戦いの始まり【14】
「これで良いのか?」
「バッチリ!」
私の髪の毛が結ばれた指輪を見せると、みかんは笑みでグッジョブして来た。
どうやら、完璧らしい。
…………。
やっぱり、何がしたいのやら……。
全く了見が見えない心境の私がいる中、みかんは魔導式を頭の中に紡いで行き、
ポゥゥゥ……
指輪が光った。
~ザ・ブレス・オブ・トランス・マイグレイトゥ~ 転生の息吹!
……なんだこれは?
魔法にも見えるけど、魔法じゃないみたいだ。
何でこんな表現になったか?
それは、根本的に私が使う魔法とは逸脱した何かであったからだ。
けれど、そこには魔導式と同じ物……と言うか、似た様な物が組み込まれ、それを媒体にして発動されている。
ただ、それは似ていると言うだけであって、全くの別物なのだ。
よって、魔法の様に見えるんだけど……魔法には見えないと言う、何とも不可思議かつ矛盾した状況が出来上がっていた。
「何だよ……これ?」
「およ?……そ~ですねぇ? 宇宙の魔法?」
「なんだそりゃ……」
私は苦い顔を作る事しか出来なかった。
みかんの言いたい事は……なんとなくだが、分からなくもない。
つまり、この世界を作った宇宙意思……それすらチッポケなレベルになるのだろう、広大な広大な宇宙の超自然現象を利用する事で発動する極大魔法。
人智の理解はもちろん、あらゆる概念をも超越した宇宙の神秘……みかんの魔法は、森羅万象さえも覆せるかも知れない、特殊な魔法である事は何となく理解した。
理解はしたんだけど……。
「毎度思うんだけどさ……お前って、つくづくやる事成す事の悉くが非常識だよな……」
もはや、呆れて良いのか感心して良いのか?
それすらも悩んでしまいそうな勢いだった。
「あはは~。誉めても何も出ませんよ~?」
「誉めてねーしっ!」
そして、この厚顔っぷり。
呆れている私を見て、ちょっぴり気恥ずかしい態度を取れるみかんの厚かましさには愕然とせざる得ないね!
……けど、思うよ。
「お前が味方でいてくれた事が、私にとって何よりの幸福だ」
「それはお互い様なのです」
私とみかんは、互いに笑みを強めた。
そんな中、みかんは私の右手にある光る指輪を指差した。
「あの邪神……と言うか、人工宇宙意思は、心臓部分に核の様な物を持ってるです」
「核?」
「ですです。その核目掛けて、みかんの魔法が掛けられた指輪を当ててくだしゃ~」
指輪を当てれば良いのか。
みかんからの説明を受けた私は、再び指輪を指に嵌め込む。
こっちの方が当てやすいと思ったからだ。
ただ、左手なのがちょっとな。
右手の何処かの指へと強引に嵌め込もうとしても、指輪が拒絶するかの様に入ってくれないんだよ。
まるで、指輪に意思でもあるかの様だ……ったく。
どうしてこんな造りにしたのかね?
「突破口はイリが開いてくれるそうです。それじゃ、よぉぉぉぉく狙って下さいねぇ~?」
みかんは念を押す形で私に言った。
正直、あんまり自信はないんだが、ここで弱気な台詞を吐く訳には行かない。
何より、自分を奮い立たせる為にも、ここは前向きに考えなきゃな!
……そうだ、そうだよ。
私ならやれる!
やってやるっ!
「ああ、任せておけ!」
私はニッと笑みを作ってから、みかんへと快い返事を言い放った。
直後、私は再び補助スキルを発動させる。
……もう、体力も気力も限界だった。
きっと、チャンスは泣いても笑っても、この最後だけだと思う。
超龍の呼吸法レベル2!
ドンッッッッ!
レベル2を発動し、周囲に旋風が撒き散らされる。
同時に、私の身体が悲鳴を上げているのが分かった。
ぐ……くくぅ……っ!
「もってくれよ……私の身体っ!」
気合いを入れ直し、自分の身体に鞭を入れる。
眼前では、背中からうっすらと金色の光を放つイリ(女)が、邪神の虚を付く形で魔法を発動する体勢を取っていた。
絶妙なタイミングで、邪神の背後に回り込んだその時、頭の中で紡ぎ出された魔導式が解放される。
……って、この魔法はっ!?
超炎熱爆発魔法!
ドォォォォォォォォンッッッッ!
尋常ではない大爆発が起こった。
ヤバイ……下手したら、私が発動させるより威力が上かも知れない。
超炎熱爆発魔法の一撃によって、邪神は木っ端微塵になって行く。
「今ですっ!」
刹那、みかんが真剣な眼差しを私に送って、声高に叫んだ。
よぉぉぉしっ!
やってやるっっ!
ダンッッッ!
地を蹴り、砂煙をもうもうと撒き散らしながら、私は一瞬で邪神へと突き進んだ。




