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戦いの始まり【5】

 そこから、ルミとキイロの地味に痴話喧嘩っぽい争いを始めていた。

 そう言うのは、イリ本編だけでやってくれませんかねぇ……?


 ああ、今回は視点が違うだけで、イリでもやってるのか。


 …………。


 まぁ、そっちはそっちでやって貰うとして。

 ギャーギャー騒ぐ、キイロとルミを尻目に、私はイリへと目を向ける。


 痴話喧嘩の渦中にいた筈なのだが、上手い事抜け出していたイリは……まぁ、なんてか慣れてるなと、妙に感心してしまう一面がある。

 当人も、こんな恥ずかしいシチュエーションに慣れたいとは思わなかったろうが……私としては都合が良いから、敢えてそこは何も言わないで置こう。


「……で? 自分のベットにやって来たキイロもどきのリーナに、お前は殺されそうになったんだろう?」


「そう言う事だ……その結果、俺がいた病室が爆破されてしまう訳だ」


 私の問いかけに、イリは頷いてから苦い顔になった。

 苦い顔になってしまった理由は、間もなくイリの口から、ぼやきと言う形でやって来る。


「お陰で、俺の方にも修繕費を病院から請求されそうな勢いだ……ったく」


「まぁ、気持ちは分かるけど、お前は無駄に金持ってるし……何より、無事だったんだから、まずは良しとして置こう」


 嘆息混じりに肩を落としていたイリへと、私は苦笑いもそこそこの表情を作って、自分なりのフォローを入れていた。

 ……そんなにフォローにはなっていなかったけどな。


「それにしても、完全な不意打ちだったと言うのに、お前は全然ダメージを受けていなかったんだな?」


「まぁな? 運が良かったと言わざる得ないな。擬態した相手がキイロだったから、何となく雰囲気で違う事が分かった」


 マジかっ!?


「夫婦の間柄になると、そんな細かい部分まですぐに分かる物なんだな」


 地味に感心してしまう。

 すると、イリはちょっと焦った顔になって私へと言い訳混じりに口を開いて来た。


「そ、そう言うんじゃねーし……」


「照れるな照れるな。その絆のお陰で助かったんだし? 取り敢えずは良しとして置こうじゃないか」


 私は茶化さない程度にイリへと答えて、軽くバシバシと肩を叩いて見せた。

 イリは少し不本意な顔をしつつも、敢えて話のベクトルを戻したくはなかったのか? 特に掘り下げて来る様な真似をする事はなかった。


「それよか、だ? 爆破されたイリは、リーナをその後どうしたんだ?」


「そこに関しては……まぁ、なんてかすまん……逃がしてしまった。上手い事、撒かれた感じだった」


 イリは申し訳ない顔になって私に言う。

 ……ふむ。

 なるほどなぁ……そう言う訳かよ。


 つまり、リーナの所在とかをイリも分かっていないと言う事になる。

 結局はふりだしに戻ったと言う事か……。


「どうした物かなぁ……」


 私は苦い顔になりつつも、唸り声を上げていた。


「取り敢えず、俺の口から言える事と言えば……しばらくは学生に戻っても良いんじゃないかって所か」


 唸り声を上げていた私に、軽くアドバイスする様な口調でイリは言って来た。


 ……?


 不思議と、そうするべきと言いた気な表情だった。


「一応、私は学園長から許可を得ているから、授業に参加しなくても良くなってたりするんだが?」


「そうなのか?……随分と待遇の良い話だな……最近の学生ってのは、そこまで自由に出来るんだな」


「……いや、多分……私だけだと思う」


「……会長の特別待遇ってヤツかよ」

 

 イリは少し呆れた。

 言ってる事に、少し反論したい私がいるけど……元を辿れば、私が会長だからこそ出来る事なのだろう。

 突き詰めるとそうなってしまうのなら、私としても反論の余地はない。


 仕方ないから、何も言わず誤魔化し笑いだけしていた。


「ったく、良いご身分だな……まぁ、そこはお前の自由だ。俺がとやかく言う筋合いはないわな」


 呆れ半分に……しかし、イリは柔軟な台詞を口にする。

 そこから、再び口を開いて来た。


「けれどな? これは飽くまでも俺の予感なんだが……お前が学園で普通に学生をしてれば、確実にリーナの方からやって来ると思うんだよ」


「……っ!」


 イリの言葉に、私は思わず息を飲んだ。

 目からうろこが落ちた気分だった。


 なんて事はない。

 アイツの目的は、私が所持している水晶にあるんだ。

 そうなのだから、私は待っているだけで良い。

 わざわざ探す事をするまでもない事なのだ。


「……そうか……確かにそうかも知れない」


 何て事だ……。

 最も根本的な部分だった。


「分かった。明日からは普通に授業を受ける事にするよ」

 

 今日は、多分……もう欠席扱いで良さそうだからな。


「ああ、そうしてくれ。頼んだぞ?」


 イリは笑みを作って私に答えた。

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