魔導師組合からの招待状【11】
……で、結局は何が言いたいのかと言うと?
極論からするのなら、魔導師組合にとって幸運とは持って生まれた才能だと考えているのだ。
僧侶を例に出したが……彼または彼女の場合は、信仰心によって己の幸運レベルを上昇する事が出来る。
結果、実力では大きく格上でもあった大魔導を、幸運で打ち倒す事が出来たりもする訳だ。
しかし、魔導師の場合はその限りではなく……チート級に幸運な僧侶に負けた大魔導がいる様に、幸運ばかりは努力でどうする事も出来ない。
……なら?
最初から幸運な魔導師を育成すれば良いのではないか?
……何とも大味な話ではあるんだが、この様な理由で幸運も重要なステータスの一つとして考える様になった。
この関係があるのかないのかは知らないが……宮廷魔導師は、やっぱりそこかしこに運が良い。
中には、運がよろしくない上位魔導師もいる事はいるのだが……その分、やたらと能力が高い為、不幸と言うハンデを背負っても上位魔導師になる事が出来た存在と言う事になる。
そう考えると、不幸な上位魔導師と言うのは、本当の意味で強い魔導師なのかも知れない。
……さて。
ここまで説明した上で、話を冒頭に戻そう。
この『人脈』『社交性』『幸運』の三つを試験する為に設けられた実地試験が、相棒の存在だ。
相棒の制限は密かにない。
簡素に言うのなら、別に人間じゃなくても良い。
職業も不問。
年齢も不問。
つまり『誰でも良いから、能力のある友達を見付けて来なさい』と言うお題目の試験でもあるのだ。
相棒は、基本的に試験者と一緒に試験を受ける。
正確には、試験者を補佐する役だな。
最終的には試験者が実地試験の合否を握ると言う部分に変わりはないのだが、相棒の能力によって合否が大きく変わって来る事も確かだった。
二人ワンセットで試験を行う方式である関係もある為、私が相棒になった場合はフラウに様々なフォローをする事が出来る。
条件によって異なるが、それがアドバイスであったり、互いに助け合う形で試験を消化する事になったりと……様々だ。
試験内容は、その時の天候や試験会場の状況によってランダムに変わるらしい。
これもまた『幸運』を試す意味合いがあるのだろう。
これらの理由から、フラウは是が非でも私を実地試験のパートナーとして引き込みたかった模様だ。
まぁ、これもまた人脈ではあるんだろうし……ある意味で幸運であったのかも知れない。
単なる偶然から出会った相手が、たまたま世界冒険者協会の会長だったのだから、類い稀なる幸運の内に入るのだろう。
けれど、社交性はどうなんだろうなぁ……?
別にフラウの社交性を疑っている訳ではないんだけど、なんか……もっと、こうぅ……気品めいた物があるのかと言われると、あんまり無い気もする。
きっと、周囲に本物のお姫様が二人もいるから、そう言う風に見えてしまうのかも知れないが。
…………。
それはさておき。
こうして私は、フラウの上位魔導師試験の相棒役として、一次試験突破を目指すため、眼前にあった魔導師組合の運営する試験会場へと足を向けて行くのだった。
◎●○●◎
私とフラウを先頭に、魔導師組合の建物へと入った一行は、
「な……なんと言う……」
ユニクスは、入って間もなく感嘆の声を吐き出し、
「お? でっかい絵とか壺とかあるお~? 何だろう~?」
アリンは珍しい光景に目をパチクリしながら周囲を見渡し、
「中々に趣のある建物だね~? 魔導師組合ってお金持ってるねぇ?」
レベル的にはアリンと同じ様な要領で周囲を見渡すルミに、
「……ふむ。これは、時価五億マールは下らない幻の絵画ですね? どうやら、確かに魔導師組合はお金を蓄えている模様です。単なる趣向品にここまでのお金を使えるのですか……これは、ニイガ国内にある魔導師組合への税金を引き上げても良い様な気がして来ました」
最後にルゥが真剣な顔して怖い事を言って来た。
こんな事が原因で魔導師組合の納税額が上がったら、気軽にルゥやルミを誘えなくなってしまう……頼むからそう言う考えを起こすのはやめて欲しい。
ルゥの何気ない話を耳にし、私が右眉辺りに三本線を縦に作っている中……一人だけ集団から離れているメイちゃんがいる事に気付いた。
フラウの面倒も虚しく、ボッチ道を貫いているのかと言うと……そう言う訳ではなく、
「装備すると、炎の魔法が飛び出るアイアンナックル……かぁ。凄いなぁ……こんなのもあるのか」
入口付近に設置されていた購買ブースに、逸早く興味を示していたからだ。
私的に言うのなら、この建物に入って最初に目が行ったのが購買ブースだったメイちゃんの思考には驚きを隠せない。
だって、普通は最初に驚くだろう?
建物の中に入って間もなく、豪華できらびやかなフロントの様な空間が、パノラマで展開されていたのだから。




