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怒れる山神【20】

 子供ってのは、時々……本当に残酷な事をやって来るんだよ。

 そしてセツナさん。

 子供に興味を持っていない事を教える時は、かなりの苦労と根気が強いられる事を、しっかりと覚えておいた方が良いぞ?


『ふ……ふふふ……っ!』


 再びおばちゃん扱いを受けたセツナさんが、何やら妙な含み笑いなんぞをみせて来る。

 なんだろう? もしかして精神が壊れてしまったのだろうか?

 否、それはないな。

 だって、元からおかしい巫女さんだったし。


 何にしても、色々と無駄に頭を使ったのだろうセツナさんは、


『分かった……アリン。お前は子供だ。チビッ子だ。難しい言葉で言いくるめようとした、私がバカだったのだ』


 ……なるほど。

 自分がバカである事に自覚はあったんだ。


『そこで、ストレートに……かつ、単刀直入に言う! 良いかアリン? 私の事はセツナお姉ちゃんと呼べ! 呼ばないと、御飯は食べさせてやらんぞ?』


『セツナお姉ちゃん!』


 アリンはソッコーでお姉ちゃんと呼んだ。

 もう、分かり易く御飯に釣られていた。

 いくら三歳児だからと言っても……親として、見ていて恥ずかしい光景であった。


 アリン目掛けてメイちゃんが飛んで来たのは、ここから間もなくの事だった。


 ドガシャァッッ!


『ふぁっ! ふぁぶっ!』


 ……何が起こったんだ?

 アリンとセツナさんの会話が、余りもほっこりする内容だったせいか……つい、そっちに意識が持っていかれてしまったのだが……どうやら、その間にメイちゃんと山神様の戦闘に動きがあった模様だ。


 結局の所……顛末だけしか私には分からなかったのだが、メイちゃんは何らかの波動みたいな物を受けて吹き飛ばされ、偶然アリンとぶつかってしまったみたいだ。


 ……って、ちょっと待て!?


「アリン! メイちゃん! 大丈夫かっっ!」


 私は即座に二人の元へとひた走る。

 直後、山神様が私の正面へと素早く現れ、


『貴様の相手はもう少し先だ。ちゃんと料理してやるから、大人しく待っておれ!』


 好戦的な台詞を吐いたあと、私を牽制するつもりで、


 ボフゥゥッッ!


 口から波動の様な物を飛ばして来た。

 

 ……そうか。

 メイちゃんが吹き飛んでたのは、山神様の口から吐き出された波動のブレスだったのか!


「くっ!」


 私は苦い顔になってガードの態勢になるが……山神様のブレスは私の真横をかする形で突き抜けて行く。

 純粋に、単なる威嚇のつもりで私に放ったらしい。


 ……どうやら、私もこの山神様には敵として扱われていない見たいだなぁ。

 ちょっとばかり、見くびり過ぎてないか?

 こう見えて……私は、会長様ラスボスだぞ?


 口からブレスを吐き出し、私を牽制した山神様は素早くメイちゃんへと突き進む。


 他方、ブレスの直撃を受けて吹き飛んでいたのだろうメイちゃんは、地面にバウンドする形で倒れ……既に意識がない状態に見えた。

 

 既に勝敗が決まっていた。

 

 ……そう。


 もう、これ以上は……やる必要はなかったのだ。

 しかし、山神の攻撃が緩まる様子はなかった。


 これは……本格的に不味い!

 

 あの山神は、メイちゃんを殺す気だ!

 真っ直ぐ……一直線に突き進む山神は大きく口を開き……その鋭い牙で、メイちゃんの首筋を噛み千切ろうと襲い掛かる!


 その状態に気付いた私だったが……いかんせん、山神のスピードが驚異的に早かった事と、地味に距離が空いていた事……何より、補助魔法も補助スキルも発動していなかった私では、全然間に合わない状態にあった。


 く……くそっ!

 ちょっと、気を緩めすぎた!


 心の中で大きく後悔する。

 流石の私も、土着の神様が殺生をして来るとは思わなかったのだ。


 仮に勝敗が決まったとしても、相手の命までは取らないだろう……と、心の何処かで達観していた。

 その考えが、如何に甘いかを……痛感していた。


 ごめん……メイちゃん……。


 苦渋に歪んだ私の顔が、クシャクシャになっていた……刹那。


『アリンの御飯に、何するおぉぉぉぉっっっ!』


 超炎熱爆破魔法フレインダムド


 ドォォォォォォォォンッッッ!


 山神は爆発した。

 それはそれは……もう、豪快に。


 余りに想定外過ぎて、思わず私までポカンと口を開けてしまった。

 

 爆発した山神は、


『はぶわぁっ!』


 想定外だったのだろう悲鳴を上げて、素早く後方に退いてみせる。

 

 ……ほうぅ?

 

 私は少しだけ驚いた。


 アリンが、まさか私の必殺魔法を使って来るとは思わなかった部分もかなり意外ではあったが……あの一撃を受けても、まだしっかりと逃げるだけの余力があった山神様にも驚いた。


 パッと見る限り……ちゃんと私が教えた物ではなく、普段から私が使っている超炎熱爆破魔法フレインダムドを見よう見まねで覚えた感じではあったが……それでも、大した威力だった。


 ここではオリジナルになるのだろう、私の放つ超炎熱爆破魔法フレインダムドの八割程度の威力は出してた。


 しかし、それでも耐えきったのだから、私としては天晴れな耐久力であると言わざる得ない。

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