リダさん親子の平凡な一日【16】
……まぁ、実際にアリンであるのなら、切り傷をこさえる事はないのかも知れないんだけどなぁ……?
単純に親だから、ついつい心配してしまう。
「アリンも作うぅ~っ!」
……やれやれ、仕方ない子だな。
「分かった……分かったよ。か~たまと一緒に、みんなのお弁当を作ろう? これで良いか?」
「うんっっ!」
アリンは元気に笑顔を作ってから、何度も何度もコクコクと頷いた。
……全くもうぅ……可愛いったらない!
よぉぉぉしっ!
それじゃ、私も明日は頑張って見るか!
特に大した気持ちで言った訳ではなかったのだが、こうして明日はみんなのお弁当の食べ比べ大会が開催されて行くのだった。
○◎●◎○
お昼休みも終わり、午後の授業を受ける。
五時間目は、他のクラスとの合同訓練だ。
私達は、再び体操服に着替えて、グラウンドに集合する。
さて、この合同訓練と言うのは、クラスはもちろん学年もランダムな条件で行う実践訓練の一つだ。
簡素に言うのなら、一定のルールを設けた上で、相手と戦闘を行う為の授業だ。
戦い方は様々なのだが、ここでは主に三つばかり説明して置こう。
まず、一つ目。
個人戦だな。
これは剣聖杯や、こないだの特待生の実技試験なんかでやっているから、ここで再び説明する程の物でもないのだが、要は一対一で戦う方式だ。
次に二つ目は、団体戦。
主に三人ないし五人でチームを組んで戦う方式。
基本は一対一の団体戦と言う感じだな?
学園では主に勝ち抜き戦方式が採用されており、最後まで残っている方が勝ちと言うルールだ。
最後の三つ目は、総力戦。
これは文字通りの総力戦だ。
クラスにいる全員がそれぞれ編成を組んで、全員で相手の陣地にあるフラッグを奪う、陣取り合戦がこれに当たる。
クラス全員が互いに作戦を立てて、一定のパーティーを何組か編成し、相手陣地の何処かにあるフラッグを持ち帰って来れば勝ちとなるルールだ。
この総力戦は、クラスの威信を懸けた戦いになる為、どのクラスも総力戦の時は他の合同訓練よりも本気になって取り組んで来る。
ある意味、真骨頂とも言うべき訓練なのかも知れないな。
……さて。
学園内の合同訓練で行う、最もポピュラーな三つをザックリと紹介したのだが、今回の合同訓練で行うのは二番目に説明した物だ。
団体戦がそれだな。
今回、私が組んだメンバーは、アリン・フラウ・ルミ・ルゥの四名。
ここに私が加わる五名での団体戦となる。
尚……個人戦や総力戦に関しては、他の機会で話す事があったら、話そうかなと思う。
個人戦もそうなのだが、総力戦も意外と良く他の学年または他のクラスとやったりもするし、その集大成とも言える学内行事なんかもある程だ。
閑話休題。
五人グループを作っての勝ち抜き戦となるのだが、今回の相手は一学年の特待生。
今年の特待生は入学する人数が多かった為か? 学科分けがされていた。
よって、正確に言うと一学年特別学科A組。
この学科は二学年にはない。
……と言うか、今年度から新しく増設された新学科だ。
三編の編末短編で特待生の試験をやっていた話があったので、どの程度の人数がウチの学園に入ったのかを存じている、実に聡明な方がいるかも知れないが、約百名がこの特別学科の新入生として入学をしていた。
そして、最初に入学試験ではない試験をしていたと思うのだが……実は、この能力テストを行った一番の目的は、実力順にクラス編成を行う為の物でもあった。
余談だが、普通学科はこれまでと同じで、二学年から能力の上下によってクラスが変更される。
だが、特別学科に限って言うのなら、入学と同時に競争が既に始まっているのだった。
クラスの名称がアルファベットなのも、ある意味で意図的なのかも知れない。
これは普通学科との差別化も意味している(普通学科は数字だ。例えば、私は二学年一組だったりするぞ?)のだが、A組とB組と言う様に、響きの時点で差別化される様な名称に敢えて変更されている。
まぁ……実力主義の学園だからなんだろうし、他の学校であるのなら別にA組であってもB組であっても、それだけで能力差があるとか差別的な表現だとか言われる事はないと思うんだが……ウチの学園に関して言うのなら、もう完全に差別化していた。
身も蓋もない話が、A組がそのまま上位成績を持つ優秀な人材と言う事になる。
噂だと、このA組で上位七人に入る人物達を『とっておきの七名』とし、B7(best7)と呼ぶらしいんだが……まぁ、どうでも良い。
正直、どんな敬称で呼ばれていようと何であろうと、私の知った事ではないからな。
脱線が長引いてしまったが……今回の対戦相手がこのB7の内、上位五名らしい。




