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驚きの始まり【11】

「???」


 私は見事に錯乱した!


 え? 私を殺そうとしたのが、ユニクスで……でも、止めているのもユニクス?


「リダ様! 惑わされてはなりませんっ! そいつは偽物ですっ!」

 

 いや、そんな事は分かっていたんだよ。

 けど……ユニクスは意識を乗っ取られていた訳で……?


 でも、なんか今、二人いるし。


 もう、ハッキリ言って何がどうなっているのやら?


「リダ様! 我々は最初からコイツらの情報に踊らされていたんですよっ!」


 ユニクスは必死の形相になって叫んでいた。


 情報に……踊らされていた……だと?


「ま、まさか……っ!」


 ユニクスがそうと叫んだ瞬間、私の中にあった謎が解けた。


 正確に言うのなら、まだ残っている謎はあるのだが……そうじゃない。

 私達が掴んだ情報は、完全なる向こうの誘導作戦だったと言う事だ!


 もしそうであれば、全部の辻褄が合う!


 例えば、意のままに操ると言う能力を持っていながらも、私を真っ先に狙わなかった事。


 この理由は簡単だった。

 答えは、出来る訳がないからだ!


 ……そう。


 蓋を開けてみれば実に答えはシンプル。

 最初から『そんな能力などなかった』が正解だったのだから。


「……そう言う事だったのか」

 

 言った、私はニヤリと笑みを作った。


「……チッ」


 他方のユニクスもどきは、ここに来て初めて動揺の色を濃くして来た。

 そして、現状と言う物を冷静に考えたのだろう。


「まぁ……いいさ。私が死んでも、まだまだササキの仲間はいるんだ。精々……足掻く事だね」


 言うなり、私目掛けて特攻を仕掛けて来る。


 ……アホなの?


 私は攻撃して来たユニクスもどきの攻撃を避けると同時に魔導式を頭の中に紡ぎ出し、


 スーパー攻撃力上昇魔法オフェンスアップレベル99!


 スーパー防御力上昇魔法ディフェンスアップレベル99!


 スーパー身体能力上昇魔法スピードアップレベル99!


 スーパードラゴン呼吸法ブレイズレベル1!


 その能力を一気に解放した。


 瞬間、

 

 ボフゥワァァァァァッッ!


 周囲に竜巻染みた旋風が出現し、


 ゴゴゴゴゴゴッッ!


 大地が激しく揺れた。


「……っっ!」


 ユニクスもどきは、私の周囲からやって来た衝撃派を何とか堪える形で立ってはいた物の……圧倒的なエネルギーを前に、何もする事が出来ずに立ち尽くす事しか出来なかった。


 歪んだ顔は恐怖でクシャクシャになり……カタカタと小刻みに揺れる身体は、少しでも気を強く持っていなければ失神してしまいそうなまでに、精神的なダメージを受けていた。


 だけど、私は許さない。


 お前は、大きな間違いを犯してしまった。


「なぁ、あんた……名前は何て言うんだ? せめて三千世界に旅立つ前に、名前くらいは聞いてもバチは当たらないだろう?」


 私はやや睨みを効かす形で、ユニクスもどきに答えた。


「……ひ、ひぃぃっ!」


 その瞬間、ユニクスもどきがペタンと尻餅を付く。


 もう既に戦意を喪失している事が、この事からも明らかになった。


「リダ様……もう良いでしょう」


 勝負有り……そう思ってか?

 ユニクスは、私へと助言する形で口を開く。


「……いや、ダメだ。コイツはユニクスをダシに使った……最初から素直に私だけを狙えば良かったのに、それでも余計な悪知恵を使って……人間として最低な方向から私を暗殺しようとした」


 それが許せない!


「……そうですね。お気持ちは分かります。私が逆の立場であったのなら、コイツを八つ裂きにしてしまうでしょう」


 そこまで答えたユニクスは私を背中から抱き締めた。


 ……は?


「な、何するんだよ! いきなりっ!」


「そのお気持ちが、私にとって掛け代えのない宝物です! だから、お止め下さい! 私ごときの為に……私なんかの為に、怒り悲しみ……そして、殺生をしてしまう。私はリダ様が抱いた怒りだけで十分です! その手を無駄に血の色で染めなくても……良いのです」


「…………」


 抱き締めたまま、切実に言うユニクス。

  

 全く。

 敵に情けを掛けるとか……もう、なぁ……。


「お前、本当に悪魔かよ……?」


「今は人間です。人間は罪を憎みこそつれ、人は憎みません。コヤツには相応の罰を与えるとしても……リダ様がわざわざ自分の手を汚すまでもないでしょう。裁きはきっと……西側諸国の仕事です」


 ……まぁ……そうな?


「やれやれ、お前には口じゃ勝てないな」


 嘆息混じりになって、私は苦笑する。

 やっぱり、ユニクスは勇者なんだろう。

 悪魔ではなく……人間なんだ。


 思った私は、


「運が良かったな? お前を殺すのは止めだ……ああ、でも名前だけでも聞こうか? そこはちゃんと聞かせて貰うぞ?

 

 未だへたり込んだままでいるユニクスもどきの前にスゥ……と掌を向けて答えた。


 簡素に言うのなら、名前も言えないなら殺すと言う合図だ。

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