初めての冒険【15】
「ええー? 嘘でしょう? だってリダお姉ちゃんだもん! 絶対、なんか派手な戦闘になって、本当ならここまで大きくならない筈の問題を、無駄に大きくしちゃうよ~」
挙げ句、私の話を信じてくれないメイちゃんは、カラカラ笑って失礼な台詞を臆面もなくほざいて来た。
「私を何だと思ってるんだよ……」
「え? リダお姉ちゃんはリダお姉ちゃんだね。学園でも噂だよ? あの人は学園魔王と恐れられている最強のモンスターだから、絶対に逆らっちゃダメだ……って!」
「誰だよ、そんなふざけた事言うヤツはっ!」
「えぇ……と、確か、フラウ先輩?」
「あのペッタン子がぁぁぁぁっっ!」
後で絶対に泣かしてやろう。
「そんな怖い顔しないで? 大丈夫! 私は学園魔王だなんて恐れられているお姉ちゃんの武勇伝を聞いて、格好良いと思ったんだから!」
「思わなくて良いからっ! そこは忘れて良いからぁっ!」
目尻から涙が出て来た私は、メイちゃんに遮二無二がなり立てた。
「……ま、それにさ? リダお姉ちゃんって、私の里に来た時もさ? やっぱり壮大な活劇にしちゃったじゃない? 本当なら大した事でもない筈のクエストを請け負って来たのにさ?」
「…………う」
メイちゃんの言葉に、私は思わず押し黙ってしまった。
これは、私とメイちゃんが初めて出会った時の話になるのだが……彼女の地元でもある拳聖の里で、簡単なクエストを受注したのだが……どう言う訳か? 物凄く話がこじれにこじれて、おかしな事になってしまった。
最終的には里の危機にまで発展してしまい……一大絵巻状態になってしまう始末。
……まぁ、あの当時の私はまだ若く、喧嘩っ早くもあった。
若気のいたりで問題を大きくしてしまい、余計な厄介事を作り出しては……それら全ての後始末までする羽目になって行くのだ。
そして、これら一連の一部始終を知っているメイちゃんからすると、だ?
「絶対に凄いバトルになるんでしょう? あはは! もちろん、私も行くよ!」
「いや! 本当にならないから! 私だって、あれから色々と経験して大人になってるんだ! いつまでもヤンチャなままである筈がないんだってば!」
「……本当かなぁ?」
やや意固地になってしまった私の言葉に……しかし、それでもメイちゃんは信用してくれない。
……ああ、もう!
「分かった! それじゃあ、一緒について来れば良いさ! 私だってちゃんと思慮分別のある大人になっていると言う証拠を、しっかりと見せてあげるから!」
……こうして、途中で合流したメイちゃんも、一緒に川の精霊達が住んでいるだろう仮設集会所へと向かう事になって行くのだった。
○◎●◎○
『ここが、近所に住んでた川の精霊達が集まっている場所です』
……と、カワ子に案内されて向かった先にあったのは、比較的開けた原っぱだった。
うぅ~む。
『建物とかない見たいだけど……本当にここで当たっているのか?』
思わず私はカワ子に尋ねてみた。
『まぁ、仮設の集落ですから。それに、川の精霊は基本的に人間の様な家屋は作らないですからね』
……言われるとそうだな。
カワ子に言われて、少し納得してしまう私がいた。
実際の所、精霊の大多数は自然とお友だちだ。
そして、自分が好むエリアを浮遊してれば、勝手に自給自足が賄えてしまう。
例えば、川の精霊なら河辺の辺りでフヨフヨと浮いてるだけで、川から自然とやって来る大自然のエナジーが貰えるので、特に何かを摂取する必要がない。
これは他の精霊も同じで、山の精霊であるのなら山を、風の精霊なら風が吹きそうな所を浮遊してれば、勝手にエネルギーを摂取する事が出来る。
よって……川の精霊は川にいるし、山の精霊は山にいるのだ。
例外としては森の精霊……つまり、エルフ辺りだが……こいつらは精霊でありつつ動物にも近い生体を持っているので、状況如何によっては穀物を食べてもエネルギーを摂取する事が可能だ。
ただし、完全な草食なので……よっぽど特殊なエルフでもない限りは肉を食べない。
余談だが、草食のエルフは根本的に味覚が鋭く、人間よりも新鮮な野菜に敏感なんだと言う。
まぁ……ここらに関しては噂程度なんだがな?
話が反れてしまった……本題に戻ろうか。
結局の所、川の精霊であるのなら、近くに川があるだけで生活の全てが賄えてしまうので、住居すら要らないと言うのが、実際の所だ。
雨が降ったら、木陰で木の精霊に助けて貰い、風が吹いたら風の精霊に言って、自分達の所だけ風が来ない様にする。
つまり、精霊にとって自然とは、他の属性を持つ同胞であり、お友達なのだ。




