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魔導師組合からの招待状【10】

 どちらにせよ、今回の主目的はフラウの上位魔導師アークウィザードの実地試験を行う事だ。

 

 上位魔導師の試験は、一定得点を得る事が出来れば合格となる。

 確か八十点だったかな? それ以上であるのなら合格だ。

 基本は一次試験・二次試験・最終試験の三段階があって、全ての試験で八十点を越える事が出来たら、試験は合格となり、晴れて上位魔導師になる事が出来る。


 上位数名が合格と言う方法ではないので、状況次第によっては受験者の全員が合格する事も可能ではあるのだが、その逆に全員不合格と言う賛嘆な結果だってある。


 一応、私なりに調べて見た所……去年の受験者は、トウキだけで7880名。


 その内、筆記試験を突破した者は71名。


 この時点で、早くも百人に一人しか合格しないと言う、驚異の低合格率だ。 

 だが、ここから一次試験・二次試験・最終試験を突破して、上位魔導師になれた者は……2名のみ。


 これはトウキだけの数字であるのだが、視野を全世界に変えても……合格者の数は17名と言う、かなり狭い門だったりもする。

 

 うぅ……むぅ。


 フラウは学園切っての天才魔導師でもあるし、その才能におごる事なくストイックに努力を続ける、努力の虫でもある。

 あるんだけど……やっぱりちょっと心配になるな。


 まぁ、フラウはまだ十六歳だし……次があると言えば間違いはないのだが、心情的には一発で合格させてやりたい。

 ……最終的にはフラウ個人の頑張りこそが、合格に繋がる事になるとは思うんだが、それでも頑張れと応援したくなる。 

 そう言うのが、人情だろう。


 ……それに、だ?

 実を言うと、私も多少はフラウの補助をする事にもなっている。


 こんな事を言うのは他でもない。

 序盤の方でフラウが私に、泣いて喚いて土下座していたのだが……その理由が、私を試験の相棒として一緒に来て欲しいと言う代物であったからだ。


 上位魔導師の実地試験は、密かに二人で行う。


 これはどうしてか?

 私も気になったので、軽く調べてみた。


 調べてみた結果、魔導師には一定の人脈と社交性、そして何より幸運を必要とする為らしい。


 この一文だけを見ると……おおよそ、魔導師に必要のない物ばかりな気もしなくはない。


 何と言っても? 高いレベルを持つ魔導師なんてのは、大抵ボッチで山奥にあるダンジョン辺りに籠って、何をやっているのか分からない、謎の魔導実験なんぞを好んでやっているイメージが強いからだ。


 実際にそういう連中がいるのも事実だし、往々にしてレベルの高い魔導師であればあるだけ、ダンジョンに引き込もってしまう傾向にある。


 しかし、この世界に関して言うのなら、こう言う魔導師はレベルの高い魔導師でこそあれ、上位魔導師アークウィザードではないらしい。

 この手の連中は上位魔導師にはならず、純粋に単純に己の魔導力と言う物を極めたいらしい。


 つまり、高い能力こそあれ、魔導師組合が定めた上位魔導師の資格をもっている訳ではない……と、こうなる。

 能力があっても、資格がない以上は上位魔導師を名乗る事は出来ないのだ。


 これが良いのか悪いのかは……甲乙付けがたい部分もあるが、上位魔導師と呼ばれる存在の場合は、ボッチではなく……しっかりと社交的な対応が出来る、宮廷魔導師の様な存在を意味するらしい。


 言われて見ると、王族の宮廷に仕える魔導師は、往々にしてみんな社交的であり、貴族も顔負けの立ち振る舞いをして見せる。


 交遊関係も広く浅く……多くの人脈を持つ者が多い。

 知人とのコミュニケーションを円滑にするだけの社交性があれば、自ずと人脈も豊富になる為、この二つの条件はワンセットと考えるのが良いのかも知れない。


 どちらにせよ、上位魔導師になる為の条件に人脈や社交性が含まれているとは思わなかったが……そうと説明されると、なるほど確かにそうだと納得してしまう部分もある。


 さて、次に幸運だ。


 魔導師組合は、基本的に運も実力の内と考える。


 こうと表現すると、純粋に『ラッキーで勝ったとしても、それだって実力なんだ!』と言い訳しているだけの様にも見えるのだが、もちろんそう言う訳ではない。


 魔導師は、僧侶プリーストとは異なり、神々からの寵愛ちょうあいを受ける事はない。

 

 ……よって、神様に微笑んで貰う事が皆無に等しく……カルマの高い僧侶と対立してしまう時などは、何かと不幸が付きまとう。


 この世界は、神様が普通に降臨する様な世界なので、あながちバカに出来ない。

 実際問題……神々の寵愛を受けた僧侶が、多くの民衆を苦しめた大魔導を討ち滅ぼす革命を起こした事がある程。

 

 これは、おとぎ話の様な本当の話で……元来であれば天地がひっくり返っても不可能と言えた、圧倒的な戦力差を『幸運でひっくり返した』伝記として、現在の世でもたまに演劇の演目で出されるまでにメジャーな話だ。

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