事件の終わり【3】
……良い得て妙だが、確かに間違っていない。
成り行きとは言え……結果的に私の娘を魔法でこさえてしまうと言う不謹慎さに、幾ばくかの後ろめたさを抱く私がいたのだが、それ以上に娘への愛しさが上回ってしまう私もいた。
「あはは♪ か~たま! か~たま!」
良く分からないが、愛らしく『か~たま』を連呼し、笑顔で私に甘えて来る我が子にメロメロな私がいたのだ!
うむ!
良く見れば、目元はアインそっくりだな!
口とか鼻は……どっちかと言うと私かな?
あああ! 髪は銀髪だ!
しかも、腰くらいまである長さじゃないかっ!
くぅぅぅ! これは、私の秘蔵ボンボンをくれてやって、私と同じ髪型にしてやらないとっ!
夢広がるなぁ……。
「あの~……もしもし? リダ? だから、名前付けて上げないと、この子も可哀想ですって」
自分でも無意識の内に、脳内お花畑状態となっていた所で、みかんが苦笑混じりになって言って来る。
この声を耳にして、私はようやく現実へと戻って来た。
「ああ! そ、そうだったな……うぅ~んとぉ……」
折角だから、可愛い名前が良いなぁ……女の子だし。
けど、やっぱりアインの忘れ形見だから、アインの文字を入れたいな……。
ぐむぅぅ……。
妙に悩んでしまった。
名前を付けるのって、案外悩む物なんだな……。
そこからしばらく、真剣に考える。
「……アリンにしよう」
色々と考え……一回転して、この名前になってしまった。
なんて言うかだ?
可愛い名前が良いな?
アインの名前から文字をもらいたいな?
……思って、アンでも良いかと思ったが、これだと私の名前がない。
そこは、なんか嫌だ。
特に共同作業した訳ではないけど、私の娘でもあるからだ。
何より、育てるのは私だと思うし。
この時点では、誰がこの子の親をするかまでは話し合っていなかったけど、もう私は決めていたのだ。
この子は、私の娘なのだから、私が責任を持って育てる!……と。
よって、私としてはアインだけ文字を取ると言うのが些か不満だ。
……しかしながら、そうなると私の文字も入れる必要があるのだが……これが、中々ねぇ。
結局、最初の方で考えていた『アリン』が一番、響きが可愛いと思ったのだ。
リインとかリンも候補にあったけど、やっぱり私の中で聞こえが一番だったのが、アリンだったんだよなぁ……。
……と、言う訳で!
「アリン! お前の名前はアリンだ! それで良いか?」
私は愛情を込めて笑みを作りながら尋ねると、未だ私の胸元で甘え続けていた娘……アリンはニパッ! っと、お日様の様な笑顔を作ってコクコクと、何回も頷いた。
「うん! 今日から、アリンだね? わーい! か~たまに新しい名前を付けて貰った~♪」
大喜びして、またも甘えて来た。
ヤバイ……可愛い過ぎる!
「……リダに、こんな一面があったとはな」
イリは意外そうな顔をして言う。
失礼な奴だな?
「私にだって母性はある! この子は……アリンは、私が手塩に掛けて立派な大人に育て上げて見せるんだからなっ!」
結果的に生まれたアインの忘れ形見をいとおしく抱き締めつつ、私は新しい家族の到来を心から喜ぶのだった。
■▲◎▲■
教室に戻ると、リーナの奴はちゃんといた。
正直、したたかに逃げたりとかしているんじゃないかなと思っていたんだけど……ちゃんといた模様だ。
ユニクスやフラウ等、途中からアシュアの空間転移によって、この教室に瞬間移動して来た組等も、どうやらこの教室で避難していた模様だ。
フラウは分かるけど……ユニクスは一緒に校庭で戦ってくれても良かった様な気がする。
そんな素朴な感情を胸に抱きつつ、みかんやイリの三人で教室に戻って来た私は、今回の事件を引き起こした中核的な存在でもあるリーナへと顔を向ける。
リーナは何も口にしなかった。
ただ、観念したのか? 特に抵抗するつもりもなかったらしい。
「良く逃げなかったな?」
「……逃げた所で、そこまで結果が変わる訳でもない……ううん、むしろ私的に言うのなら最悪な結末を迎えるのがオチね……」
問いかける形で口を開いた私に、リーナは何処か自虐的な笑みを作って、そうと答えた。
直後、みかんがちょっとだけ威張る感じの顔を作っていた。
…………。
お前……何をしたって言うんだよ?
理由は分からなかったが……私としては、絶対にロクでもない理由が隠されていそうだったので、敢えて尋ねる事はしなかった。
取り敢えず、みかんがリーナ逃走の大きな抑止力に繋がっていたと言う事実だけを理解したのなら、それ以上の事は知らなくても良いだろう。
きっと、それ以上の事を知れば、私の胸くそが悪くなるかも知れないからだ。




