初めての冒険【20】
「いや、待て……メイちゃんの実力では無理だ」
「キッパリ言って来たっ!?」
真顔で言う私に、メイちゃんはガーンッ! って顔になっていた。
そりゃ……な? オリジナルから比べたら、単なるワン公に過ぎない相手ではあるよ?
……とは言え、クローンでも魔狼。
その強さは、Sランクの冒険者がパーティーを編成してやっとこ倒せるかどうかの強さはある。
SSクラスの冒険者ならタイマン張れるだろうが……それだって、かなりの接戦になるだろう。
簡素に言うのなら、だ?
「流石に無謀だ、メイちゃん。そこのワン公と対等に戦いたいのなら、相応の修行を……だな?」
「ちゃんとしてるもんっ! 頑張ってるもんっ!」
おいおい……。
やってる事は、ウチの三歳児と同じ事をしてるんだが?
「お? メイちゃん? あのワンコと遊ぶお? じゃ、アリンもやりゅ~!」
えぇぇ……。
私としては、アリンの反則的な戦闘能力を知っているので、特に止めるつもりはないが……しかし、やっぱり親としては心配だ。
『……どうした? さっさと掛かって来い。それとも……やっぱり口だけなのか?』
アリンの言葉に、親心が揺れに揺れていた所で、殺気立ったフェンリルが挑発半分に口を開いて来た。
ああ、もうっ!
『やっかましぃぃっ! お前は黙ってろっ!』
ドォォォォォォンッッ!
面倒だから爆破した。
「…………え?」
直後、メイちゃんがパチクリと目をしばたたかせる。
ん? どうしたんだよ? ただ、ムカつくワン公を黙らせただけじゃないか?
「お姉ちゃん……ワンコが気絶してる」
「うん? ああ、そうだろうな? 頭に来たから超炎熱爆破魔法を……」
そこまで言った所で、私の口が止まった。
…………ああ、しまった。
余りにもやかましかったから、うっかり倒してしまった。
「お~? ワンコ、大丈夫?」
爆破された事で、身体中からプスプスと煙を出していた魔狼を、付近に転がっていた小枝を使ってツンツンと突ついて、生死を確認するアリンがいた。
そういえば、その方法……ユニクスにもやってたな。
アリンなりのマイブームなんだろうか?
「……か~たま? これダメだお。放置してたら三千世界に旅立ってしまうお? 治療魔法しても良いお?」
「……ま、まぁ……そうしてくれ」
その後、わん公は三歳児によって救われた。
地味に自信たっぷりに出現していただけに、とっても恥ずかしい救済に見えた。
……と、言った所で、今回はこれまで。
次回に続く!




