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初めての冒険【5】

 もっとも、今のコイツ等は川岸の沢の方で軽く騒いでいるだけだから、そこまで致命的な事にはなら……。


「あああっ! アリンちゃんが流されて行くっ!」


 ……って、えええええっっっ!?


 私の顔が一気にさぁぁぁっっ! っと青くなる!

 

 てか、三歳児が川の中に入るとか……何でそんな事になってるんだ!

 親は何やってるんだ? ちゃんと見てろよ? バカなのかっ!?


 あたしだよ! こん畜生っっ!


 即行で自分ツッコミを入れつつ、血相を変えた私は、声がした方角へと目を向ける。


 その先に居たのは、


「わぷっ!……はぷぅっ!」


 盛大に溺れて流されて行く愛娘の姿がっ!


 ああああああっっ!

 本当、何でこんな事になっちゃってんの?

 マジで勘弁してっ!


 言うが早いが、私は即座にアリンへ向かって泳いで行く!

 

 ザブンッッッ!


 ズザザザザァッッ!


 横からやって来る川の流れも、何のその!

 必死になった母親のパワーは、川の流れになど屈しないのだっ!


 物凄い水柱を上げ、


「……リダって、やっぱり人間じゃないと思うんだけど……ルゥはどう思う?」


 川岸で沢蟹と戯れていたルミが、目を真ん丸にして近くにいた娘へと尋ね、


「マム。ドーンテン一族を普通の人間と同系列で見ては行けません。あれは、言うなれば新人類か超人類の仲間なのですから」


 そんな人類いてたまるかと叫んでやりたい台詞をしれっとルミに答えるルゥがいた。

 本当なら喚き声の一つでも上げてやりたい所だが、今は愛娘の命が先だ!


 待ってろよアリンっ! 

 今、か~たまが助けて上げるからなっっ!


 川に豪快な水柱を立てて泳ぎまくり、流されるアリンの身体を掴む直前まで行った時だった。


 ザパァァッッ!


 物凄い勢いで水飛沫みずしぶきが上がり……同時に、アリンの身体がフワリと宙に浮いた。


 ………………え?


 アリンの身体に向けた手が、見事に空振りになる。

 

 まさか、自力で滑空魔法グリード使って、上に逃げるとは思わなかった私が唖然としている中、


 ガンッッッッ!


 尋常ではない衝撃を受ける私がいた。

 アリンを助ける事ばかりに集中していた私は、眼前にあった小岩に全く気付く事なく進んでいたのだ。


 なまじ……全速力で……それこそ、水柱が立つ勢いで泳いでいた私は、泳いでいた慣性そのままに……元来ある、水の抵抗なんかお構い無しにそのまま突っ込んでしまい、


「はぶわぁっ!」


 自分から小岩にヘッドバットをかましてしまう。

 

 ああ……何だろう?

 川のせせらぎが……違う川のせせらぎの音に聞こえている様な?


 小岩めがけて衝突してしまった私は、そのまま目を渦巻きにして川に流されて行くのだった。






 ………………


 …………


 ……


「…………はっ!」


 気付くと、そこは川岸にある、小石が敷き詰められた様な地面に、シートの様な物を敷いた所で寝ている自分がいた。


「……あ、起きたお~っ!」


 同時に、真横で心配そうな顔をしたアリンが、周囲にいるのだろうみんなに向けて声を上げていた。


 ああ……そうか。

 私は、川に流されたのか。

 本来は娘を助ける為に川へと向かったと言うのに、救出しに行った当人が逆に助けられているのだから……何をやっているんだと、自己嫌悪に陥ってしまう。


「……ああ、やっと起きたか? んもうっ! リダってば! 水着も着ないで川に入って! しかも、岩に頭をぶつけて気絶したまま流されちゃうんだもん……これが死因だったら、お葬式の花束持って行く時に、どんなコメントすれば良いかで悩むじゃないのっ!」


 乾いた笑みのまま自己嫌悪していた所で、ルミの罵声染みた台詞がやって来た。

 言いたい事は分かるよ……うん。

 我ながら恥ずかしい川の流され方したからな?

 けど、もう少し違う解釈してくれませんかねぇっ!

 これでも、娘の命を守る為に、必死で泳いで行ったんだからさっ!?


「マム……リダさんをそこまで責めては行けません。リダさんは、アリンちゃんの事を思って川の中に入って行き……不運が重なって御亡くなりになられたのですから」


「まだ死んでないからっ! 勝手に殺さないで! ねぇ? リダさん、ピンピンしてるからっ!」


 直後、ルゥが私をフォローする形で口を開いて来たけど……フォローの仕方に大きな問題が存在していた。


「リダ様っ! な…なんで、そんなに早く意識が……ではなく! ご無事でしたかっ!」


 程なくして、ユニクスが私の前にやって来た。


 …………。


「おい、ユニクス? 今『なんでそんなに早く意識が』……って、言わなかったか?」

 

 私は、胡乱気うろんげな眼差しでユニクスを見た。

 ユニクスは目をスゥゥ……っと、横にした。


 そんな中、私の懐疑心にしっかりとした回答をするフラウがいた。


「ああ、それ? さっきからユニクスお姉がねぇ?『リダ様に人工呼吸するのは、全てに置いてリダ様を愛し愛されている、この私を置いて他にはいない!』って、鼻血流しながら息巻いてたんだけど、お姉がリダの所に行くより先に意識が回復しちゃった感じだっだんだよ」

 

 私の意識よ! 良く回復したっ!

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