驚きの始まり【14】
その後、念の為に精密検査を受ける為に、近所の病院へと向かい……と、まぁ色々あったのだが、どうやら命に別状はない……と言うか、根本的に健康体だから処方せんも出なかった。
一応、その後、先生に『先生、レズに効く薬はありませんか?』と聞いて見たのだが、そんな物はないと呆れ顔で言われた。
……ああ、やっぱりかと思ったけど、あったら本気で欲しかったなぁ……。
何はともあれ、こうしてユニクスの容態は問題なく、無事にその日を終えて行くのだった。
……ふ。
ようやく、私も日常が戻って来たな。
こうやって見ると、普段の日常……何もない普通の日がとてつもなく大切な気がする。
「普段は、全く考えない事なんだけどな」
誰に言う訳でもなく独りごちた……その時だった。
ポウゥゥ……。
机に飾ってあった水晶が光る。
…………。
「……おいおい」
思わず、苦い顔になってしまう。
このタイミングで光るとか……本気で勘弁して欲しいんだが……?
何となくだが、悪い予感しかしない。
けれど、私は水晶のお陰で助かった一面もある。
水晶をユニクスに見せていたからこそ、あの悲劇は回避する事が出来た。
実は、ユニクスからそれとなく話だけは聞いていた。
リーナに不意打ちを喰らい、体育館倉庫に閉じ込められていたらしいのだが……そこで火事場の馬鹿力状態で必死に抜け出し、私を助けてくれたのだと言う。
その背景には、やはり水晶が導き出した悲劇が大きいとも、ユニクスは語っていたのだ。
簡素に言うのであれば、それがどんなに悲惨な未来であったとしても、現実から一切目を反らす事なくしっかりと見据える事で、起こるかも知れない悲劇を回避する事が出来るかも知れない。
そうだ……そうなんだよ。
この水晶は、私に悪意があって、悲惨な未来を見せて来る訳ではない。
むしろ、そう言った悲惨な運命があるかも知れないから、気を付けて欲しいと願っての事なんだ。
……思い、私は机の上に飾っている水晶へとやって来た。
同時に真剣な顔のまま、固唾を飲む。
何だかんだ言って、怖い物は怖いんだ……くそ。
今度は、もっとマシな未来予想図である事を切実に祈ろう。
そんな事を考えながらも、私は水晶を手に取った。
仄かな淡い水色の光を放ち続ける水晶を手にした直後、いつぞやと同じ要領で、水晶の中から映像が生まれて来る。
映像の中では……何か、凄まじいのと私が戦っていた。
「何だよ……これ……」
相変わらず、良く分からない内容だな……。
色々な物を全部すっ飛ばして、いきなりハイライトを見せられている気分だ。
しかも、自分が経験していた事ではなく、これから起こる未来だと言うのだから……何とも不思議な気持ちで一杯だ。
しばらく、私と化け物の戦いは続き、均衡を保つ形での攻防戦が行われていた。
取り敢えず、何やら凄まじい化け物とのバトルへと向かう未来が待ち受けていると言う事だけは分かった。
背景を見る限り……ここは学園内かな?
校舎らしき物が見える。
戦っている場所は校庭だろうか?
「何で私は、こんな所でこんな化け物と戦う事になるんだろうなぁ……?」
現状の私では、全く予測も出来ない光景を前に、思わず唸り声を上げてしまう。
「……?」
背景に注目を置いて見ると、想像以上にとんでもない事になる事が良く分かった。
まず、犠牲者が半端ない。
昼間の学園……と言う事は、確実に生徒が学園内にいると言う事を意味している。
だからだろう。
背景からチラホラと見る限り、幾人かの生徒が犠牲になって倒れているのが分かった。
「……ぐむぅ」
私は顎に手を当てながらも、苦い顔になった。
実に大問題だ。
この調子だと、死人が出ている可能性もある。
しかも、緊急搬送されている様子もない。
これはきっと、学園に化け物がいるせいで、レスキュー部隊が学園の中に入る事が出来ない為だろう。
……そして。
最後に、私が超強烈な技を使って、化け物を倒すシーンがある。
……ああ、この技、もう水晶には分かるのね。
「睡眠学スキルでやっとこ完成させた技だったんだけどなぁ……」
どちらにせよ、水晶は未来を映しているだけなので、私の技を見ていたとか、そう言う事ではないんだろう。
ただ、そこで大きな悲劇が起こっていた。
私の膨大過ぎるエネルギーによって……学園が見事に崩壊していた。
「…………」
私は絶句する。
つまり、今回の水晶が導き出した予告は、
「この調子で行くと、私が学園を木っ端微塵にしてしまう……と言う事かよ」
なんてふざけた予告を入れて来るんだろうか……?




