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魔導師組合からの招待状【17】

「えぇと……その……はい」


 完璧に論破されてしまい、反論の余地すらなかったフラウは、しょんぼりした状態でうつ向いて見せた。


「……はぁ。別に私はあなたを責めている訳ではありません。率直な事情を知りたかっただけなのです……これも試験の一つでしたからね」


「……え?」


 嘆息混じりに答えた男性の言葉に、フラウの目が真ん丸になってしまった。

 他方の私も驚いた顔になっていた。

 密かに初耳だ。


「これは、組合だけが知っている、シークレット試験でもあったのですが……実は、この実地試験の試験会場を、わざわざ山奥の山林にしているのは『山の入り口から、この会場に来るまでの間の道程』を知る試験を行う為でもあるのですよ」


「…………」


 男性の言葉に、フラウは絶句した。

 仮にそうであるのなら……試験結果はどうなってしまうと言うのだろう?


「その招待状は、魔導師組合が作成した特殊な魔法が施されております。ここに来るまでにどの様な方法で進み、どんな戦闘を経て来たのか? どの様な魔法をどんな風に使って、この試験会場までやって来たのか? それらの記録を文字で記される事になっている、特殊な魔法が入っているのですよ」


 男性は、つらつらとフラウに説明をして行き……ここまで言った所で苦い顔になってしまう。


「あなたが持って来た招待状には、一切の記録が残っておりませんでした……いえ、正確に言うと少し違います」


 そこまで答えると、彼はフラウが持って来た招待状の一部分を指差してみせた。


「一つだけ、あなたが私達に数字として残してくれた記録があります。この試験会場へと辿り着いた時間です」


 こうと付け加えた上で、フラウは到達までに掛かったのだろう時間の項目を見る。

 タイムは0秒だった。


「…………」


 フラウは絶句した。

 思わず目に影を落として何も言えなくなってしまう。


「上位魔導師の試験は、我々魔導師組合としても最大限の力を入れた試験の一つ……それだけに、こちら側に不備があった場合は、深くお詫びしたいと思います……が、です?」


 答え、彼は厳しい顔になる。


「もし、あなた方の方に、なんらかの不正をしたと言う行為が発覚した場合、即刻失格ならびに無期限の試験停止を求めます」


「……っ!」


 フラウの顔が真っ青になった。


 ……無理もない。

 フラウにとって、上位魔導師と言うのは一つの大きな目標だ。

 運動神経だって良いのに、学園ではわざわざ魔導を専攻しているのが、その確たる証拠だ。

 出会った当初、魔法少女を名乗っていた所からしても……きっと、子供時代からずっと魔導師になる為に頑張って来たのだろう。


 それが、単なる紙っぺら一枚の為に、無期限の試験停止を受けてしまう羽目になったのなら……いやでも顔面蒼白になってしまうだろう。


 ……それに、バアルへと空間転移を頼んだのは私でもある。


 知らなかったとは言え、これは私の責任でもある。


「ちょっと、すいません? それに付いては、私の方から説明させて貰ってもよろしいですか?」


 私は、かなり低姿勢になって男性の方へと声を掛けた。


「失礼ですが、あなたは……?」


「はい。私はこの度、上位魔導師試験の相棒として、フラウ・フーリさんと一緒に試験を補助する為にやって来た者でして」


 答えた私は、にこやかに自分の冒険者カードを手渡した。


「そうでしたか……すると、今回の招待状が、どうしてこの様な結果に…………ん? え? は?……いや、その? これ、本物ですかっ!?」


 男性は、私のカードを軽く見据えて口を動かして行き……目を丸くしてから、私のカードを二度見していた。


 前にも述べたが、冒険者カードはその場で何枚も複製する事が可能だ。

 ただ、複製品はカードの色が違うので、オリジナルと見間違う事はない。


 この複製品の冒険者カードは、主に自己紹介を兼ねた名刺代わりに使われる事が多い。

 よって、社交辞令的なあいさつも込めて、私のカードを渡したのだ。


 ……まぁ、てっとり早く相手に自分がどんな存在であるのかを証明するのにも使えるから便利だな。


「冒険者カードの偽造なんて、早々簡単には出来ませんし?……それでも疑うのであれば、直接協会本部なりなんなり、お好きな場所でそのカードを選定して貰えば良いんじゃないですか? きっと、こう言います。それは紛れもない本物だ……と」


「……そ、そうですか」

 

 低姿勢を崩す事なく口を動かして行く私に、男は声を震わせて返答して見せる。

 

 彼からしても、全くの予想外であったのだろう。

 まさか、世界の頂点に君臨する冒険者協会の会長様が、こんな所までやって来るとは思わないからだ。

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