表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
421/1397

初めての冒険【19】

 この程度のレベルなら、超龍スーパードラゴン呼吸法ブレイズを使うまでもない。


 故に、私も余裕の笑みを相手に向けている。

 同時に思った。


『ちょうど良かった……私の右手にいる、人間不信の病んでる精霊が、どうしても教えてくれなかったんでね? お前なら色々と知ってるだろう?』


『……ほぅ?』


 悠々と答えて行く私に、魔狼フェンリルは意外そうな声を返した。

 きっと、顔でも意外そうな表情をしているのかも知れないが……いかんせん、犬っころの表情は動きが微妙過ぎて良く分からなかった。


 もう少し、感受性豊かな表情を作ってくれるのなら、私にも分かるんだけど……所詮は犬だしなぁ……。


『まさかと思うが、この俺を相手に力ずくでどうにかしようとしている訳ではないだろうな?』


『そのまさかだよ』


 鼻で笑う様な言い方をして来る魔狼フェンリルに、私も鼻で笑い返して見せた。


『お? そこのワンコが、か~たまと戦うお?……ワンコ、可哀想だお……?』


 そこから、アリンが凄く心配した顔になって……って、ちょっと!?


『まって? アリンちゃん? そこはか~たまを心配してくれるシーンじゃない? 怖くて大きな狼が、か~たまを襲うんだよ? か~たまは、アリンに心配して欲しいんだけど』


 割りと切実に答えた私がいる中、


『???』


 本気で不思議そうな顔をしていた。

 

 …………。


 くそぉ……素直過ぎるだろ、アリンちゃんよっっ!

 少し素直に育て過ぎてしまったんだろうか……ここは嘘でも心配して欲しかったと言うのにっ!


 この悔しさを……私は、何処にぶつければ良いっ!?


 答えは、そこのクソ犬だっ!

 畜生! 私の娘は素直過ぎて、お前程度のなんちゃって魔狼レベルじゃ、毛程も心配してくれないじゃないかっっ!


「ふふふ……あっはっはっ!」


 良いねぇ……頭が良い感じにハイな状態になって来たよ!


「ど、どうしたのお姉ちゃんっ!?……何? そこの狼って、そんなに強いのっ!?」


 高笑いを見せていた私に、そこで今まで喋る事をせずに傍観を決め込んでいたメイちゃんが、私に声を掛けて来た。

 傍観していたのは、きっと……言葉を知らないから会話に混ざる事が出来なかったのだろう。


 ……そこは、後でちゃんと教えて上げる事にしようか。


「全然強くないね! 難なら? ハンデとして右手だけで戦っても良いレベルだ!」


「は?……それなのに、リダお姉ちゃんの『本気笑い』をしてるの? 何か、本気になる様な切っ掛けとかあったの?」


 娘が心配してくれないから逆上した……とは言えない。


「私を大きく燃やす大義を、コイツがくれたからさ?」


 私は不敵な笑みで、尤もらしい事を言ってみせた。

 嘘は言ってない。

 コイツが弱いと言う理由で、アリンがちっとも心配してくれない。

 

 ほらね? 私の心を大きく燃やす大義があるじゃないか!


 果たしてそれは『大義とは言えないですよね?』とか言う、鋭いツッコミが来ても耳を塞ぐとして……。


『来いよ、ワン公? 私を本気にさせた事……後悔させてやる』


『ふふふ……口だけは達者なヤツだな? この俺を力ずくでどうにか出来ると言うのなら、やって見せろ!』


 右手は人間不信の病んでる精霊を掴んでいるので、左手で『カモォ~ン!』って感じのジェスチャーをして見せた私に、魔狼は戦闘体勢に入る形で私の前にやって来た。


『待って? ねぇ、待って? 私がいるって事を忘れてないわよね? 人間? ちょっと? ねぇ? こんな所で握られてたら、とばっちり喰らうわよね? 私? ねぇ、ちょっと! 聞いてるのっ!?』


 私の右手にいた、人間不信精霊が何か怒鳴っていたが、聞かなかった事にした。


 あんたら川の精霊の為に頑張って戦っている所を、その特等席で観戦する事が出来るんだ。

 むしろ感謝して欲しいね?


 ……かくして。


 私は、魔狼と戦う形へと……


「ちょぉぉぉぉっと、待ったぁぁぁっ!」


 ……ならなかった。


 完全に戦闘が始まる三秒前的な、まさに一触即発状態にあった所で、メイちゃんが私と魔狼の間にバンザイして入って来た。


 それは新しい一発ギャグかな?

 今一つ、どんなギャグになるのか知らないし、一発ギャグにしては切れがない。


「なぁ、メイちゃん? 一発ギャグがやりたいのなら後で私が付き合うから、今は少しだけ退いてくれないか?」


「誰も一発ギャグをやるなんて言ってないから! そもそも、どうやったらそう言う見解になるの? バカなの? お姉ちゃんはっ!」


「バカじゃないし! バカと言うヤツがバカだしっ!」


「その台詞がバカっぽいよ! リダお姉ちゃんっ!」


 メイちゃんは、地味に正論を口にしていた。

 ぐぅむ……確かにこの台詞はバカっぽい。


 だけど、今は違う台詞を考えている場合ではなかった。


「ともかく、そこを退いてくれ。このワン公をハッ倒して、詳しい情報を聞くんだから」


「そこだよ、そこっ! そのワンコは、大して強くもないんでしょう?……なら、私にやらせてよっ!」


「……はぁ?」


 真剣な眼差しで言うメイちゃんに、私は思わずキョトンとなってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ