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疑惑の始まり【10】

 言いたい事は分かったし、何だかんだ納得尽なっとくずくでも正論を言って、私を論破したいフラウの考えは分かった。

 そして、見事に論破されている感も否めない。


 しかしながら……私としては、もう学園に戻って授業を受けたくはない。

 理由は簡素な物だ。


 面倒臭いっ!


 この一言に尽きる。

 当然ながら、この理由だけでフラウが引き下がる事はないだろう。

 コイツもコイツで面倒なヤツだなぁ……もう。


 そこはさておき。


 つまり、意味なくサボるのは許さないからな?……と言っている。


 なら、私が取る手段はこれしかないだろう。


「悪い……実はさ? ちょっと用事があったんだ」

 

 私は苦笑する形で言うと、フラウはあからさまに怪しんで来た。

 

「へぇ……どんな理由?」


 顔で『下らない理由なら却下してやるからな?』と言っていた。

 あんたは私の保護者か?


「イリに用事があったんだよ」


「イリさんに?」


「……ああ、そうだ」


 フラウの言葉に、私はコクリと首を縦に振ると、


「奇遇ですね……実は私もイリさんに会いたいと思っていた所だったんですよ」


 この言葉を聞いたユニクスが、私の言葉に賛同する形で声を出して来た。


「リダ様がどうするのか分からなかったので、敢えて口にはしませんでしたが……私はこれからイリさんが入院している病院の方に向かって見ようと考えていたんですよ」


 ……ほぅ。

 つまり、あれか?


「ユニクスも、何か気付いた感じか?」


「気付いたと言うのが正しいのかは、まだ判然としておりません……よって、確かめに行くのです」


 ……なるほど。

 どうやら、ユニクスも一定のラインまでは考えが纏まっているみたいだな。


「え?……何? 二人して!? もしかして……まぁ~た私だけ仲間外れにされてるの?」


 他方、フラウは眉を思いきり捻った状態になってヘソを曲げる。


「いや、別にそんなつもりはないぞ?」


「じゃあ、話しなさいよ」


「……う」


 怪訝な顔して、完全に気分を悪くしていたのだろうフラウの言葉に、私は思わず口ごもった。

 特に言ってはいけないと言う訳ではないんだけど……何だかんだで危険ではある。

 他方、ユニクスもそれは分かっているのだろう。

 

 根本的に心配性である事もあって、私へと『喋ったらダメですからね!』オーラを、これでもかって位の勢いで飛ばしていた。


 そこまでしなくても、私は喋らないから安心して欲しい所何だけどなぁ……?


「……なぁ~によぅ~っ! やっぱり仲間外れなんじゃないのっ! こないだは、リダだけ居なくなってユニクスお姉は『学園にいた』けど……」


 見事な喧嘩腰になって喚き倒すフラウの言葉だったが、そこまで答えた所でユニクスの言葉が割って入って来た。

 

「……それは聞き捨てならないな?」


 実際、ユニクスからするのなら、確実に不自然な話だったからだ。 

 

 理由は簡素な物だ。

 ユニクスは、私と一緒にいたからだ。


 毎度、呆れてしまうが……持ち前の狂った執着心がそうさせているのか? 私が自宅へと戻った翌朝には私の寝室で一緒に寝ていた。

 冷静に考えると……こっちの方が不気味に不自然であり、ミステリーレベルの謎でもあるのだが、今回は敢えて割愛して置く。


 深く考えると怖いからなっ!


 病んでる勇者の性質はともかくとして……ユニクスは確かに私の自宅にいた。


 なら、フラウが見た学園のユニクスとは、誰になるのだろうか?


 すぐに出て来たのはリーナの擬態能力だ。


 しかしながら、ここでも不自然な事に気付く。

 何故ならリーナは、学園の職員だ。

 つまり、担任の先生として職務を全うしていた筈なのだ。


 つまる所……ユニクスになってしまえば、リーナ先生が居なくなってしまう。


 いや、そもそも……学園に侵入すると言う目的があってユニクスに扮装したとしよう?

 既に担任として、真っ当な公認許可を貰っている学園の担任をしていると言うのに、わざわざそんな真似をするだろうか?


 答えはもう出ている。


 その必要はない。


 仮に、私を暗殺する事が目的で、敢えてそれをやったとしても……リーナ先生とユニクスの一人二役をどうやってこなして見せたのか?


 まさか、リーナは分裂する能力があって、二人になる事が可能……なんてふざけた理由がある訳でもないだろう。


 ……すると、そうなれば。


「……二人いるって事になるのか……?」

 

「……分かりません。まだ正確にそうと決まってはいませんが、擬態能力を持つ存在が二人いたとすれば……厄介な話になりますね」


 私とユニクスは、互いに悩みのツボに嵌まってしまった。

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