リダさん親子の平凡な一日【15】
そんなせいか? ルミが交換条件に出していたウインナーは、アリンの食欲を大きく増長させるに値するだろう魅力を見せていた。
「うん! 交換する~!」
アリンは弁当にあった卵焼きと、ルミのウインナーをトレードしていた。
そして、早速貰ったウインナーをパクッ! と口に入れて咀嚼する。
「……ごっくん! これ、ルミちゃん作ったお? スゴい美味しいお~! か~たま? 明日はウインナーが良いお~!」
「あはは。良し、任せておけ」
本当は、別の食材を買っていたりもしたが、日持ちするヤツがメインだったからな。
ウインナー位なら、後で街に行けば良いか。
「わ~いっ! か~たま、愛してるぅ~」
「ははっ! 私もアリンを愛してるぞぉ~っ!」
何処でそんな単語を覚えて来ているんだろうと、地味に思う私がいるけど、ここは素直に頷いて置こうと思う。
「リダ様っ! 甘いです! アマアマです! ここは、しっかりとアリンの栄養管理を考慮して、予定通りのメニューにするのが賢明です! そして、私のお弁当とトレードしましょう!」
全部トレードしたら、アリンの栄養管理も何もないだろうがよ……。
「それ、お前が私の弁当を食べたいだけだろうが……」
呆れ眼になって言う私がいた所で、
「なっ!? 何を根拠のないデタラメを言うのですかリダ様っ!」
あからさまに焦った顔のユニクスがいた。
デタラメも何もあるか。
私が、純度100%の懐疑を込めて、ユニクスを睨んでいた時だった。
「……って言うか? ユニクスお姉の料理って、メチャメチャ美味しいよ? そこらのお店で食べるのが馬鹿馬鹿しくなる位に美味しいよ?」
フラウが真面目な顔して答えた。
「……なぬ?」
私はキョトンとなる。
何気に初耳だった。
否……ちょっと違うな。
「いつも言ってるじゃないですか? 私はそれなりに料理が得意なのです、と! いつもいつも、何回も断言しまくっていたと言うのに、リダ様は一口も私の料理を食べて下さらない!」
ユニクスは……悲嘆する思いの丈を、完全に放出する形で叫んで見せた。
……うむ。
そう言えば、そんな感じだった気もする。
いつぞや、白パンばっかの私を見て『そんな粗末な食べ物ばかり食べているのは見るに耐えないので、私が昼食を用意します!』とか言ってたユニクスに、私が三秒で『いらね』と言った記憶があった。
素直に頷いても良かったのかも知れないなぁ……。
冒険者をする上で、調理の能力はそれなりに必要でもある。
つまり、ユニクスはもちろん、フラウもそれは同じ事を意味しており……それなりに作る事が出来る。
長期のサバイバル生活だってやらないと行けない関係上、調理は出来ないと死活問題に直結してしまう時があるからだ。
もちろん、それは私にも同じ事が言えて……と言うか、私の場合は実際に数々の長期クエを実際にこなしている為、実践で学んだレシピ等も多数存在している。
アリンがもう少し大きくなったら、色々と教えてやろうと思っている程だ。
「まぁ……そうだな。明日はみんなで弁当を作って来て、みんなで分けっこでもしようか」
そこで、私なりの妥協案を口にする。
「ほ、ほほほほっ! 本当ですかっ!」
すると、ユニクスが鼻血を出して大興奮!
「ちょっ!? ユニクスお姉っ! 鼻っ! はなぁっっ!」
刹那、ポケットからハンカチを出していたフラウに、鼻血を拭いて貰っていた。
……何をやってるんだお前は……。
他方、ルミとルゥの二人も、私の提案に前向きな姿勢を見せていた。
「それ良いね! あははっ! 明日のお昼が、ちょっと楽しみになって来たよっ!」
ルミは軽やかな笑みをロイヤルに浮かべ、
「そうですね。明日は私も普段より少しだけ腕によりを掛けてお弁当を作ろうかと思います」
ルゥもやる気になって声を出していた。
「……そ、そうか」
直後、ユニクスがハッと何かに気付いた模様だ。
「これは、リダ様に私が愛情と熱情と心強さを見せる絶好の機会……絶対に失敗は許されない、千載一遇のチャンスでもあったんだ……」
超が付くシリアスな顔になって独りごちるユニクスがいた。
もう、見事に一人の世界に没入していた。
取り敢えず、放って置こうと思った。
「お? おお~っ! じゃ、じゃ~? アリンも何か作るぅ~っ!」
皆がやる気を見せていた所で、アリンまで触発されていた。
……うーん。
「アリン……気持ちはありがたいけど……包丁は危ないし、火も危ない。火傷とか切り傷作るとかあるし……」
「アリン出来う~っ! 火とか、怖くないもんっ!」
諭す感じで言う私に、アリンは眉を思いきり捩って反論していた。




