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魔導師組合からの招待状【5】

「やっほ~! みんな、早いねぇ~♪」


 そうと答えていたのは、今回の旅行をする素因を作った張本人。


 その張本人は、やたら上機嫌な笑顔を軽やかに浮かべた状態で、手をフルフルと左右に振っていた。


 別に悪い事をした訳ではないんだが、頭を下げて来て貰っている立場なんだから、もう少し態度をわきまえた方が良いと思う。


「やっほー、フラウ! 今日は、お誘い、ありがと~!」


「マム……その挨拶の仕方は、少し下品ですよ」


 手を振って来たフラウに逸早く返事したルミに、ルゥがすかさず注意を促した。

 私の記憶が確かであるのなら、ルミがルゥの母親であった筈なんだがな?


「もうぅ……良いじゃん? 別に、ここは王室じゃないんだからさぁ?」


「ちょっ……マム! 何ですか! そのはしたない喋り方はっ!? 栄光と格式あるニイガ王家の姫としての自覚を持ちましょう!」


「えぇ……面倒だよぅ~!」


 ルゥの言葉に、ルミは口を尖らせていた。

 どっちが母親なのか分からない光景が、私の前で展開されていた。

 外見的に言っても、ルミの方がお姉さんに見えるんだけど……やっぱり、感覚的にはルゥの方が年長者に見えて来るから不思議だ。


 私が、客観的に二人の姫様を軽く見ていた時、


「おはようございますリダ様! おはようみんな! そして、アリンは託児所に送ってもらうのか?」


 個性的な朝の挨拶を、かなり格差のある言い方でして来た人物がいる。

 悪魔転生から勇者になり、現在は周囲の誰もが認める真性のレズこと、ユニクスの台詞だった。


「託児所とか行かないもんっ! アリンも行くんだもんっっ!」


 自然な態度で、ナチュラルにアリンを蚊帳の外にしたかったユニクスへと、即行でアリンが叫び声をあげていた。

 

「相変わらず、アリンには手厳しいヤツだな」


 私は苦々しい顔になってしまう。

 すると、ユニクスはキリッ! っとした顔になった。


「当然ですリダ様。こやつは、あの憎き邪神の肉体を経ているだけに留まらず、清廉かつ純情なリダ様であるのを良い事に、うまく垂らし込んだアインの娘でもあるのです! 邪険にしない理由が見付かりません!」


 真剣な眼差しで言い放つユニクスを前に、アリンがぶっすぅぅぅっ! っと、三歳児らしい怒り方をしていた。


「か~たま? ユニクスはみんなでピクニックには行かないって?」


「そうか、それは初耳だ。早速、バアルのヤツに言って、ユニクスは空間転移の対象外にしてやらんとな?」


 そこから、誰から見ても嘘だと分かる嘘を私に言って来る。

 アリンの感覚だと、フラウの上位魔導師試験は完全なピクニックになっている模様だが、そこについては敢えて何も言うまい。

 ここに関しては……アリンだけではなく、フラウ以外の全員が似た様な感覚で校門へと集まっているに違いないのだから。


 それより、超が付くまでに下手くそな嘘を言うアリンに底無しの愛らしさを感じて仕方がない。

 可愛いから、そのまま額面通りに頷いた。

 

「ちょっ!? リダ様! そう言う心臓に悪いジョークは、例え冗談であっても言わないで貰えませんかっ!?」


「え? 冗談じゃないんだけど?」


「リダさまぁぁぁぁっっ!」


 最終的に泣き出したユニクスは、がむしゃらに私へとしがみつく。


「置いてかないで下さい! あなたのユニクスは、リダ様に捨てられたら……もう、他に残る物がないのです!」


「えぇい! 鬱陶しいっ! 涙を流して私にしがみつくなっ! 鼻水が服に付くだろうっ!? 分かったから、離せぇっ!」


「いいえ! 離しませんっ! 私をちゃんと連れて行ってくれると、リダ様の口から言うまで死んでも離れませんっっ!…………はぁはぁ!」


 ユニクスは必死の形相になりつつもしがみつく事をやめず……最後には、何故か息を荒くして来た。

 このタイミングで、どうして息を荒くする事が出来るんだ? コイツは?


「ああ……リダ様、リダ様の体臭が……仄かにこうばしい香りが……っ!」


 言うなり、私の体に自分の顔をスリスリと……って、くたばれ変態ぃっ!


「おまっ!? 何してくれてんのっ!? バカなの? ねぇ? バカなのかっ!」


 答えはバカではなく変態だったけど、どの道私にとっては近くに居て欲しくない相手である事に変わりはなかった。


「相変わらず、おかしな事になってるねぇ……リダお姉ちゃん」


 ユニクスにしがみつかれ、微妙におかしな状況へと突入していた所で、呆れ顔になっていたメイちゃんの声がやって来る。


 これで、全員が集まった……集まったんだけど、だっ!?


「そうだよ! おかしな事になってるんだよっ! 頼む……メイちゃん! この頭のおかしな変態を、どうにかしてぇぇぇっ!」


 私は、メイちゃんに向かって遮二無二叫び声を上げた。

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