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疑惑の始まり【16】

 臨時担任の言い分はごもっともだ。

 テストの成績が良いと言う理由だけで、授業を受けなかったとしても良いのなら、そもそもこの学園に通う理由もなくなってしまうからだ。


 テスト以外の部分にも、色々な要素があって……例えば内申点なんかは、テストの成績だけで決められる訳ではない。

 極端な例で言うのなら、成績だけならトップでも、スペシャル素行不良であるのなら内申点は絶望的になる。


 だが、学長の申し出の通りで言うのなら、成績が良かったら学校に来なくても内申点も保護しろと言っている訳で……。

 そりゃもう、本末転倒レベルに頓珍漢とんちんかんな話だと言う、臨時教師の言う事は正しい。


 一体、何がどうなっていると言うのだろうか?

 

 反面、これは嬉しい話ではある。

 元来であるのなら、既に社会人として生きている私は……まぁ、この学園を退学したとしても問題はないかも知れないが、フラウやユニクスの二人に関してはこの限りではない。


 それでいて……不明瞭かつ不思議な部分も多い。

  

 この件に関して言うのなら、私は学長に一言の相談をしていない。


 だが、どう言う訳か?

 学長は学年主任の臨時担任に、学生の本末転倒レベルの寛大さを見せる話をして来た訳で……。


「全く……新学園長だか何だか分からないが、変な人間をポストに据えた物だよ、ここの学園は」


 ……うぬ?


「え? 学園長って変わったのですか?」


 まぁ、こないだ新年度になったばかりだから、学園長が人事異動で変更されていてもおかしな事ではない。

 

 教育機関的に言うのなら私立的な学園ではあるが……大きな視野で言うのなら、世界冒険者協会傘下の組織だ。

 人事も、冒険者協会が決めている。


 つまり、前年度の学園長も、言うなれば冒険者協会の幹部であって……協会からの人事異動を言い渡されれば、素直に異動するしかない。


 よって、前年度の学園長が違う所に異動したのは、協会にある人事部の考えによる物だとは思ったし……そこをアレコレ言うつもりもない。


 ないが……しかし、だっ!?


「ああ……リダさんは本年度の新学期から、あまり学園に来なかったから分からないのかも知れないな?……でも、確か始業式には出席していた筈だけど……見なかったかい? バアル学園長を」


「バアルが学園長になってるのかいっっ!」


 私は思わずツッコミ半分に喚いてしまった。


 何?……どうして、そうなってんのっ!?


「全く……あんな子供みたいなヤツが上司とか、この学園を辞めたくなって来たよ……はぁ」


 そうとぼやく、悲しい中間管理職の学年主任。

 私的に言うと、そこは仕方ないと思うぞ?


 そう言うのが嫌なのであれば、年功序列がある会社にでも入社する事だな。

 ……まぁ、トウキ帝国は資本主義な挙げ句、実力主義の国だから……そんな会社なんか皆無に等しいと思うがな。


「そんな事より、先生……バアル学園長と言うのは、見た目が十代程度の少年で、妙に気丈な立ち振舞いを見せる癖して、悪口には打たれ弱い感じの変人ですか?」


「自分が在学している学園の長を、そこまで侮辱する様な台詞を臆面も無く吐ける君の言動には苦言を呈したい所だが……少年と言う点に関してはそうだよ……全く。協会はどうしてこんな人事をして来るのか……」


 そこで、臨時担任は再び重い溜め息を口から吐き出していた。


 地味にテンションが下がっていた臨時担任は、そこから頭にキノコでも生えそうな陰鬱さを保持したまま、私へと尋ねて来た。


「それで……君達はどうして、学園長から破格の待遇を勝ち取ったと言うんだ? 支障がなければ聞きたい所なんだが?」


「それは無理だと思いますよ」


 臨時担任の質問に逸早いちはやく答えたのはユニクスだった。


 ユニクスはかなり真面目な顔で臨時担任へと口を開いていた。


「それは、どうしてだい?」


「先生……あなたは言いました『支障がなければ聞きたい』と」


「……? それがどうかしたのか?」


「どうかします。最悪、あなたの首が飛びます」


「…………」


 臨時担任は押し黙った。

 この学園を辞めたくなったんじゃなかったのか?


「くそ……俺には、腹を空かせていつも帰りを待っている、二匹の猫がいるって言うのに」


 子供や嫁じゃないのな?


 それはツッコミを入れるべきなんだろうか?


 ふと、そんな事を考えていた時だった。


 ガラッッ……


 教員室の出入り口に当たる引き戸が開いた。

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