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魔導師組合からの招待状【20】

「そうですね。マムのおっしゃる通り、今回は私達も完全なプライベートなハイキングに来ただけなので、そこまで大袈裟な態度を取られると、逆に困ります」


 そこからルゥがルミの言葉を肯定し、口でも顔でも困った顔をしていた。

 ……いや、だからハイキングじゃないからな? 本当の目的はっ!


「そうでございましたか!……では、この施設には、魔導師組合の関連施設と言う事で、お立ち寄りになられたのですか?」


 男は上気した顔になって言う。

 彼からすれば、理由はどうあれ次期・魔導大国ニイガ国王が訪問されたと言う事実が、これ以上ない誉れなのだろう。


 実際問題、ここに記念碑を建てても問題ないレベルではある。

 何と言っても、歴代ニイガ王になる二人が揃ってやって来ている訳だからな。


 言うなれば、そんな歴史的瞬間に立ち会えた事に、大きな感動さえ覚えていたのだろう男を前に、ルミはニッコリと笑みで答えた。


「いいえ。ここはここで、ちゃんと用事があって来ました」


「……え?」

   

 男はポカンとなる。

 彼からすれば、実に意味不明だ。


 魔導大国の王女が……一体、単なるハイキング以外の目的で、どうしてこんな所までやって来ると言うのか?


 そもそも、魔導大国ニイガの姫様の癖に、護衛もなしでこんな山奥まで来ている時点でおかしな話だし……根本的に『ハイキングに来ました』で『へぇ、そうなんですか』で済んでる時点で、そもそもおかしな話でもあるんだけど、男は真剣に悩んでいた。


 もしかしたら、この男はバカなのかも知れない。


 恐らく、男にとって永遠の謎になりそうな答えは、間もなくルミ本人の口から出された。


「あなたが、先程から難癖を付けている私の友人の試験を応援する為に、同行して来ました」


「…………はい?」


 にこやかなロイヤルスマイルそのままに、最大級の嫌味と言えるだろう台詞を、しれっとのたまう姫様。

 ……ああ、ちゃんと主目的が分かってたんだな。

 ルミの事だから、本気でハイキングが主目的だと勘違いしているんじゃないかと思っていたよ。


 序でに言うのなら、ルミなりに怒っていたのかも知れない。

 普段のルミなら、絶対にこんな底意地の悪いうそぶきなど口にしないからだ。


 けれど……なんだろう?

 もしかしたら、守護霊オラが黒いと言う言葉を発したのも、もしかしたら天然ではなく、意図的にやっていたのかも知れない。

 もしそうであるのなら……ルミは、かなりの策士だな。


 あそこまでポケポケした態度で、いかにも私は天然ボケですってオーラを放ちながら……実は、その態度すらも全て計算されて行っていたのだから。


 …………。


 ……いや、ないな。


 何となくだけど、ルミにそんなレベルの高い駆け引きが出来るとは思えないし。

 多分、結果的に『そう見える』だけなんだろう。

 

 どの道、男は額からおもむろに冷や汗をドバドバ流し始めた。


「そ、そそそそ……それは……その……あちらにいるフラウ・フーリさん……いや、フラウ様の事でございましょうか?」


 カタカタと身体を震わして尋ねた男は……顔を蒼白状態にし、必死で声を吐き出していた。


 魔導師組合にとって、ニイガ王国は最大のスポンサーにして、組合の創設を多方面からカバーしてくれた、大恩がある国だ。

 将来ではあっても、事実上の女王になるのだろうルミの言葉は、組合の最高責任者の言葉よりも重い。

 きっと、生きた心地がしないだろう。

 そう言う顔をしている。


「そうですね。そのフラウ様の友人が私です。特にこちら側に非があったとは言えない案件で、一方的に試験を不合格にされ……挙げ句、無期限に試験を受けさせないと言う、あまりに理不尽な申し出をされていた方の友人が私です」


 ルミはにっこりとロイヤルスマイルを一切崩す事なく男に言っていた。

 けれど、目は全く笑っていない。

 ……うん。

 これは確実に怒ってるね。


 ……そうか。

 ルミの奴を本気で怒らせると、こんな風になるのか……。


 何となくお姫様の闇を垣間見た気持ちになる私がいる中、


「フラウさんは私の友人でもあります。マムが許したとしても、この無駄に贅沢な施設関連を含め……色々と聞かなくては行けない部分もありそうですね」


 ルゥも含みのある、意味深な笑みを作って男に答えた。

 そんな中、私も口を動かしてみせる。


 ルミが、余りにも普段とは違っていたので、ついつい唖然となってしまったが、私も色々とコイツに言ってやりたい。


「この一件は、世界冒険者協会でも色々と話し合いをしないと行けない案件ですねぇ……いっそ、魔導師組合その物を、ニイガ王国と協力して、色々と調べてみると言うのも悪くはありません」


 ピシャリと、真剣な顔をして言う私。

 男は完全に脳死状態に陥っていた。

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