【3】
『この大会の優勝者は大体誰になるのか分かるけど、みんな頑張って欲しい、う~!』
拡張魔法が掛かっている水晶製のマイクに向かってシズが周囲のみんなを唖然とさせてしまうよ~な事をのたまっていた。
……聞かなかった事にした。
そこから選手宣誓が始まる。
選手代表として、宣誓したのは……ん? あいつは。
あああああっ!
フラウの一個上だかの先輩で、散々バカにしてくれた、あの女だ!
思えば、あの女が原因で、私は真面目に大会をやる事になった訳で。
あの屈辱は絶対に忘れないぞ!
てか、泣かす!!
選手宣誓が終わり、開会式も終了する。
程なくして、本戦の一回戦が始まった。
本戦も学年予選と同じトーナメント方式となる。
一回戦・第一試合は、いきなりパラスが登場した。
相手は二学年第四代表。
第四代表ながら上級生との対決になったわけなのだが……。
「おい、先輩さんよ……お前、やる気あるのか?」
恐らく、格闘スキルを得意とする選手だったとは思うのだが、戦闘開始して三秒でパラスに攻撃の全てを見切られてしまう。
速攻で攻撃を繰り出す第四代表の彼だが、なにをやっても避けられるだけ。
そして、のらりくらりとかわす様に見えただろうパラスに怒声の一言でも放ってやろうとした所で、逆に呆れ顔のパラスが先に口を開いた。
「やる気ないなら、何しにここに来たんだ? あんたは?」
「それはこっちの台詞だ! さっきから攻撃を全然しないで避けてばかり! 戦う気があるのか?」
「………なるほど」
それが答えか……と、顔では言ってる気がした。
つまるに、パラスからすれば、だ?
「あんたより、学年予選で戦った連中の方が百倍……いや、万倍は強かったね」
嫌味っぽく言った。
「ほざけっ!」
軽く切れた顔になっていた第四代表の彼は全力疾走でパラスの眼前までやって来ると、そのままの勢いで飛び蹴りしてみせた。
………が。
「攻撃が見え見えなんだよっ!」
カウンターとばかりに模擬刀で相手の腹部を痛打する。
ドゴォッッ!
ホームラン状態で模擬刀を振り抜いた一撃は、しっかり相手を吹き飛ばす。
この一撃で、第四代表は意識を失った。
「勝者、パラス!」
おおおおおおおおおおっ!
さんざめく闘技場。
良い感じで盛り上がっていた。
うん。
中々の勝ちっぷりじゃないか!
……まぁ、実際は生徒ではなく、巨人族が人間の姿になってるだけなのだから、普通の学生に勝てる相手ではないのだが。
そこから数分程度の時間を挟み、一回戦第二試合が始まる。
一学年第四代表フラウと、二学年第一代表との戦いだ。
一学年代表が連続で早々に出ているが、単なる偶然だと思いたい。
「よ、よろしくお願いします」
少し緊張気味のフラウ。
「へぇ………君、可愛いね。この試合が終わったら、一緒にお茶でもどうだい?」
対するキザな男は……なんてか、いきなりフラウを口説いていた。
そ~ゆ~性格のヤツなんだろう。
とは言え、相手は上級生であり、第一代表でもある。
きっと、それなりの実力が、
「いきます!」
「来たまえ!」
「では、第二試合、始め!」
炎神の刃!
なかったか。
「……え? な、なにそれ? ええええ!」
まぁ、普通はそうなるわな。
開幕三秒でいきなり本気を出したフラウの一撃で、相手は危うく天に召される所だった。
救護班が本気で必死になって復活魔法してたよ……ペッタン子よ! 緊張してたとは言え、お前はやりすぎた!
その後、復活魔法で文字通り復活した相手は、脱兎のごとくフラウから逃げたらしいが、余談だ。
まぁ、あれだ。
見た目だけでは分からない事もあると言う事だ。
特に胸な。
続いて、第三試合。
………は、割愛。
これは私の試合だな。
取り合えず、ハイライト。
礼して始めして爆破して終了。
なんて事だ……一行で戦闘が終了してしまったぞ。
ともかく、相手が弱すぎるので、ここでどうこう言う程の内容もなかった。
……と、ただし書きしてる方が文字数取られる戦いって、なんだろうな。
その後も試合は進んで行く。
一回戦の最後となる第6試合で、ようやくルミ姫の出番がやって来た。
相手は三学年の第二代表。
……三年か。
流石にこれは激戦必死かと思ったのだが、そうでもないから困る。
「始め!」
合図と同時に、ルミはいきなり上位陽炎魔法をかまして来た。
まぁ、本戦だしな?
初戦だし、気合いも入ってるんだろうけど……さ?
それ、本気でやり過ぎだから!




