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怒れる山神【5】

 これが一つ目……前者の予測だ。


 次に二つ目。


 後者の予測は、山でも川でもない、第三者の画策による物ではないか?……と、言う予測だ。


 飽くまでも予測でしかないし、まだ、可能性の一つ程度に留めて置く予定だが、全くのゼロとも思えない。


 その根拠は、やっぱり族長精霊だ。

 全然まったく、これっぽっちも分かってない状態で、訳が分からないまま狙われている事実だけが、勝手に一人歩きしている。


 あの族長の態度を見る限り、これは真実だとしか思えない。


 ……なら?

 川の精霊達に過失が無かった可能性だってある。

 

 つまり、前者は過失があった場合で、後者は過失がなかった場合を想定して予測している訳だ。


 仮に過失もなく、何だか良く分からないまま、恨みだけ買っていると言うおかしな状態に陥っているとすれば、その状態に陥れた第三者がいると言う事に繋がる。

 一体、犯人は何の恨みがあって川の精霊達を陥れる様な真似をしているのか?

 当然、今の私には分かる術などない。

 それ所か、そんな犯人がいたとして? その犯人に目星を付ける事すら出来ない。


 後者であるのなら……かなり面倒な話になりそうだ。

 本当……なんで私は、こんな面倒な話に首を突っ込んでしまったのだろうか?


「……はぁ」


 ここまで考えた私は、重々しい吐息を口から吐き出してみせる。

 そんな私は、この山に住んでいる山神様の元へと向かっていた。


 隣には、アリンとメイちゃんも一緒に歩いている。

 何となく、長丁場になりそうだったから……この二人は先にキャンプの方へと戻って欲しい所ではあったのだが、アリンいわく『か~たまだけにしたら、山神様が死ぬかも知れないから、アリンも行くお!』らしく……何てか、か~たまが泣きたくなる様な事を意気揚々と語り、メイちゃんの場合は『きっと、修行にピッタリな戦闘とかありそうじゃない? リダお姉ちゃんと激しいバトルはセットだしさ!』とか何とかほざきつつ、瞳をキラキラさせていた。

 お前は人を何だと思ってるんだと、小一時間程度説教してやりたい。


 これら諸々の事情から、アリンとメイちゃんの二人は、私と一緒に山神様の元へと向かう事になって行くのだった。


 もちろん、山神様が何処に住んでいるのか何て分からないので、ちゃんと道案内を連れている。


 頑丈なロープを首に括り付けて、大型犬の散歩でもしてるかの様に、括り着けたロープを私に握られる形で前を行く魔狼がそれだ。


 フェンリルの末裔なのだろう魔狼も、こうやって首に縄を括り付けてやれば、単なるワン公となんら変わりない。

 強いて言えば、幾分かデカイ犬……と言うだけの話。

 下手すれば、街中でやっても犬の散歩ですと言えば、結構なんとかなってしまうんじゃないか? と、うそぶきたくなる程だ。 


『崇高なる魔狼を、ペットの様な扱い方するとは……貴様の顔はしっかりと覚えて置いてやる……精々、寝首を掛かれない様に………………い、いえ! 嘘です!』


 やたら生意気な事をほざく駄犬がいたので、しつけも兼ねて右手を見せてやると、瞬時に態度を豹変させて来た。

 よっぽど爆破が怖いらしい。

 

『どうでも良いが? お前程度のワン公なら、百匹居た所で笑って殲滅せんめつ出来るからな? 寝首をかこうと考えても良いが……その時は、お前はもちろん……お前の群れを片っ端から張り倒しに行ってやる。その覚悟が出来てから、私を襲うんだな?』 


『だ、だだだ、大丈夫です! リ、リダ様には絶対に逆らいませんっ!』


 かなり必死になって叫んで来る魔狼がいた。

 そこまで殊勝な台詞を吐き出す事が出来るのであれば、もう少し本音と建前を上手に使いこなす術を持った方が良いな?

 今の態度で、私はお前を完全に疑ったぞ?


『良く言った。じゃあ、こうしてやる』


 答え、私は右手に、


 ポウゥゥ……


 淡く光る球の様な物を造り出し、しばらのちに魔狼へと光の玉を放ってみせる。


『……っ! な、なにをっ!?』


 脈絡なく光の玉を受けた魔狼は、思いきり面食らう様な声を吐き出して来た。


 ……まぁ、そうな?

 確かに分からないだろうから、軽く説明だけでもして置いてやろうか。 

 

『それは、私に忠誠を誓った証の呪いだ。私に対し、忠実であればその呪いは加護へと変わり、私の能力の一部ではあるが、お前を護る力となる』


 そこまで言った私は、いかめしい表情を作ってから、剣呑な声音を魔狼にぶつけた。


『だが、私を裏切れば、その加護は元来の姿でもある呪いとしてお前の身体をむしばみ……場合によっては死ぬ』


『……っ!?』


『……要は、私を裏切らないのなら加護になる呪いだ。お前の体毛が黒くなったろう? その黒が白に変わり……朱に染まれば、全身が血まみれになって死ぬ。精々、そうならない事だな』


 私はニィ……と、妖艶に笑って答えた。

 ちなみに、覚えている人が居たら凄いレベルではあるんだが、私がユニクスに掛けた呪いと同じ物だ。

 元々は金髪碧眼だったユニクスが、今では黒髪黒目なのは私の魔法を受けているからだったりもする訳だ。

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