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魔導師組合からの招待状【6】

 その後、必死になってメイちゃんに懇願し、どうにかユニクスをひっぺ返して貰うも、


「はぁはぁ……リダ様……わ、私は……もう、我慢出来ませんっ!」


 強引に引き離されたユニクスが再び私にしがみつこうとして来たので、


 ドォォォォォンッッッ!


 爆破して置いた。


 最初からこうして置けば良かったよ……ったく。

 ああ、でも……今回は、しがみつかれていたから、どっちにしても爆破させる事は出来なかったか。


 何にしても。


「助かったよメイちゃん。ありがとう」


 私は、近くにいたメイちゃんにグッジョブしながらお礼を言った。


「いや、それは良いんだけど……ユニクスさん、大丈夫?」


 答えたメイちゃんは、視線を床に倒れているユニクス向けていた。

 完全に爆破魔法を受けた事で、お花畑の住人と化していたユニクスを、少しだけ哀れむ様な目をしていた。


 その隣では、アリンがさも愉快とばかりに、腹を抱えて笑っていた。

 きっと、三歳児にとって、これ以上ない喜劇に見えたのだろう。

 何となく『ざまぁっ!』的な感覚も含まれている様な笑い方をしている様にも見えるけど、そこについては敢えて深く考えない様にした。


「うん? ああ、変態の生命力はゴキブリにも匹敵するからな? この程度では死なないし、一分も必要とせずに復活すると思うから」


 ちょっとばかり心配するメイちゃんに、私はカラカラと笑っては右手を軽くヒラヒラさせて見せた。

  

 凄まじく不本意ではあるのだが、これは周囲の人間にとって日常茶飯事とも言える光景でもあった。

 それだけに、メイちゃんを抜かす他全員は、心配する素振りすら見せる事なくバアルの元に集まって行く。


「じゃあ、全員集まった事だし、行きましょうか?」


 軽く周囲を見回してから、フラウは周囲にいる全員へと答えてから、後ろにいたバアルへと身体を向けてからお辞儀をする。


「バアル学園長。空間転移魔法テレポートの使用ありがとうございます! お礼に、今度、お茶しませんか?」


 そこから、スペシャル愛らしい満面の作り笑いをバアルに見せるフラウがいた。

 満面の『作り笑い』なんぞと、妙な表現をしたのは他でもない。

 多少、童顔ではあった物の……間違いなく美少年と呼ぶに相応しい面構えをしていたバアルに、全力で自分の可愛さアピールをしていたのだ。


 相手が格好良い男子だと、節操と言う単語を何処かに置いて来る癖があるフラウ。

 毎度思うんだが、愛しのパラス様は何処に行ってしまうのだろうか?


「お茶かい?……ふぅむ? キミがリダ様を連れて来てくれると言うのなら、喜んで馳せ参じたい所ではあるが……どうだろう?」


「え? リダですか?」


 少し考える仕草を見せて答えたバアルに、フラウは驚きまなこになってから、


 しゅばっ!


 風を切る勢いで私の前にやって来た。

 もの凄いスピードだった。

 そう言えばフラウのヤツは、上位魔導師になる事を望んでいると言うのに、やたらと運動神経が良かったりするんだよな。


 別段、魔導師だからと言って、全員運動神経が悪いと言ってる訳ではないのだが、大体が頭でっかちが多い傾向にある為、往々にして運動音痴が多い。

 これは、戦闘をするにしても大抵は前衛に守られた状態で魔法を放つ立ち位置であるからだったりするし、生活向上の為に魔導を学ぶ人間の場合は、根本的に運動神経が要らないからだ。

 

 けれど、フラウの場合は優れた運動神経を人一倍持っている。

 そう考えると、フラウのヤツは別の組合の人間になった方が良いんじゃないだろうか?


 ……と、フラウにとって余計なお世話級の素朴な疑問に思考を持っていかれていた所で、


「リダ……あんた、いい加減にしなさいよ? ユニクスお姉と言う最愛の相手がいながら、バアル学園長まで口説いてるの? どんだけ魔性の女を演じたいの?」

 

 真剣な顔して言って来るフラウが。


 …………えぇと? もしもし?


「言ってる事の意味が分からないんだが?」


 何処からツッコミを入れて良いのか分からない台詞を、良くもまぁ……臆面もなく言う事が出来る物だと、逆に感心してしまった。


 そんな時だった。


「……あっ! で、でも……バアル学園長って……デッカイハエだったような……?」


 フラウは思い出した感じで口を動かして行く。

 これは……前回の話で、フラウと私、ユニクスの三人で学園長室へと行った時の話をしているのだろう。


「うーん……どうだろう? あの時のバアルは本人じゃなかったしな? 今のバアルは本人っぽいし……魔法でハエになる事は出来るかも知れないけど、その姿が本当の姿って事はないと思うぞ?」


「マ、マジッすか!? リダ先輩!」


 私にペッタン子の後輩は居ないが?

 おかしなノリで、瞳をキラキラ輝かせるフラウを前に、私は嫌な予感で一杯になっていた。

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