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疑惑の始まり【11】

 ……参った。


 まるで蟻地獄にでも捕まった気持ちだ。


 悩めば悩むだけ、悩みの深みに嵌まって行き……足掻けば足掻くだけ、より新たな悩みが転がって来て、余計に話が複雑になってしまう。


「な、なんなのっ!? ほ、本当にぃっ! たまには、私もちゃんと混ぜてよぅっ!」


 フラウは半べそ状態になって叫んでいた。

 ……ああ、そうだったな。


「……うむ、フラウ! この件に関しては真面目な話、後でちゃんとキッチリ話してやる。やるから……」


 言うなり、私はそこでフワッと宙に浮いて見せた。

 浮遊魔法レピテーションを発動させ、イリの病院へと急行しようとしていたのだ。


「あ、こらっ! 待ちなさいよっ!」


 宙に浮いた私を見て、フラウはアタフタとした顔になって叫んで見せる。

 

 ……?

 

「なんだよ? 来たければ、ついて来れば良いじゃないか」


「制服で空なんか飛んだらパンツ見えて恥ずかしいでしょっ!」


 うぁ……本当だ。

 フラウに言われて、私は初めて気付いた。

 これじゃ、私は空飛ぶ猥褻物わいせつぶつじゃないかっ!


 ……ぐ、くぅ……。


「あ、リダ様。私が歩いて行きますので……」


 そこでユニクスは口元をヒクヒクさせながら、そうと断りを入れる。

 待て! おまっ!? そこで、ユニクスまでそーゆー台詞を言ったら、私が自分の意思でパンツ丸見え飛行してるみたいになってしまうじゃないかっ!


 く、くそぉ……っ!


 思った私は、


「こう言う時は、高度を一気に上げれば良いだろっ!」


 もはや、言い訳にも近い台詞を良い放つと、


「分からないよ? 双眼鏡とか使う人がいるかも?」


 何処の変態ですかねぇっ!?

 もし、それをやっていたとすれば、そいつが変態である事が確定するだけだろっ!?


「それに、移動中は良いかもだけど……目的地に到着した時はどうするの? 着地するには空から降りて来るしかない訳だし」


「…………」


 私は無言になる。

 

 ……くそぅ……フラウめ!

 どうして、お前はこうぅ……人を正論で負かそうとするんだよ。


 その後、私は帝国病院へと歩いて向かうのだった。




     ■○◎○■




 イリが、何処まで知っているのかは分からない。

 だが、確実に言える事は……今の私よりもあらゆる面で情報を得ている。


 故に……私はイリに会わなければならない。

 

 そして、思う。

 今回ばかりは惚けてくれるなよ? イリさんよ……?


 ガチャッ!


 中心地の総合病院だと言うのに、わざわざ値の張る個室に入院していた私は、室内に赤の他人がいない事を知っていた為、やや乱暴に室内のドアを開けて見せた。


「あら、リダさん……それに、ユニクスさんとフラウさんも。みんなでイリのお見舞いに来てくれたの?」


 そうと口を動かしていたのはキイロだった。

 室内には、もちろんイリもいる。


 見る限り、室内にはイリとキイロの二人しかいない模様だ。


「ルミやルゥ、ミドリとかは何処かに行ってるのか?」


「ああ、あの子達なら……シブゥ地区にあるお店で色々欲しい買い物があるから、ちょっと行って来る……って」


 周囲をキョロキョロ見回しながら尋ねた私に、キイロはやや苦笑しながら返答して来た。

 イリが元気だったから……ってのあるんだろうが、なんて呑気な連中なんだろうか。


 地味に呆れた私がいた所で、


「お前も行って来ても良かったんだぞ?」


 何の気なしにイリがキイロへと言っていた。


 ここは、イリなりの気遣いもあっただろう。

 ニイガもそれなりの都市ではあるが、やっぱりトウキは桁違いに大きな街だし……見所はもちろん、みんなで楽しく散策するには打ってつけの場所でもある。


 けれど、キイロは穏和な笑みを淑やかに作りながら、フルフルと顔を横に振った。


「旦那が仕事で入院してるって言うのに、私だけ悠長に観光する訳には行かないでしょ……そもそも、アンタがそんな状態じゃ、素直に楽しめないじゃないの」


「……そうかよ」


 ……あ、イリが照れてる。


「愛されてるなぁ……色男?」


 私はシタリ顔で言うと、


「うるせぇっ! 冷やかしならお断りだぞっ!」


 恥ずかしさを誤魔化す為か? 普段よりも語気を強めて私へと叫んで来た。


 なんてか、まぁ……ごちそうさまとだけでも言って置こうか。


 元来であるのなら、もう少しイリのヤツをイジッてやりたい所ではあるんだが……こっちも悠長な事をしている場合じゃない。


 思った私は、すぐに真剣な顔に戻ってからイリへと口を開いた。


「今回は、お前に一杯食わされたよ……ったく、私はお前を完全に信じ切っていたのになぁ……」


 少しオーバーな位に、嘆息して見せた。

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