リダさん親子の平凡な一日【7】
なんて大人気ないヤツなんだよ……。
「だから、フラウちゃんに勝ちたくて、か~たまを呼んだんだお~」
そして、悔し紛れに親を呼ぶ我が子の考え方にも、ちょっとだけ反論したい気持ちになってしまう。
……実際に、親が召喚されてると言う事実にも大概さを抱くが、親子で同学年をしているのだから、そこは仕方ない話ではある。
そもそも、クラスメートの親って……どうなんだろうか?
素朴な疑問もそこそこに。
「敵チームは赤い光魔法が掛かってるお~。アリンはか~たまと一緒だから青い光魔法掛けるお~」
言ってからアリンは、
ポゥゥゥ……
両手から青白い光を出すと、私に飛ばした。
アリンが発動させたのは基礎的な光魔法だ。
学園に通ってる連中なら剣士でも出来るレベルの簡素な代物なのだが、それを平然と三歳児がやってのけると、やっぱり違和感がある。
でも、周囲の面子は誰も驚いている様子はなかった。
きっと、アリンがこの魔法を使えてるのが普通なのだろう。
……たった数日しか、この学園に通っていないと言うのに……。
その順応度の高さに、私が思わず舌を巻いていると、
「じゃ、俺が抜けるね?」
クラスメートの一人が空気を読んで抜けて行った。
「ああ、そうかぁ……十一人でやるルールだったねぇ……ごめんねぇ、リューア君。後でか~たまにお願いして、パフェ奢るお~」
空気を読んで抜けた男子生徒……リューア君を見て、アリンは心底申し訳ない顔してペコッと頭を下げていた。
更に埋め合わせを約束していた。
……でも、私にお願いする形を取るのな?
ああ、でも……アリンはまだお金とか稼げないし、持ってもいなかったか。
……ぐむぅ。
「お小遣いとか、考えないと行けないかも知れないな」
それら一連の流れを見て、私は両腕を組みながら、そんな事を考えてしまった。
何にせよ、選手交代と言う形で私がアリンのチームに飛び入り参加する形となった。
敵か味方かは、その当人の周囲にあるオーラの光によって区別されていた。
さっき、アリンが私に掛けていた光魔法が、それぞれ各人に掛けられている訳だな?
これにより、飛び入り参加ながら敵と味方の区別は簡単に付いた。
なので、そこまで苦労はしなかったのだが、
「か~たま、パスッ!」
おぅわっ!
どう言う訳か?
アリンは私に良くボールを渡して来る。
いや! 今のは、私よりもっと違う人にパスした方が良かっただろっ!
なんで私なんだよっっ!?
仕方ないからボールを蹴って、ドリブルをするフリでもしてやろうかと思ったら、
「隙ありぃっ!」
スパッッ! っと、フラウが軽やかに足元のボールを奪って行く。
……おふぅ。
なんてヤツだ……まるで曲芸師も顔負けの勢いで、鮮やかに足元のボールを足で掠め取って行ったぞ。
「す、凄いなぁ……」
余りに鮮やか過ぎたせいか、唖然と感心を合わせた様な顔でポカーンとしていると、
「もうっ! か~たま! 何やってんのぉぉぉっ!」
アリンがぷんすか怒って、私に怒鳴り声を上げていた。
きっと、真面目にやらない私に怒りを覚えていたのだろう。
三歳児に怒られる私って……一体。
「今のは、簡単に取られ過ぎだお! メッだお! メェェッ!」
アリンは地団駄を踏む勢いで、私に叫んで来た。
相当悔しいらしい。
何か、自分が原因で子供が悔しい想いをすると、予想以上に自分も悔しい気持ちになる事を、身を以て知った。
よ、よぉぉしっ!
要はあれだろ? 手を使わずに必ず一人以上相手陣地のラインに敵がいて、それをドリブルを使って突破するか、ゴール目掛けてボールを蹴れば良い訳だ。
暴力と言うか、相手を蹴ったり殴ったりするのも違反。
……つまり、そもそも触らなければ大丈夫!
良し、やろうかっ!
私は全力でボール目掛けて突き進む。
その頃、フラウは私達のゴール付近までやって来ては、ゴール前で味方のセンタリング待ち状態にあった。
果たして、味方のセンタリングが綺麗にやって来ては、それに合わせる形で絶妙な動きをして見せるフラウ。
右サイドから高く上がり、ピンポイントでゴール手前に落下すると言う……もはや手を使ってもこんな真似出来ないぞと、地味に嘯きたくなるまでの正確なセンタリングに合わせて、華麗なジャンピングを見せる。
同時に、味方のディフェンダーがフラウの攻撃を阻止するべく、果敢にジャンプするも……フラウの方がタイミング的にも高さ的にも一枚上手だった。
……てか、さりげなぁ~く浮遊魔法まで発動させてるんだがっ!?
浮遊魔法を発動させ、しっかりと男子よりも高く飛んだフラウの頭にボールが落下。
直後にしっかりとヘディングを決め、ボールはゴールへと吸い込まれる様に突き進む。
……筈だった。
バンッッッ!
ゴールポストのスレスレ……本当に小賢しいばかりにギリギリのラインを進むボール目掛けて、私はダイレクトなブロックをして見せる。
ただ、少し慣れていなかった。
そう……。
慣れていなかった!
だから、本当は頭に当てる筈だったんだけど、顔でブロックしてしまった!




