リダさん親子の平凡な一日【1】
アリンが来てからと言う物……私の朝は地味に早くなった。
……と、言うのも?
「アリン、朝だぞ? ほら、朝だ! お日様が昇ったぞぉぉぉぉっ!」
この子は、ひじょぉぉぉぉに寝覚めが遅い。
我が子ながら、ちょっと驚嘆に値するまでに遅い!
本当……誰に似たんだか。
…………。
き、きっと……アインに似たんだな。
う、うん! そうして置こうっ!
ともかく、頬をペチペチやったり、耳元で声を上げたり身体を揺すったりと……まぁ、何か色々やったりするんだが、中々起きずに毎度苦労する。
起こす方の身になると分かる事ってあるなぁ……私も低血圧で中々起きれないから。
…………。
い、いや! わ、私はちゃんと普通に起きれるし?
こんなにだらしなくないしっっ!
「……ん……ふぁ……ふぅぅ……」
生欠伸もそこそこに、アリンは目を醒まして行く。
やれやれ、やっと起きたか。
「か~たま、おあよ~」
「はい、おはよ~。起きたら顔洗って歯を磨いて来な」
「ふぁぁ……あい~」
アリンは、パジャマ姿のまま生欠伸しつつ、部屋から出てすぐの所にある洗面所に向かって行った。
眠気眼を擦りつつ、ぼやけた頭でヨタヨタ歩く姿は、私にとっては朝の風物詩になりつつある。
地味にほっこりした気持ちにさせられるのだ。
アリンが洗面所で顔を洗って歯を磨いている間に、私は髪をサッとブラッシングしながらも縛って行く。
このタイミングでやらないと、アリンの髪まで手が回らないのだ。
元から慌ただしい朝の時間だけど、二人分になった事で最近は更に忙しくなった。
アリンが戻って来たら、今度はアリンの髪を丁寧に整えて行く。
これは、然り気無い私なりのこだわりなのだが、アリンとお揃いのボンボンを近所の雑貨店で見つけたので、二つ購入して同じ物を使っている。
私の娘である事と、同じ銀髪だからと言うのも合間って、髪型だけを見るとまんま私をちびっこっくした状態になる。
最近では、これが私になりに感じる親子の証なのかなと感じていた。
髪を整えた後は食事だ。
私が一人だけだった時は、寮のおばちゃんに頼んで朝食用の軽い物をいつも作ってもらい、それを一限目の休み時間とかに軽くパクついてたりしたのだが……流石に娘と一緒に暮らす様になってから以降は、しっかりと寮の食堂へと顔を出す様になっていた。
朝のメニューは、朝定食的な物があって、大体の生徒はそれを食べている。
言わば、給食と同じ様な要領だ。
「おいし~っ!」
根本的に好き嫌いと言う概念が存在しないアリンは、今日もおばちゃんが丹精込めて作っている朝食を、花丸笑顔で頬張っていた。
本当、何をしていても可愛いとか……反則過ぎて……ねぇ?
「おはよ~リダ! 最近は普通に起きるんだねっ!」
軽快な声が転がって来た。
ルミの声だ。
見れば、隣にはルゥもいる。
親子だからって言う事もあるけど、本当にこの二人は一緒にいる事が多い。
……まぁ、そんな事を言ったら、私とアリンも同じになるんだが。
「おはようございますリダさん、アリンちゃん」
程なくしてルゥも愛嬌良く微笑んでから私達へと朝の挨拶をして来た。
「もぐもぐ……おはよ~だお!」
ルゥの挨拶に、アリンはすぐに挨拶を返した。
「挨拶をするのは良いけど、ご飯を口に入れたまま喋るな……はしたない」
お前は女の子なんだからな?
ちょっとは、そこら辺も教えておかないと……。
「もぐもぐ……ゴックン! あい~っ!」
アリンは口の中の物を飲み込んでから、元気に頷いてみせる。
うむ、素直でよろしい!
「良いぞ~。ちゃんと出来たな? よしよし~♪」
「あはは~♪ か~たまに誉められた~」
頭を撫でながら言う私に、アリンはキャッキャッ♪ とはしゃいでいた。
何やら、ほんわかした雰囲気が自然と出来上がっていた。
「相変わらず、リダとアリンちゃんは仲が良いね」
そんな私達の光景を見ていたルミは穏和に声を出して来る。
特に羨ましいと言う感情を持っている訳ではないんだろうが、素直に良いねって感じの気持ちを顔に出しているのが分かった。
私の視点からするのであれば、ルミもルゥとべったりな感じに見えるから、お互い様と言う気持ちで一杯だ。
実際問題、ルミやルゥの仲はすこぶる良好で……明るい家族の絆ってヤツが良く分かる態度をお互いに見せている。
アリンが居なかった当時は……幾ら親子であっても、ちょっとくっつき過ぎなんじゃないのか?……と思っていたが、今はその気持ちが痛い程良く分かる。
そして思うのだ。
我が子ってのは、本当に良い物だと。




