【5】
根本的に色々とレベル違う。
てか、だ?
パラス君よ………あんたは本当に冒アカの生徒なのかい?
冗談ではなく、割と本気だ。
理由は簡単。
この学園に潜む魔族の存在だ。
どうやら、私がここに入学する事を予見していた上で、今の様に学園内のどこかに潜伏しているみたいなのだが……。
しかも、複数体いる。
これは憶測ではない、確信だ。
そうなると、いよいよ怪しいのだ。
パラス……お前も魔族の一人なのか?
ガチャ
そこで保健室のドアが開いた。
開けたのは、パラスだ。
どうやら、彼なりに心配になってお見舞いに来たのだろう。
「怪我はないか?」
相変わらず、どこかぶっきらぼうな態度で……しかし、心配している事が分かる声音を吐き出す。
………。
守護霊は白い。
別に魔族にだって性格が良いのもいる。
簡素に言えば、魔族だから性格が悪いと言うのは偏見だ。
けれど……私は思う。
果たして、私を狙う魔族が、ここまで自然に敵対の意思を見せないものなのか? と。
相手に少しでも敵意があれば、守護霊にも多少の変化はある。
けど、今のパルスには、それすらないのだ。
「だ、大丈夫でございますです、はいぃ!」
いや、大丈夫じゃないよ、それ。
フラウは顔を真っ赤にして何回もブンブンと顔を縦に振って見せた。
「そうか………邪魔したな」
今ので大丈夫だと思ったのか?
思わず言ってやりたくなった私だが、言うより先にパラスは部屋から出て行ってしまった。
まぁ、彼なりに安否を確かめたかっただけなのかも知れない。
「やっぱり……格好良い………」
ぽ~っとしてるフラウがいた。
あのぅ……もしもし?
「今の、そんなに格好良いか?」
「リダには分からないのです? いや、良いです分からない方が良いです。ええ、そうですとも」
カチンとした顔になりつつも、自分で自己完結してから再びうっとりした顔になった。
「パラス様ぁ……フラウは貴方様を心からお慕い申し上げます」
ああ、だめだこれは。
なんか、吟遊詩人追いかけてる追っかけが、色々と残念なレベルアップしたヤツだ。
まぁ、恋に恋してるのと大差ない。
その内、覚めるだろう。
「……さて、私も帰るかな」
学年予選の決勝は明日。
カリキュラム的には本日中に行う筈ではあったのだが、連戦に次ぐ連戦と言う事もあり、お互いにベストを尽くせる様にと、明日に順延になった。
また、三位決定戦も明日になっている。
「リダ。一つ質問しても良いです?」
「………? なんだ?」
「あの、パラス様に……リダは勝てますか?」
少し不安気に聞いて来る。
私はニッと色濃く笑った。
「フラウ……お前は私を誰だと思ってる? 私は会長だぞ?」
●○◎○●
翌日の昼下がり。
最終予選の決勝戦が開始された。
目前にはパラスがこちらを凝視する。
………なるほど。
なんと言うか、威圧感が半端なかった。
戦う前から、相手を強く牽制している。
本人に自覚がないのか? それともわざとやっているのか? そこは甲乙付けがたい所だが、確実にこれだけは言える。
フラウが炎神を開幕から使って来た理由が分かった。
………と。
「今度は私が相手になる」
「……そうだな」
軽く、互いに一言だけ会話する。
本当、パラスって男はコミュ障か何かなのか?
まぁ、良いんだけどさ。
「始め!」
審判の合図と共に、やはりパルスは私へと間合いを詰めて来た。
すぐさま、模擬刀を私に向けて来る。
ガキィッ!
そして、模擬刀は弾かれた。
「………チート女」
むっかぁっ!
「これはれっきとした防御壁だ! 反則でもなんでもない!」
ちゃんと、努力もしたんだ!
なんの努力もしないで、最初から最強とか言うのが真のチートなんだぞ!
「つべこべ言わずに掛かって来い!」
「言われなくても………」
斬撃を何発も振るう。
しかし、パラスの攻撃は私の見えない壁にシャットアウトされ、
バキィィッ!
折れてしまう。
「……ふざけんな」
「いや、私なにも悪い事してないよね?」
なぜか、睨まれた。
まるで、私が理不尽な事をしてる様な態度になっていた。
そこから、パラスは拳を振るう。
多分だが、格闘スキルでも持ってるんじゃないかと思う。
拳で炎神の盾を一発で粉砕していたのだから。
ドカァッ!
ま……私の壁には傷一つ付かないのだが。
「チートすぎんだろうがぁぁっ!」
もはや言い掛かりに近い叫び声を上げつつ、私に向かってパラスは何回も拳を振り抜いて行く。
………まぁ、あれだ。
学生なら最強クラスなのは認める。
しかし、冒険者協会………つまり、プロの世界での最強となれば、それは別の話だ。
格の違いを見せてやろう、少年。
これが、会長だ。




