驚きの始まり【13】
「まぁ、良いじゃないですか? もう終わった事なんですし」
すっかり意気消沈していた私を見て、ユニクスは慰める様に言う。
確かに、今はくよくよしている場合ではない。
まだ、完全には終わっていないのだから。
「……そうだな」
けど、完全に回復をするには、もう幾ばくかの時間が必要なのも確かで……はぁ。
それでも、ユニクスに無駄な心配を掛けたくはない。
ただでさえ、コイツは心配性な部分がある。
そんなユニクスを前に、いつまでもしょげていたら、きっと不必要に気を遣わせる事になってしまうだろう。
だから、空元気ながらも笑顔を作って見せる。
「ありがとう。今の言葉で元気が出たよ」
「そうですか? 良かった」
ユニクスも笑みで返して来た。
そこから、その笑みが微妙に艶やかな……と言うか、妙に色気のある笑みに変わっていた。
例えるのなら、本来の使い道は異性に対して向ける為にある様な笑み……って、こらこらっ!
「それより、リダ様? 先程は、私の為に怒ってくれた事……心から感謝します。リダ様の愛を感じました」
「い、いや……まて、ユニクス。お前は大きくでっかく、凄まじい勘違いをしているっ!」
「どう勘違いすると言うのです? あの解釈は、もう私を愛しているまたは溺愛しているの二択しかありませんよねぇ……?」
どう言う二択だよっ!?
しかも……それ、どっちも同じ意味だよなっ!?
ポッと頬を赤らませて言うユニクスに、私は思い切り焦り出す。
ヤバイ……ユニクスの病気が、完全に発症してしまった。
私は、ユニクスが掛かっている病気……慢性同性愛病と言う不治の難病を前に、額から汗が止まらなくなっていた!
取り敢えず、処方せんはない。
てか、マジで勘弁しとけよっ!
「いい加減にしとけ? 毎回思ってるけど、私にはそう言う気なんかないからな? 普通にレズとか無理だからなっ!」
完全なる拒絶反応をハッキリと見せていた私がいた所で、
「これで大丈夫ですかね?」
ニッコリと笑みを作っていたユニクスは……男に変わっていた。
何か久しぶりに見たが、自分の中にある混沌の度合いを増幅させると、秩序の中にある法則が無くなり、性別を自由に変化させる事が可能になる。
……いや、だから。
「そう言う問題だけど、そう言う問題じゃないからなっ! 私はもう、お前を男とかに見えないし!……てか、本気でそう言うの止めろっっ!」
遮二無二がなり立てる私がいたが、ユニクスは全く素知らぬ顔をしてから……。
「大丈夫ですよ、リダ様? もうもう……本当、愛してますリダ様ぁっ!」
ドォォォォンッッッ!
いよいよ、本気で私を襲いそうな勢いで……なんか、公園で越えては行けない禁断の行為に突入して行きそうな状態になって来た瞬間、ユニクスは壮大に爆発した。
……あ、やべっ!
うっかり、最大火力で爆発させてしまった。
補助魔法に補助スキルまで追加し、私の能力が尋常ではない勢いで倍加していたのを忘れていた私は、自分も貞操の危機を本能で感じたのか? ついつい最大火力で超炎熱爆破魔法を放ってしまった。
ユニクスもカオスモードになってて良かった……。
「ああ……リダ様の愛が……愛が……熱い……」
答え、ユニクスは真っ白に燃え尽きた状態で気を失って行く。
「ユニクス! 気を確かに持て、傷は浅いぞぉぉっ!」
そこから、私は必死になって蘇生魔法を発動させる羽目になって行くのだが、余談程度にして置こう。
○⚫◎⚫○
翌日。
「……何にせよ、脅威は去ったと考えて良いのかな」
等と言いながら、私は普段通り制服に着替え、学園に向かう準備を進めていた。
水晶の通りで行くのなら、私はもう既に他界しているのだろう。
しかし、そうはならなかった。
死んだかも知れない運命だって……自分一人ではどうする事の出来ない絶望だって、乗り越える事は決して不可能ではない。
今回に関して言うのなら、ユニクスに感謝しないと行けないな。
ああ、そうそう。
ユニクスと言えば……昨日、私の特大・超炎熱爆破魔法を喰らって、見事なデットオアライブ状態になってしまったのだが……必死で蘇生魔法をした甲斐もあり、なんとか一命を取り留めた。
……いやぁ、今回は流石にやり過ぎたな!
睡眠学のスキルの成果が見事に出たと述べて差し支えないのだが、私の魔力は自分の予想以上に上昇していたらしい。
これはある意味で嬉しい誤算だったかも知れないな。




