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こうして私は無双する・リダVer  作者: まるたん
第四編・編末オマケ短編
376/1397

リダさん親子の平凡な一日【22】

 こうして、メイ対アリンの最終戦が開始される。


「えぇ……と、それでは開始して下さい」


 もはや、適当な顔になっていた審判。

 ……恐らく、消化試合を見る感覚だったのかも知れない。


 審判の合図を耳にしたメイは、一気にアリンの眼前にやって来ては、


「はぁぁっ!」


 ズガンッ!


 アリンを思いきり殴り飛ばした。


「はぶっっ!」


 何もする事が出来なかったのだろうアリンは、そのまま……ポテッ! っと白線の向こうまで吹き飛ばされてしまう。


「お? ふぁっ!? 白線を出てしまったお~っっ!」


 きっと、うっかりなんだろう。

 そして、予想以上に素早く……威力のある攻撃だったのだろう。


 ……ふむ。

 これは前言撤回だな。


 何事も、やって見なければ分からないと言う事だ。

 そしてアリン。

 お前も、油断大敵と言うヤツだ。


「えぅ……負けちゃったお~」


 アリンはガッカリした顔になり、半べそ状態になっていた。

 三歳児であるのなら、ここで癇癪かんしゃく起こしてギャーギャー不平を口にしてもおかしくはないのだが、素直に負けを認めて帰って来た。

 

 ……と、言うか、だ?


「待ちなさいよっ!」


 直後、苛立ち加減で叫んでいたのはメイの方だった。

 明らかに不本意だったのだろうメイは、


「こんなの……ただ、白線を越えたって『だけ』の話じゃない? 私は実力で勝った訳じゃないよっ!」


 馬鹿にするなと言わんばかりに叫んで来た。

 ……ともすれば、メイはアリンがわざと負けた様に感じたのかも知れない。


 だが、それは違う。

 確かにアリンは油断した。

 うっかりもあった。


 けれど、アリンを吹き飛ばしたのは事実だ。

 そして、ルールをちゃんと知っていたのも事実だ。

 メイちゃん……お前はちゃんと実力でアリンを打ち負かしたんだよ。


「こんなの認めない! もう一回やろう!」


 不本意極まるメイが、声を高らかに叫ぶも、


「いやぁ……ルールはルールですからねぇ……」


 審判のジャッジが覆る事はなかった。


 それに……何と言っても、


「メイちゃんつおいね~? アリン、びっくりしたお~!」


 アリンはアリンで、メイに一定の理解を示し……その上で負けを認めていたのだ。

 少し涙が出そうになるシーンだ……何て言うか、アリンもちゃんと成長してるなぁ……と。

 肉体的に強い事だけが人間の強さではない。

 人間として、人間らしい精神……心も強くなければ、それは本当の意味で強くなったとは言えないのだ。


 その上で言うのなら、アリンのなんと立派な事かっ!

 

「そうだな! アリンも頑張ったぞ!……でも、次は油断しないで戦おうな?」


「あはは……うん、そうすりゅ~っ!」


 私の言葉に頷いたアリンは、間もなく未だ納得の行ってないメイに向かってニコッと花丸笑顔を見せてから、グッと親指を立ててから叫んだ。


「次は負けないお~っ!」


「…………」


 メイはポカンとした顔になってしまった。

 すっかり毒気を抜かれた感じだ。

 そこから、自分のやった事が実に大人げないと言う事実に気付いた。


 簡素に言うのなら、ここに来てようやく冷静になれたと言うか。


 直後、メイはチームメイトからの喝采を一身に浴びる。


「スゴい! 流石だよ! 流石過ぎるよ! やっぱり学年トップは違うねっ!」


「分かる! 俺、少し感動した! 世の中に絶対って事はないって、本気で思った!」


 二人は歓喜に湧いていた。


 それは細やかな一勝。

 取るに足らない……ちっぽけな一勝。


 けれど、大きな大きな一勝だった。


 他のどんな人間が鼻で笑おうと……嘲笑の対象にされてしまおうと……でも、彼等にとっては大切な勝利だったのだ。

 きっと、天は笑わない。


 ……はてさて。


 この貴重な一勝を得た事で、試合は続いた訳だが……この結果は、最終的にフラウがメイへと引導を渡す形で終止符を打つ事になった。


 メイは、続くルミを打ち破り、ルゥとの熾烈しれつな攻防を展開する事になる。

 自分の母親がアッサリと打ちのめされた事が不満だったのか? いつになく本気でメイへと戦いを挑んだのだが、健闘空しく破れてしまう。


 しかし、ルゥのやった事は、決して無駄ではなかった。

 続くフラウとの戦いでは、既にルゥとの戦いでスタミナを使い切ってしまったメイが、とうとう力尽きてしまい……フラウの必殺魔法でもある炎神アグニランスをモロに喰らって白旗を上げていた。


 私の出番はなかった。


 …………。


 次回の団体戦ルールでは、私が必ず先鋒で出てやると、無意味なまでの強固さで心に誓うのだった。

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