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怒れる山神【7】

『良いか、クサンジュ? これはジョークで言ってる訳じゃない……逃げろ。そして、山神と関わらない様に、お前の群れにいるボスに伝えておけ……』 


『……はぁ!? おいおい、本当にどうしちまったんだよザンジダ? フェンリルの群れでも狩りに特化してる武闘派のお前らしくもない! 本当に何が……』


 あったんだ?

 ……そう言いたかった猪だったのだが、言葉は途中で止まった。


 紫電槍魔法ブラストランス


 その瞬間、大猪の真横に紫色の光を放つ、強烈なプラズマの槍が駆け抜けて行った。


『…………』


 猪、絶句。


 果たして。


「……お? 外れてしまったお~。爆発魔法だとご飯が爆発するから、光魔法にしたけど……ちょっと慣れてないお~」


 紫電槍魔法を放ったのはアリンだった。

 どうやら、本気で空腹だったらしい。


「アリン……あれはちょっと食べない方が良いかもだ? その……ちょっと、肉が固そうだ」


「お~? でも、アリン……お腹空いたお~」


 やや注意を促す形で答えた私に、アリンは口に右手の親指を突っ込んだ状態で答えた。

 これはまずいな……何か、アリンが食べられる物を探さないと……本気で、あの猪を丸焼きにしそうな勢いだ。


 ……とは言え、今の私は食べられそうな物なんて持ってないし……。


「はい、アリンちゃん」


 少し困った私がいた所で、メイちゃんが昼間に残していた饅頭をポケットから出して、アリンに与えていた。

 ……てか、そんなのを良くポケットに入れてたなっ!


 少し素朴な疑問が残る物の……ナイスだ! メイちゃん!


「おおおおっ! これ、おいしーよねぇ! ありがとー! メイお姉ちゃん!」


 メイちゃんから貰った饅頭を見て、アリンはキラキラと瞳を輝かせてから、ニッコリ満面の笑みで饅頭を頬張っていた。

 ……これで、少しは何とかなるかな。


 アリンを饅頭で黙らせる事が出来た私は、少し安心する形で魔狼と、巨大猪の方へと目を向ける。


『……な、なんだよ……今のは?』


 絶句し、放心状態になっていた巨大猪は、ガタガタと身体を震わせながらも口だけを動かして行く。


『……これで分かっただろう? コイツらは化物だ』


 魔狼おまえに言われたくないんですがねぇっ!

 かなり真剣な声音で言うフェンリル。


 これには、巨大猪も納得せざる得ない状態だったのか?


『その様だな……しかし、お前はどうする? これでも俺だって魔獣の端くれだ。同じ山に住む仲間を見捨てたとあっては、スリーズ・ルクダンニの名折れ! せめて脱出の手助けだけでもしてやる!』 


 ……と、私達の前で堂々と言えるのは、所詮は猪と言う事だろうか?

 それにしても、神話に出て来るこの猪は、性格の悪い害獣なんだけど……こんな事を言うんだな?


 まぁ、神話と現実が違うって言うのは良くある話だし……何より、お話の中に出て来る種族と同じと言うだけで、性格まで全く同じであるとは限らないからな。

 この里に住むスリーズ・ルクダンニは、結構性格が良いのかも知れない。


 どちらにしても、だな?


『なぁ? そこの猪? このワン公を助けたいと言う気持ちは分かるが、私はコイツをそこまで粗末に扱うつもりはないぞ?』


 まぁ、丁重に扱うつもりもないけどな?

 私は、猪に向かって言ってみせる。

 

『どの口がそんな事を言ってる? フェンリルの首にロープを括り付けて歩いている時点で、十分粗末に扱っているじゃないか? お前ら人間は、本当に俺達をなんだと思っている!?』


『野性動物?』


『上等だ! 間違ってはいないが、人間のお前が言うと腹が立つ! ザンジダは、この俺様がすぐに救いだしてやる!』


 言うなり、巨大猪は、後ろの右足で地面を削り出した。

 恐らく突進の狙いを定めているのだろう。

 

『ふはははっ! 謝っても遅いからなっ! お前らは、この俺様……クサンジュ様が一人残らずき殺してくれる!』 


 何やら、かなり調子の良い事をほざいてるな、コイツ。

 私の額に怒りマークが出来たのと同時に、


 超炎熱爆破魔法フレインダムド


 ドォォォォォォンッッ!


 猪が爆発した。

 もう、盛大に爆発した。


『……だから言ったのに』


 爆発した光景を見て、魔狼が小さく呟く。


「ふぁっ! メッ! だお! か~たま! アリンの晩御飯が、吹き飛んじゃったおーっ!」


 直後、アリンが半ベソになって、私へと怒鳴って来た。

 どこまで食い意地が張ってるんだよ、お前は……。

 か~たまは、メタボリックなお前の姿なんか、見たくないんだからな?

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