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初めての冒険【11】

 結局の所……ここでユニクスまでキャンプ組から離れてしまうと、凶悪なモンスターがやって来た時にやられてしまう危険性が大きく考えられた。


 それでも、フラウやメイちゃんの二人だけであるのなら『これも修行だ! 頑張って生き延びてみろ!』とか、如何にもそれっぽいこじつけを言って、私達の方に加わりそうな勢いではあったんだが、ここにルミとルゥの二人までいるとなれば、流石に捨て置く訳にも行かない。


 魔導大国ニイガのお姫様であり、次期女王でもある二人を、こんな所で大怪我を負わす事になったのなら……それはそれはもう、盛大な外交問題に繋がってしまう。

 まかり間違ってルミやルゥが死にもでもした日には、宣戦布告すら予想の範疇に固くない。


 いつぞやこの世界にあった百年前の世界大戦も、事の発端は皇太子が殺された事で始まったらしいからな。

 ルミやルゥの二人が、ひょんな事から殺されてしまい……それが原因で勃発した戦争が、気付けば世界大戦へと繋がっていた……なんて事だって、可能性からすれば十分あり得るのだ。


 友達に誘われて何気なく行ったキャンプが発端で、世界大戦が勃発していたのなら、世界なんて幾つあっても足りないだろう。

 当然ながら、そんなアホな展開だけは阻止したい。


 こう言う部分に関しては聡明でもあるユニクス辺りも、そこらは私の口から言うまでもなく理解したらしく……結果、ハンカチを噛み締めて金切り声を上げるシーンに繋がって行くのだった。


「まぁ、ユニクス……そんなに残念そうな顔するなよ? 少しだけ話をしに行くだけなんだかさ?」


 私は苦笑混じりになってユニクスへと答えた。

 この言葉に嘘はない。

 明日には、フラウの実地試験が始まるんだ。

 てか、私にとっての主目的はそっちである事に代わりはない。


「少し? 本当に少しですかっ! それは何秒程度の少しなのですかっ!? 詳しく教えて頂けたく思います!」


 本当に少し過ぎて草が生えた。


「流石に秒単位ではないと思うぞ……せめて分単位にはなると思う」


 秒で表現する事も出来なくはないけど、無駄に数値が大きくなってしまうからな。


「リダ様! それは少しと言う表現は適切ではございませんっ! 少しと言うのはですね?『大丈夫、三秒で戻って来るから』と言う様な時に表現する言葉なのです!」


「……ああ、分かった分かった。お前がそう言う屁理屈を得意としていた事に、今更ながら痛感させらたよ。じゃあ言い直す。しばらく帰って来ないから、夕飯のカレーをなるべく暖めて置いて待っててくれ」


「そんな! 一日三秋の想いで……いや! 一日千秋の想いで待つ私を前に、それだけ膨大な時間を待たせるのですかっ!? やっぱり私も行きます! ええ! そうですとも! ルミ姫やルゥ姫がなんですか! 外交問題がなんですか! 世界大戦がやって来ようとも、私はリダ様を愛します!」


 もう、支離滅裂過ぎて、言ってる意味が分からない。

 だけど、当人にとっては正当なのか? やたら真剣な眼差しを私に見せていた。

 ……なんてたちの悪い変人なんだろうか?


 もう、面倒だから爆破でもして、寝かしてやろうか?


 思った私が、スゥ……っと、右手をユニクスに向けた直後、


「勘弁してよユニクスお姉! いい加減、わがままな事ばっかり言ってると、リダが超炎熱爆破魔法フレインダムドで、ここらを木っ端微塵にして来るよ! それでも良いのっ!?」


 即座に気付いたフラウがアタフタしながらユニクスへと叫び、


「リダ様、お気を付けて。御武運を!」


 爆破されるのは嫌だったのだろうユニクスが、アッサリと態度を変えて来た。

 本当に分かりやすいヤツだった。


「じゃあ、行って来る……多分、夕飯には帰れると思うから」


 私は答えて、ユニクスとフラウ……そして、後ろの方でキャンプの準備を続けていたルミとルゥの二人へと手を振って見せた。


 そこで気付く。

 ……あれ? メイちゃんは何処に行った?


 地味に気になってしまう私がいたが、


「行って来るおー!」


 もう、完全にカワ子の集落に行く状態で話がまとまっていたので、敢えてそのまま向かう事にした。

 まぁ、後で聞けば良いだけの事だし、私達が戻って来る頃にはメイちゃんもいるだろうしな。


「アリンちゃん! ガンバ! 森のモンスターは凄く強いらしいから、お母さんを盾にして生き延びなさいね!」


 元気一杯に手を振るアリンに、フラウは快活な笑みで最低な事をほざいて来た。

 確かに愛娘の盾になる事に関して言うのなら、やぶさかではないが……盾前提と言われると、なんだか釈然としないんだがっ!?


「ああ、アリンも行くんだったな?……ふふふ……精々、この森のモンスターには気を付ける事だ。Sランクの冒険者パーティーすら、この森では全滅する時すらあると聞くからな……くふふ……訃報を心待ちにしているぞ?」


 だから、どうしてお前はアリンには冷たいんだよ、ユニクスッッ!


 ユニクスは、小悪魔の様な含み笑いを見せてアリンに答えていた。

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