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初めての冒険【14】

 ともかく、今は話の内容を変えよう。

 このまま行くと、カワ子の精神が持たない。


「それより、メイちゃんはこんな所で何してたんだ?」


 私はそれとなくメイちゃんの方に振り向いてから、それとなく話のベクトルを変えて見る。

 一応、たきぎの小枝を拾いに行ってたみたいな話をしてはいたが、話半分の状態であった事だけは確かだったからな。


「うん? さっきも言ったけど、みんなの食事を作るのに火が欲しいと思って、近くにある乾いた小枝を探して拾ってたんだよ」


 メイちゃんは、そう答えてから私達に背中の小枝を見せて来た。

 背中には、如何にも燃えそうな乾いた小枝が一杯詰まった藁のカゴが。


 カゴは、リュックと同じ要領で背負う事が出来る、大きな筒状の物だ。

 これを背負って、良く燃えそうな枯れ木(枯れていない木だと、中に水分があるので燃えない)を一杯詰め込んでいた訳だが……。


 こんな大きなカゴ……いつの間に持って来ていたんだろう?


 ふと、素朴な疑問を抱く私がいる中、


「取り敢えず、これだけあれば大丈夫かな? って思って、みんなが居る所に帰ろうとしたら、メッチャ大きな熊が出て来てね? 怖かったから一本背負いで投げたんだけど、怖過ぎて力を加え過ぎちゃって……」


 メイちゃんが事の次第を私に言ってくる。

 

 ふぅ~むぅ。


 つまり、少しやり過ぎてしまったから、投げ飛ばしてしまった熊がどうなったのか見に来たら、私達と鉢合わせした……って事なんだろうか?


 それにしても……恐怖の余り、つい力んでしまった結果が……これなのか?


 メイちゃんから事情を聞き、改めて熊の方へと顔を向けた私。

 熊は、未だに足を痙攣させたまま倒れている。


「ああ、大丈夫そうだね? 良かった」


 ……あれで、大丈夫なのか?


 最低限、昏倒しているだろう熊を見て、にこやかな顔してホッと安堵するメイちゃんを見て、私の口元が引きつった。


「メイちゃん、アリンには……あの熊さんが大丈夫には見えないお?」


「うん? ああ、熊はどうでも良いの。投げた拍子に、何か大切な物とかにぶつかって壊してたら大変だったな~!……って、話」


 不思議そうな顔して聞いて来たアリンに、メイはさらっと酷い事を言って来た。

 ……まぁ、自分を襲って来た熊の心配なんか、最初からしてないと言われたら、なるほどそうなるのかと言う気持ちにもなるし……こんな山の中であっても、貴重なご神体の類いが偶然設置されている可能性だってあるのだから、一応の確認程度はして置く必要があったのかも知れない。


 実際問題……そう言う事故が、冒険者家業をしていると何回かあったりもする。

 山の中に偶然設置されていた御神木とかにモンスターを投げつけてしまった事で倒壊させたり……それが原因で地元の人間から賠償を求められたり……場合によっては神罰が落ちたりと、踏んだり蹴ったりな顛末を向かえるケースも、極めて稀だが全くない訳でもない。


 そこを加味するのであれば、メイちゃんの行動と言うか、確認をする行為その物は賢明であると表現出来た。


 ……こんだけ無駄にでっかいモンスターを、ソフトボール投げよろしく状態で投げてしまう行動自体は、決して賢明とは言えないレベルではあるんだが。


 何はともあれ。


「……ま、熊が神様とかにぶつかってなくて良かったよ!」


 ホッとした顔で言うメイちゃんは、軽く外道だなぁ……と思いつつも、敢えてそこにツッコミを入れないで置いた。

 私としても、サッサと用事を済ませて、みんなと一緒にキャンプを楽しみたいからな?


「そうだな?……じゃあ、また後で会おう。私はちょっと用事が出来てな? そっちが終わったら私もキャンプに混ざるから」


 にこやかに答え、軽く手を振って見せた私に、メイちゃんは不思議そうな顔になる。


「……? 用事? 何処に行くの? ねぇ? もしかして、修行?」


 答えたメイちゃんは、無駄にキラキラした目になっていた。

 私は苦笑した。

 本当に、この子は……身体を鍛える事を念頭に置いた考え方しか出来ないのだろうか?


「そう言う訳じゃないよ。ちょっとそこの精霊……カワ子が困ってるらしいから、その手助けをしに行くだけさ」


「そうなんだお~! 何か、山の精霊と喧嘩してるから、助けて欲しいらしいんだお~!」


 カワ子を指差して説明した私がいた時、アリンが補足する形でメイちゃんに言っていた。


「え? 喧嘩?……それって、山の精霊達と熱いバトルをするって話っ!?」


 いやいやいや。


「むしろ、逆だよ……なるべく穏便にしたいから、私としてはより詳しい話を聞きに行くってだけさ。今日の所はそれだけで終わらせるつもりだ」


 本当に血の気の多い娘だな……と、どうしても話の内容を戦闘に持って行きたいメイちゃんに、ひたすら苦笑しながら私は答えた。

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