戦いの始まり【9】
「始めようか……」
化物の前にやって来た私は、シニカルな微笑みを作った後、
超攻撃力上昇魔法レベル99!
超防御力上昇魔法レベル99!
超身体能力上昇魔法レベル99!
超龍の呼吸法 レベル1!
補助魔法と補助スキルを一気に解放した。
その瞬間、
ブォワァァァァァッッ!
私を中心にして、強烈な衝撃波が舞い上がり、
ゴゴゴゴゴゴォォォッッッ!
大地が私のエネルギーに共鳴するかの様に呼応する。
「……あ、相変わらず……アホ見たいなエネルギーだな……」
そうと答えたのは、イリだ。
呆れと驚き……多少の畏怖を込めて、私へと答えているのが分かる。
世界一と誉れの高い賞金稼ぎのお前に、そんな言葉を掛けられる事になるとは、夢にも思わなかったよ。
嬉しい様な……そうでもない様な……なんとも言えない気分だ。
そんな、何となく複雑な気分になっていた時、
『オオオオオォォォォオオオオオォオオオォォォッッ!』
邪神が吼えた!
ビリビリッ! っと、頬が痺れるのが分かる。
正直、鼓膜が破れるかと思ったぞっ!?
「行くぞ……イリ」
直後、私は隣にまでやって来ていたイリへと答えると、イリも真顔になって頷いた。
「ああ、最後の戦いだ……派手に行こうぜ?」
イリは、快活な笑みとセットで親指を立てて見せた。
■○◎○■
どう言う研究をして、こんなおぞましい者を造り出したと言うのだろう?
少なくとも、私なりの感想はこれだった。
校庭に立っていた邪神は、体長五メートルはあるだろう巨大なキメラに見えた。
基本的な部分は人の形をしていたが……単なる巨人なのかと言えば、全く違うとしか言えない。
まず、腕が四本だった。
左右対称に二本ずつある。
手の平には目玉の様な物が付いている……様なと表現したが……そのまんま、目なんだろう。
顔には目の様な物があるが、視点と言うか……眼球的な物ではなく、網膜的な物も見当たらない。
そもそも、目として働いているかどうかも微妙な所だ。
背中には羽根。
大鷲の様な羽根と、ドラゴンの鱗みたいな羽根が同時に生えていて……これが、どうにもキメラチックに見えている。
唯一、人間と同じ形をしているのは足だが……足はドラゴンの鱗みたいな物で覆われている為、これまた人間とは一線を置く姿を見せていた。
身体全体を覆っている体毛の様な存在は……一見すると毛にも見えるが、違う。
凄まじく固い……トゲだ。
しかも、一本一本に意思があるのか?
こっちが攻撃しようとすると、トゲが動いて……逆にその突起を利用した攻撃をして来る始末。
何でこんな化物が生まれるのを、そのまま見過ごしたんだよ……イリ。
私はしばらくイリに嫌味を言ってやろうと心に決めた。
……ここで生きて帰る事が出来たらなっ!
「うぉらぁっ!」
叫んだイリは、何処から持って来ていたのか? 鉄パイプの様な物で邪神を殴って見せた。
本当は素手で殴りに行きたい所なんだろうが……体毛染みた固いトゲで、逆に腕を刺されてしまう為……敢えて、何処かからパクって来たんだろう。
ゴッッッ!
鉄パイプが、邪神に当たった瞬間に……物凄い音がド派手に谺する。
同時に、鉄パイプが綺麗なくの字を描いた。
……うむ。
流石に鉄パイプでは無理があったな。
『オォォオオォオオォッ!』
邪神が咆哮する……と同時に、イリへと四本ある腕の一本を飛ばして見せる。
……速いっ!
一瞬過ぎて、イリへと腕を振るっていた事に気付かなかった。
「うぉっ!?」
ドンッッッ!
イリは、邪神の拳をモロに喰らって、そのまま吹き飛んで行く。
「……チッ」
私は歯を食い縛る形で舌打ちすると、
「こっちは大丈夫ですよ~」
吹き飛んだイリを抱えるみかんの姿が見えた。
……ああ、そうだった。
こう言う時はいてくれると助かるな。
イリの無事を確認し、ホッと安堵の息を漏らした直後。
……邪神の拳が私の背後まで迫っていた。
ゴッッッ!
「はぶわぁっ!」
軽く死ねる衝撃が頭を襲った!
この一撃で、少し意識が飛びそうになりつつ……。
ドコォォォッ!
私は校庭の地面にめり込んで行く。
や、やったなぁぁぁっ!
今のはマジで痛かったぞっ!
てか、今ので頭もそうだけど、めり込んだ勢いで擦り傷だらけだっ!
乙女の柔肌をなんだと思ってるんだよっ!
ボンッッッ!
勢い良く上に飛んだ私は、めり込んでいた地面から瞬時に空中へと飛び出ると、
超炎熱爆発魔法!
ドォォォォォォォンッッ!
一切の手加減をする事なく、超炎熱爆発魔法を邪神目掛けてぶっ放した!




