰エネルギーが竜巻染みた渦の様な物を作り出していた。


 ……あわわ……。


 なんだこれ? ねぇ……こんなの初めて見たんですけどぉっ!?


 ズゴゴゴゴォォォォォッッ!


 程なくして、遅れてやって来る様に大地が揺れる。

 大地のエネルギーがアリンと連動する事で発生する地鳴りでもあるのだが、


 ドボォォッッッンッッ!


 ここが山奥だったからか? 近くにあった火山帯のマグマが地面からド派手に噴射された。


 おふぅっ!


 飛び散るマグマをみた瞬間、私は咄嗟に魔導壁マジックバリアを展開する!

 こんなの触ったら、一瞬で身体が蒸発してしまうっっ!


 思って、咄嗟に魔導壁を展開した私だが、それは杞憂であった事に気付く。

 どうやら、事前に張り巡らしていた山神様の結界がマグマを防いでくれたみたいで、その内側にいた私達に危害が加わる事はなかった。


 ……逆に、結界の外にあった境内は酷い有り様に……。

 

 噴出されたマグマの雨が降り注がれ、まるで大河ドラマの落城シーンみたいな勢いで燃えて行く境内の姿が……って、ああああああっっ!


『…………』


 瞬時に燃え広がる境内を見据えていた山神様が白目状態になっていた。

 何となく卒倒している様にも見える。


 まさか、こんな事になるとは思ってもいなかったのだろう。


 しかし、私は言いたい!

 本気を出せと言ったのは、他でもないアンタだ! と!


 そして、付け加えて叫んでやりたい!

 アンタが自分で断言した事だから、ここの境内の修理費を、私は絶対に払わない!……と!

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