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魔導師組合からの招待状【13】

 くぉらぁっ! ユニクス!


「お前! 無駄にフラウを泣かせてるだけじゃないかっ! 今ので号泣だぞ! 合格じゃなくて号泣してたぞっ!」


「いやいや、つまらないですよリダ様。せめてもう少しセンスのある駄洒落を言わないと、親父ギャグだと言われ……ああっ! リダ様っ!? 右手は反則ですっ! てか、ここ室内ですからねっ!? こんな所で爆発したら、超高級な調度品もろとも木っ端微塵になっちゃいますからねっ!」


 余裕こいて軽やかな笑みを作っていたユニクスだが、私が爆破魔法の標準を定めた瞬間に青ざめていた。

 私に見せる態度は冗談で済んでも良いが、フラウに見せる物言いは冗談じゃ済まないぞ。


「待って下さい! これにはちゃんと、フラウの性格を考慮した上の行動なのですから!」


 ユニクスは思いきりふためきながらも、口早く捲し立てて来た。

 爆破されたくない心情も見え隠れするが……言ってる事に嘘がある様にも見えない。


 まぁ、話だけは聞いてやろうか。

 ここでユニクスを爆破して、高額の請求書を魔導師組合から叩きつけられるのも嫌だしな。


「……聞こうか?」


「……良かった。周囲に高級な調度品があって」


「で? 爆発したいと?」


「言ってませんから! ともかく聞いて下さい! フラウは類い稀なる雑草魂の持ち主でもあるのですよ」


 ユニクスは至って真剣その物になって、私へと説明して行く。

 ただ、この言葉に関してのみ言うのなら、ユニクスの言う事には一理ある。

 確かにフラウと言うのは、誰よりも不屈の精神を強く持ったストイックな努力家だ。


「幼少時代のフラウは、今の様に何でも出来る子ではありませんでした……むしろ、不出来なぐらいです」


「……そうなのか?」


「ええ! 本当に凄まじいですよ? 運動神経はゼロ所かマイナスなんじゃないかってぐらいに酷く、工作をしても不器用過ぎて、何を作っても燃えないゴミになってしまう体たらく。魔導式に至っては……アホの申し子なのではないかと言いたくなるまでに物覚えの悪い子でした」

  

 ユニクスは真剣な顔を一切崩す事なく答えて言った。


 一重ひとえに信じられない話だ。 


 それは、今のフラウだけを知っているから……なのかも知れない。


 現在のフラウは、何をやっても完璧にこなしてしまう天才乙女だ。

 成績だって、昨今はランキングの中から私が除外されてしまった関係もあり、堂々の首位をダントツで取っている。

 

 ……一応、私も試験を受ける事は受けているんだが……テストの内容からしてリダ専用答案なる代物があり、成績結果もリダ枠なるおかしな結果が、得点結果の時に載る。

 もはや、私だけテストを受けなくても良いんじゃないかって叫びたくなるまでの特別枠が存在しているのだ。


 なんとも理不尽な扱いを受けている気がして、妙に涙が出て来る話なのだが……その結果、前年度の三学期末試験で、フラウが初の学年トップに輝いたのだった。


 この様に、成績は学年首位。


 運動神経も恐ろしく良い。

 四編の編末おまけ短編で、アリンとフラウがそれぞれ別のチームに別れてサッカーをしていたと思うのだが、この時にチームを大きく引っ張っていたのはフラウでもあった。

 最終的に私がゲームその物をぶち壊してしまう結果になってしまうのだが、それまでは完全なチームのキープレイヤーとして活躍していたのだ。


 学業のみならず……運動神経も良く、性格だって悪くない。

 更に、色々と器用だったりもする。

 つまり、何が言いたいのかと言うと……何をやらせても人一倍の能力を持つ、完璧超人パーフェクト・オブ・スーパーマンなのだ。


 何をやっても人より秀でている物がないと述べる、ユニクスの答えた完璧超人フラウの幼少時代を、すぐに信じる事が出来ないまでに、何もかもが違っていたのだ。


 けれど、ユニクスは極めて真剣に語っていた。

 ……恐らく、その言葉に嘘はないのだろう……と、思わず信じてしまうまでの意思が、ユニクスに込められていたのだ。


 ……うぅむ。

 やっぱり信じられない話ではあるけど……ユニクスの顔を見る限り、それはやっぱり真実なんだろうなぁ。


「何をやっても平気点以下の無能な少女だったが故に……フラウは同年代の子達に散々バカにされました。その中に私もいるのですが、特に私はフラウをイジメ倒しました」


「お前、真剣な顔して……さらっと酷い話をしてないか?」


 私のツッコミを軽く聞き流したユニクスは、しれっと続きを口にして行く。


「その結果、フラウは頑張りました……周囲から受けた悔しさをバネに、人一倍努力したのです。私はそれでも鼻で笑っておりましたが」


 シリアスな口調と表情で、平然と最低な台詞を最後に付け加えていたユニクス。

 最後さえ無ければ、美談だったのかも知れない。

 ……最後さえ無ければなっ!?

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