リダさん親子の平凡な一日【3】
……と、この様な感じで、実に他愛のない会話をしながら教室へとやって来た。
皆の私に対する考え方ってヤツをもう少し何とかすべきと、日々悩みあぐねる事然りだ。
けれど、私の意に反して、私=怖い人と言う被害妄想は、地味に広がっており……フラウやルミ、ルゥやアリン等々がそこはかとなく私は怖くない人間だと言ってはくれているみたいだが、その成果は一向に上がる気配は見られなかった。
……くそぉっ!
睫毛だって、可愛くしてるのにっ!
ガラララッ!
……と、私が教室の引き戸を開けると、これまで少し賑やかだった室内が、あたかもホームルームに突入するかの様な勢いで静まり返ってしまう。
私はお前らの担任じゃないんだからなっ!
てか、クラスメートが教室に入って来ただけだって言うのに、どうしてお前らはそこまで私を刮目する?
妙にクラスメートの視線が痛くて辛いっ!
……しかし、ここ数日でこの雰囲気には幾分か慣れてしまった私もいる。
そんなせいか、普段通りの表情で自分の席へとスタスタ歩く私もいた。
他方、隣を歩くアリンに至っては、私が教室に入るとしんっ……と静まり返る光景が普通らしく、全く気にする事もなく、自分の席へとマイバッグを置いていた。
余談だか、アリンにも自席がある。
まぁ、曲がりなりにも学園の生徒扱いなので、席があるのは当然かも知れないけど……やっぱりなんだかんだで不自然ではあった。
前にも言っているが、この学園は高等部相当の学舎だ。
そこに保育園辺りが妥当の三歳児が、平然と机を並べて座っているのだ。
これが自然である筈がない。
まして、三歳児の体格に、周囲の連中と同じ机や椅子が適合する訳もなく、アリン専用にカスタマイズされた小さな机と椅子が用意されている。
もちろん、規格外に小さいので、席は一番前になっていた。
この関係もあり……私の席まで一番前になってしまう。
お陰で、うっかり寝こけてしまうと、物の数十秒で先生に発見されてしまう。
今後は、全力でステルス魔法を研究しないと行けないな!
余談はさて置き。
周囲から異端者扱いの憂き目に遇っている私とは裏腹に、アリンの人気は上々でもある。
例えば、私が自席に腰を下ろしたとして?
そこから間もなくやって来る人物と言えば、フラウやルミ、ルゥ辺りが関の山。
アリンの場合は、席が隣なので最初から近くにいると言うのが正しい表現と言える。
この様に、私の周囲にやって来る人物は極めて限られた存在しかやって来ない。
余談として、たま~にクラスはおろか学年すら違う筈のユニクスが、呼ばれもしてないのにやって来る事があるけど、これはカウントしては行けないと私は考えている。
ああ……そう言えば、最近はメイちゃんも私の所に来る時があるな。
こっちはカウントしても良い様な気がする。
どちらにしても、かなり限定的な人物しかやって来ないと言う点においては、然程の変わりはないだろう。
それではアリンはどうだろう?
「アリンちゃん、おはよ~」
「あい、おはよ~だお~」
「アリンちゃん、今日も元気だね~」
「あい♪ 元気だお~♪」
「アリンちゃん、オッス!」
「おっすぅ~!」
……と、まぁ。
こんな調子だ。
もう、クラスの全員が当たり前の様に朝の挨拶をして来る。
しかも、アリンがこのクラスにやって来たのは、ほんの数日前だと言うのにだ!?
何故だ……?
私とアリン……そこに何の違いがあると言うのだ?
遺伝子的にもそこまで変わらないと言うのにっ!
朝の挨拶だけではなく、休憩中にも色々な生徒がアリンと雑談をする風景も珍しくはない。
昼食の時間だけは、私が中庭の方に向かう為、無条件で教室から出て行ってしまうが……アリンを連れて行ってしまう事で、周囲のクラスメートからの視線が地味に痛い……自分の娘と昼食を取りに行く事が、そんなにも悪い事なのだろうか?
「アリンちゃん、今日も可愛いね~! どう? 私の娘にならない?」
「あはは~! ごめんだお~。 アリンはか~たま大好きだから無理」
隣に親がいる状態で、何を言ってくれてるんですかねぇ……?
何にせよ、アリン人気は絶賛フィーバー中だった。
●○◎○●
ホームルームを経て、一時間目の授業が始まる。
冒険者になる為の学園である為、課外授業や屋外の授業も多い傾向にあるが、それでも基本は座学がメインでもある。




