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戦いの始まり【1】

 リーナは生きていた。


 信じられない話だし、証拠を見てそう述べている訳ではないのだが……バアルがしっかり調べている上で言っているのだから、それは確実にそうなのだろう。


 ……うむぅ……。


 根底をひっくり返された気分で一杯だ。

 そもそも、リーナのヤツが生きているのなら、私は殺人容疑で捜査令状を受ける筋合いはない。


 むしろ、衛兵側が間違っていた事になるし、そもそも私は殺していないと言う決定的な証明にも繋がる。


 恐らくバアル達に頼めば、リーナが死んでいないと言う証明に繋がる代物を用意する事も出来るとは思う。

 よって、衛兵達に私の容疑を晴らす行為は、幾らでも可能だと言う事だ。


 ……とは言え、今はそんな事をしている場合ではないと、私は考える。


 リーナが生きているのなら、それはそれで結構な事だし、衛兵側でリーナの死亡を確認したからこそ私が疑われた……と言う性質上、どう言う風に死亡を断定または認定したのかで、幾分か懐疑的に感じてしまう部分もあるが、ここらは後からゆっくり調べても遅くはないだろう。


 そもそも、バアル達が全ての真相を既に暴いていると思うしな?

 

 生憎、私は探偵ではない。

 事件の真相云々よりも優先すべき物がある。


 私が現在着目するべき優先ポイントは、リーナが生きていた事だろう。


 ここらに付いてもバアル達が調べ尽くしているのかと思っていたんだが……どうやら、まだ分からないらしい。

 一応、トウキの何処かに、未だ潜伏している事だけは確実らしいんだけど……どうした物か。


 仮にヤツがまだ生きているとすれば、確実に私へと姿を現す事は間違いない。


 バアル調べによれば、リーナは邪神降誕を目論んでいるらしい。

 全く……ここの所、驚きっぱなしで、気が休まる暇がないよ。

 元々、研究所の一員として働いていたのは、前にも言ってたかも知れないが……どうやら、リーナのヤツがこの学園にやって来たのは偶然ではなかった模様だ。


 つまり、私の手にしている水晶を狙っていたんだ。


 どうやら、リーナのヤツも邪神の力に魅入ってしまった狂乱者の一人だったみたいだ。

 リーナが研究所を裏切ったのは……邪神の力を文字通り自分の手に入れようと目論んだ末だったらしい。

 中々に大胆な策略を立てた物だな。


 私の水晶を見つけ出し……邪神を降誕させる事を目論んでいたリーナは、研究所を抜け出し、この学園の教師として潜伏していたと言う事になる。


 その後に、私を狙った研究者関連の暗殺者がやって来た。


 ……うーむ。


 逆に言うのであれば、リーナはこの暗殺者と同じ穴のむじなであると言う事だ。

 裏切り者であったとしても、協力をすれば裏切りの罪を軽減してやる的な事を言われて、暗殺者側に協力をしていたとしても、何も不思議な事ではない。

 

 それと、もう一つ……実に素朴ながら不思議に思った点がある。


 これだけ狙われていると言うのに、どうしてこの水晶は、私の手元から離れる事がなかったのだろうか?


 こんな事を言ってるのは他でもない。

 寮にある、私の部屋に飾ってあった『だけ』なのだから。


 特に対した防犯対策をしていた訳でもない。

 ……むしろ、これ見よがしに飾っていた始末だ。


 私が帰宅した時は、偶然ポケットの中に入れていたから、盗まれなかったと言うのも分かるんだが……少なからず、結構前にはこの学園に潜伏していたリーナ辺りであれば、とっくの昔に私の部屋から水晶を盗み出していたとしても、なんら不自然な事ではなかった。


 けれど、リーナはそれをやらなかった。


 ……どうしてなのだろう?


 考えれば考える程……分からない謎が増えて行く事ばかりだ。


「ともかく、まずは行動に移る事にしようか」


 答えた私は私服に着替える。

 時刻は朝の九時を少し回った所だろうか?

 

 既に学園はホームルームの時間を過ぎており……皆は授業を初めている事だと思う。

 本当なら、私もその中の一人として、学業に専念していた筈なんだけどなぁ……。


「いつもながら、どうしてこんな事になるんだろうなぁ」


 独りごちてから嘆息した。

 時々、驚くまでに理不尽な出来事に巻き込まれてしまう、自分のトラブルメーカーさ加減が嫌になる。


 ……とは言え、そんなネガティブな思考を、ダラダラと考え込んでいても何も始まりはしない。


 ……うむ。

 ここは、ポジティブシンキングで行こう!


 ともかく、まずは病院に行こう。


 もしかしたら、何らかの情報をイリが入手しているかも知れない。

 可能性は決して高くないが……どの道、私が分かった情報をイリに教える必要がある。


 何より、今日にも退院する予定だと言うから、退院見舞いも予て、ヤツの所に足を運んでやろうかと考えていた。

 

 その時だった。


 ガチャッ!


 自室のドアが開いた。

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