【1】
快晴とも言える青空のど真ん中に少し大きめの花火が上がる。
朝の花火だけに、それはただの大砲の空砲じみた物になってしまっているが、要はお祭りの合図を周囲に知らせる事が出来れば良いので、音さえ辺りに響けばそれで良いのだ。
第6回・冒険者アカデミー学園祭の開幕である。
この学園が開設されて以降、毎年行われてる年中行事だ。
前に軽く言ったかも知れないが、この日は校内が一般解放されており、学生やその関係者以外の人間も多数、学園内にやって来る。
校内でも、こう言った一般の人達に楽しんで貰う為、様々な催し物やクラス別・クラブ別等での出し物などもあちこちで行われていたのだ。
そして何より、この学園祭で最も注目されているだろうイベント。
冒アカ・バトルGPも、本日開催される。
クラス予選から始まり、約一ヶ月程度の予選を勝ち抜いた強者が、今日と言う本戦を遂に向かえるわけだ。
学園祭自体も、国内の様々な人が多数来客する大きなイベントでもあるのだが、冒アカ・バトルGPは更に世界の各地にある闘技場で、高度な魔術を駆使したライブ中継される為、国内外問わず、熱い視線がこの本戦に注がれる事となる。
「うわぁ……こんなに人が集まるんだねぇ」
辺りを軽く見渡していたルミが、少し驚いた目をして、隣を歩く私に答えた。
本大会の一学年第三代表として本戦出場を果たしていたルミと、同学年第一代表として出場予定だった私は、これから自分達が試合を行うであろう、本戦用の学内闘技場に足を運んでいた。
学園内の闘技場と答えたが、その規模はかなり本格的な造りになっていた。
動員観客数も普通に二~三万人は入る。
もう、普通に国営のスタジアムと遜色はない。
そしてこの日は、周知でもメジャーな大会でもある。
陸続きだからと言うのもあるが、他国からの観客だってそこまで珍しくはない程だ。
それだけに、まだ本戦の開会式すら始まっていないと言うに、もう闘技場は熱気に包まれている。
まぁ、学園のお祭りも予ている大会でもあるからな。
なんだかんだで、みんなお祭りムードなのだろう。
それはそれで良いのかも知れない。
「う?」
……う?
なんだろう? すごーく聞き馴染みのある声がした。
「どうしたのリダ?」
「いや、なんか……知ってるヤツがいた様な……?」
思って回りを見渡した。
……見渡す必要がなかった。
気付いた時には、正面にいたからだ。
「う~? もしかしてリダ?」
頭の両端にお団子を作った東方美人。
一見すると東の大陸からやって来た人間にも見えるが、実はその更に東にある、極東の島国からやって来た人間でもある。
名前は、シズ・ソレイユ・サンスタンド
今あるこの学園から北へ三百キロ程度行った先にある、この大陸二番目に大きな国、クシマ国の冒険者協会・会長だ。
私が会長なら、シズは会長と言った所か?
同じ会長なので分かりにくいが、私は世界の総代表で、シズは国の代表だった。
特徴として、いつも『う~う~』言ってる不思議な美人だ。
見た目は二十代中頃にも見えるが、実は成人過ぎてる二児の母。
実年齢は……まぁ、そう言う年齢だ。
「なんでシズがここにいるんだ?」
「う? 私は毎年、このGPには呼ばれてるから。むしろリダがここにいる事の方が不自然」
「そうなのか?」
「ほら、これ」
シズは一枚の紙を私と隣のルミに見せる。
それは、この学園の学園祭を宣伝する為に作られたポスターだった。
そこには、第6回冒険者アカデミー学園祭と大きく書かれているのだが、その一つ下の所に、やや小さくではあるが、冒アカGPも書いてある。
シズはその更に下の部分を差していた。
そこには、
「剣聖杯?」
と書かれてあり、私は少し不思議そうな顔になる。
なんだろうこれは? と少し頭を捻らせていた所で、シズは私に言った。
「この大会は、私が最初に協会内でやらないかと提案した。それが通って、今がある」
あ~。
言われるとそうだったかも。
しかも、その提案をシズが持ってきた会議に私もいたよ、そう言えば!
「私からすれば、なぜそれをリダが知らないのか謎だ」
すまん、忘れてた。
「なるほど、だから剣聖杯か」
私は納得加減の声音を返した。
シズの別名は『剣聖』だ。
この世界では最強の剣豪を意味する剣聖と言う称号を持つシズは、当然の事ながら剣士最強の腕前でもある。
冒険者ランクも数少ないLランクの一人でもあり、剣だけで戦うと言う条件なら、私も勝てる自信がない。




