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疑惑の始まり【2】

 なんでそんな事になってるんだよ……と、思いきり誰かにぼやきたい気持ちで一杯だった!


 そもそも、だな?


「確かに、私はリーナと一緒にいたかも知れないけど……だからって、ほぼ犯人扱いとかおかしいだろっ!?」


「それはその通りです。ましてリーナは密入国によって戸籍を色々と偽装した挙げ句、リダ様を暗殺しようとしていた犯人の一人……非があるとするのなら、むしろ向こうに非があると見て間違いありません」


 けれど、そうはならなかった……と、言う話なんだろう。

 誰が何の為に、こうもおかしな話をでっち上げて来たんだ?


 どうにも腹の虫が収まらない内容に、私はイライラした顔を露骨に作り出していた。


 そんな時だった。


 カランカラン♪

 

 カフェの入り口の方から鐘の音が響いた。


 店内に誰かが入って来ると、ドアの上に付いている鐘が鳴る仕組みになっている。


 つまり、新しい客が来た訳なんだが、


「……トモヨさんと、ジャベリンが?」


 思わぬコンビがやって来た事で、私は更に困惑してしまう。

 この二人は、考え様によっては水と油も同然の存在だった。


 片方は治安維持を目的とする衛兵。

 片方は裏世界を暗躍したギャング。

 見事に正反対な二人だ。


 ただ、正確に言うのなら後者は、前回の騒動で完全にギャング団を解散する事になり、現在はちゃんとした真っ当な会社を営業しているだけになっている模様なのだが。


 仮にそうだったとしても、ほんの少し前までは互いに敵対する間柄としていがみ合っていた筈だと言うのに……。


「ああ、リダ様。もう来てましたか」


 朗らかな笑みをやんわりと作って答えたジャベリンは、程なくして私たちが座っていたテーブル席にやって来ては、ゆっくりと座ろうとする。


「ちょっと、私の席がないじゃないの」


 程なくして、トモヨさんが苦い顔になってジャベリンへと叱咤を飛ばした。


 こんな事を言ったのは他でもない。

 

 テーブル席は四人席だったからだ。

 現状で座っているのは、私とユニクスにフラウの三人。

 ここにジャベリンが加われば、四人が埋まってしまう為、一人余ってしまう事になる。


 そこで、ジャベリンが四人席の最後を埋めようとした所で、トモヨさんの叱咤が飛んだ訳なのだが、


「なら、お前はそこで立っていれば良いだろう? それか、マスターに頼んで補助席なり何なりを借りれば良い。一人だけカウンターでも問題はないだろう?」


 ジャベリンの返事は、実に慳貪けんどんスペシャルな物言いだった。


 ……うむ。


 やはり、この二人は和解してる訳ではなかったか。

 けれど……そうなれば、どうしてこの二人が一緒になってこんな所にまでやって来たと言うのか?

 どう考えてもミスマッチな二人が、揃いも揃ってこのタイミングで同じ店に偶然やって来たと考えるのは、何もかも不自然過ぎた。


「ユニクスは、何か知ってたか?」


「いいえ……特には……けれど、ジャベリンの方にはここのカフェに行くとだけ伝えて置きました」


 ふむ、なるほど。


 どう言う経緯で、ユニクスがジャベリンと会話をしていたのかは知らないが、ここにトモヨさんとジャベリンの二人が来ているのは、ユニクスの話を聞いた事が発端だと言う事だけは分かった。


 ただ、二人がここに来た目的だけは、サッパリ分からないと言うのが、私なりの素直な意見でもあるんだけどな。


 取り敢えず、当人に直接聞いてみた方が手っ取り早いだろう。


「なぁ、ジャベリンにトモヨさん。私にどんな用事があったんだ?」


 単刀直入に言って見せる。


 すると、


「今回の一件は……私の不手際でおかしな事態に突入してしまい、申し訳ありませんでした!」


 ジャベリンがいきなり謝って来て、


「リダさん……あなた、何をしたの? 今度はいきなりあなたに捜査令状が届いているんだけど……」


 トモヨは訝しい顔になって私を睨んで来た。


 実に両極端な態度だった。

 反面、トモヨの言い分は分からなくもない。


 私的に言うのなら、納得は出来ると言った所だろうか?

 理解は出来ない内容なんだけどなっ!


「トモヨさんの件については、正直にズバッと言うが……私も驚いている。どうしていきなり私に捜査令状が出ると言うのか? しかも、逮捕寸前だって聞いた……もう、メチャクチャ過ぎて笑えないんだが?」


「それはコッチの台詞……殺された被害者の方は、西側出身の元・冒険者だったらしいじゃない? 今は、普通に中央大陸で永住権を持っている普通の教師だったらしいじゃないの」


「……なぬ?」


 トモヨさんの話を耳にして、私は唖然となってしまった。

 これが事実であるのなら、リーナは密入国者ではないと言う事になる。

 下手をすれば、私を暗殺しようとしていた連中とは無関係である可能性すらあった。

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