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怒れる山神【3】

 昨今……自由恋愛が色々と叫ばれている傾向にあるが……まさか、神様と悪魔が結婚するとか言う、おかしな展開を耳にする事になるとは思わなかった。


 ……いや、でも、あれか?

 フェンリルって、確か神様から生まれていた気がしたから、神格的な物は持っていたのかも知れない。


 ……むぅ。

 しかし、そこを加味しても、やっぱり思い切りが良過ぎるな。

 

 一つ間違えれば、自分の住む山がカオスになってしまい兼ねない危険を犯してまでも、フェンリルの群れを受け入れたり……かと思えば、その頭領と結婚してしまったり。

 もう、ハチャメチャ過ぎて、話について行けなくなりそうだ。


 反面、どうしてフェンリルが山の精霊サイドで、川の精霊へと制裁を加えて来たのかは分かった。

 山の精霊達の親玉でもある山神様が、フェンリルの頭目と結婚していた関係で、フェンリルが肩入れして来た訳だ。


 しかし、ここに関しても少しばかり疑問が残る。


 ポイントとしては、山の精霊と川の精霊がいがみ合ったとして。

 どうして『山神までが山と川の精霊の間にしゃしゃり出て来るのか?』と言う部分だ。


 山の神様なんだから、山の精霊を味方するのは当然と思われるかも知れない。

 ……だが、これはちょっと違う。


 山の神様なのだから、山の精霊は当然大事にする。

 だが、川もまた山の一部なのだ。

 当然、平等に接するのが山の神様だ。

 どっちかを贔屓目で見る事は、決してない。


 山神様は、山の全てを代表する神様であるから、山神と呼ばれている。

 山だけを指して言っている訳ではなく、山の中に存在するあらゆる概念、存在、生物……全ての自然を引っ括めた総大将の様な物だ。

 

 なので、山神様が山だけを一方的に贔屓する事は、まず考えられない。

 山神様が山の精霊に荷担している場合は、川の精霊が悪いと山神様が判断したからではないかと予測する事が出来た。


 出来たんだけど……うぅむぅ。


 仮に、この予測が妥当であった場合、やはり悪いのは川の精霊と言う事になってしまう。

 知らなかったとは言え、山神の怒りに真っ向から対立する結果になってしまう訳で……。

 ……まずいな、これは。

 どうしよ? 今からでも頭を下げて置こうかなぁ……?


 弱気な私の思考が、脳裏をかすっていた頃、


『どうした? 今頃になって怖じ気づいたのか? ふふふ……だから人間は愚かだと言うのだ。大方、そこにいる川の精霊にそそのかされてここにやって来ているのだろうが……ここに来て、自分のやっている事が、かなりの愚行である事に気付き、狼狽ろうばいしているのだろう? 実に滑稽だ! 滑稽過ぎて腹が捩れ……キャインッ! よ、よせっ! そ、その手を向けるなっ! いや、すまん……言い過ぎた! 言い過ぎたから右手を下げ……あ、いや、うん……すみませんでした……誠心誠意、心を込めて陳謝するんで、手に魔力を込めるのは……』


 ドォォォォォォォンッッ!


 魔狼は爆発した。

 どうやら、愚かな人間の力を、身を以て知りたかったらしい。


「お、お姉ちゃん? 何でいきなり爆発させたの?」


 話の内容が分からない為、近くで大人しく座っていたメイちゃんが、ポカンと口を開けて答えた。


「爆発したかったんだろ?」


「そんな訳ないじゃないの」


 メイちゃんの問いかけに、私は単純明快な台詞を口にするも……納得には程遠い顔になっていた。

 

 すると、近くにいたアリンが、メイちゃんに口を開いてみせる。


「ワンコがね~? か~たまをバカにしたから爆発したお~。最後はちゃんとごめんなさいって謝ったけど、か~たまは短気だったから……血も涙もなく問答無用で爆破したお~」


「余計な事は言わないでぇっ!」


「ああ、なるほど。リダお姉ちゃんらしいね!」


「それで納得もしないでぇぇっっ!」


 説明するアリンに、ポンッ! っと、手を打つメイちゃんがいた所で、私は切ない気持ちで一杯になっていた。

 

 ……と、ともかくだっ!?


「魔狼の話は十分理解した。そろそろ、川の精霊達の話を聞く事にしよう」


「まぁ、お姉ちゃんが強制終了させちゃったんだけどね」


 キリリッ! っと、真顔を作った私の言葉に、メイちゃんが嘆息混じりで言葉を付け足した。


 トゲがあるのは気のせいですかねっ!?


「ともかく、次だ次! 川の精霊の言い分を聞こうじゃないかっ!」


 私は、不幸にも爆破によって昏倒し、口から舌をダランと出したままピクピクと痙攣を起こしている魔狼を見ない事に……もとい、目線を反らして川の精霊達へと口を動かして見せた。


『おい、そろそろ私の話を聞く気になったか?』 


『はぁ? 寝言は寝て言わないか? どうして私がお前と話をしなければ……っ!?』


 私の声を耳にし、相変わらず反抗的な態度を取っていた族長精霊であったが、言葉はそこで止まっていた。


 何故か?

 彼女の眼前に、私の右手がピタッッ! っと、止まっていたからだ。

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