戦いの始まり【4】
ハッキリ言うと、私の感覚からすれば不自然さすら感じてしまう。
「なぁ、イリ? お前……バアルと何かあったのか?」
「……特にないが?」
しれっと答えている……様に見えた。
だけど、その実……妙に顔が引き釣っているのも分かる。
「……まぁ、良いが。バアルとお前がどんな関係にあろうと、私に迷惑が掛からないのなら、好きにやって来れ」
「怒らないのか?」
……って、その台詞の時点でバラしてる様な物だぞ?
私は、不思議そうな顔して言って来たイリの台詞を耳にして確信した。
多分、今回の一件については、バアルと色々と共同戦線を張っているのだろう。
思えば、私に対して嘘情報を発信した張本人もバアルだった。
こうと考えるのであれば、その時からイリはバアルとそれなりに協力体制にあったのかも知れない。
私に内緒でやっていた事に関しては妙に腹立たしいが……恐らく、バアルなりの配慮から来てるだろうしな。
それに、味方をこれ以上無駄に怪しむような思考を持ちたくない私もいる。
さっきのルミの一件も然りだ。
ここは、私の事をしっかりと考えている上での行動であると信じて見ようじゃないか。
「もしかしたら、イリもバアルから何かを聞いているかも知れないが……バアル情報ではリーナは生きているって言う話だ」
「そう言う事か……なら、生きてるだろな」
イリは即断した。
うぉ……信頼度も高いな……バアルさんよ。
「相手は悪魔なのに……良く、そこまで信用する事が出来るもんだな?」
私は口をへの字にして言うと、
「その台詞……そっくりそのままノシ付けて返してやるよ」
見事なブーメランが返って来た。
全くその通り過ぎて、私は反論する事が出来なかった。
この話を更に掘り下げると、更なるブーメランが私に到来して来そうなので、話の内容を変える事にした。
「リーナは、いつ位に来たんだ?」
「深夜だ……詳しい時間は覚えてないが……多分、深夜の二時位だったんじゃないかと思う」
私の質問に、イリは思い出す感じで言う。
深夜……か。
つまり、寝込みを襲って来たと言う事か。
「最初は、俺も焦った。キイロの格好をしていたからな?……その前には丁度キイロがトイレに行ってたし……ただ、戻って来ただけだと思った。序でに俺のベットに来た時は、自宅にいる時の癖で、俺のベットに入って来ただけかと思ってたんだ」
……なぬ?
「お前……自宅では、キイロと一緒のベットで寝てるのか?」
まぁ……冷静に考えると、自分の奥さんと一緒のベットに寝るのは普通なんだけどさ?
けれど、戸籍的にはまだ結婚してないだろうし……何より、だ?
「へぇ……やっぱりイリとキイロは、もうそう言う関係なんだ?」
ズゴゴゴゴッ!
私の隣にいたお姫様がスペシャルご立腹なんだが……?
「いや、待てよルミ! 俺はお前が考えている様な、そ~ゆ~夜を経験した事はないからなっ! つか、ミドリが居る手前、そんな事出来るかよっ!」
イリは遮二無二慌ただしく叫んで、険悪な眼差しを送るルミへと反論した。
直後、ニコニコ笑顔でミドリが言う。
「お父さんと三人共同作業しても良いかなっては思ってるよ?」
どんな共同作業しようとしてるんだよ、アンタはっ!?
直後、物凄い動揺を見せ、顔をトマトにしていたキイロがアタフタしながら口早に叫んだ。
「バッバカ! そ、そんな……恥ずかしい事出来る訳ないでしょっ!? ここは病院なんだからっ!」
場所の問題かよっ!?
…………。
どうやら、イリ達の常識は……私とは別の所にあった模様だ。
正直、もう少し節操と言う物を持った方が良いと思うけど……これはジウム家の家庭の事情なのだからして、私が首を突っ込むのもどうかと思う。
なので、敢えて何も言わないで置いた。
「イィィィリィィィ! アンタねぇ……私と言う、綺麗で可愛いお姫様の様な奥さんがいるのに……こんなトカゲの様な女と楽しくワッショイしちゃうのっ!?」
直後、殺意の波動に目覚めたルミが、背中に暗黒闘気を背負い込みながらイリへと怨念染みた言霊を飛ばしていた。
この言霊を受けてカチンと来たのはキイロだった。
……否、良く見るとミドリも面白くない顔をしている。
きっと、トカゲって言う単語がダメなのだろう。
人間相手に猿と言ってる様なニュアンスなのかも知れない。
「誰がトカゲだって!? 私は由緒ある高貴な血筋のドラゴンハーフであって? 決してトカゲ呼ばわりされる様な筋合いなんて、ないんだからっ!」
キイロは、無意識に口から炎を吐き出してルミへと凄みを見せていた。




