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驚きの始まり【10】

 体躯はユニクスの物であったとしても……中身は全くの別人だ。

 全く……世の中ってのは凄い物だ。


 こんな能力を使って来るヤツがいるのだから。


「参りましたね……」


 ユニクス……と言うか、ユニクスっぽい女は言う。

 顔ではそこまで困っている様には見えないが……飽くまでも表向きは困っている態度を見せていた。


 結局、ヤツの考えからするのなら、まだまだ自分に有利な状況が傾いていると言う事なんだろう。

 結果的にではあるんだが、ユニクスの思考を乗っ取っていると言う事は、ユニクスの身体を一方的に支配していると言う事実に直結しているのだから。


 そうなれば、ユニクスは事実上コイツの人質状態だ。


 故に、私は真剣な顔になって答えた。


「なぁ、ユニクスやってるアンタ……私が死ねば、ユニクスはちゃんと解放してくれるか?」


「……これは目的の為の道具でしかないから、目的が達成出来たら、後は必要ない。解放するも何もない話だと思うんだけど?」


 ……?

 何だろう?


 今、妙な違和感があった。

 

 私の台詞を耳にした瞬間、ユニクスっぽい相手が、少し驚いていた気がする。

 その証拠に、一拍置く形で返事がやって来た。


 何を隠していると言うのだろう?


「一つだけ聞きたいんだが……」


「内容によっては、答えてやらなくもないけど?」


「お前は、本当にユニクスなのか?」


「ノーコメント……ただ、一つだけ私の方かも言わせて貰う。私の目的はあんたの暗殺。このユニクスって子は関係のない存在だから、この私がユニクスって子に殺されそうにでもならない限りは、何もしないと約束しても構わないよ」


「……本当か?」


「誓っても良いねぇ……ふふふ」


 ユニクスもどきは、笑みを強めて答えた。

 ハッキリ言って、余り信じられた話ではない。


 ……ないけど、だ?


 この時、私は思ったのだ。


「ユニクスを……いや、学園のみんなを狙う事なく、素直に西へ戻ると約束するのなら、私は素直に殺されても構わないぞ」


 いつになく落ち着いた笑みを作る事が出来た。

 そんな気がした。


「そう言ってくれると思った」


 ユニクスもどきも笑みを強めた。


 ああ、こう言う事か。


 私が水晶の映像で見ている、まさにそのままの光景が、多分今のユニクスもどきから映っているのだろう。


 正直に言う。

 私だって死ぬのは怖い。


 けれど……。


 今のみんなを死なせてしまう事が……もっと怖い。


 あいつらは、私にとって大きな希望なんだ。

 ユニクスはもちろん……フラウも、ルミも……ルゥだってそうだ。


 みんなが頑張れば、世の中は変わる!


 私がここで居なくなったとしても……みんなが、私の意思を継いでくれる!


 眼前のユニクスもどきの言葉は信じられないけど……私にとって希望のある未来を作り出せる意思を継続してくれるだろう仲間達の気持ちは、絶対的に信用する事が出来る!


 ……なら、それも一興。


「約束しろよ? ちゃんと手を出さずに帰れよ?」


「ええ、約束しましょう? 私達が誓いを立てたコードネームの名に掛けて……ねぇ」


 コードネーム……か。

 そう言えば、ササキと言う名前だった。


 可能性として、私の前世に関係している……かも知れない名前だった。

 

 本来であるのなら、その部分も鮮明にして起きたかったんだが……まぁ、良いだろう。

 ここで私が死ねば、そのコードネームに隠されていた何らかの怨嗟を絶ち切る事にも繋がる筈だ。


 …………。


 そうだな。

 やはり、私はここで死んだ方が良いのかも知れない。

 これ以上、仲間達に余計な気苦労を掛ける事もなくなるのだから。


「OK……分かった。殺せ。私は何もしない」


 言い、私は完全に構えを取る事なく、ユニクスもどきの眼前にまでやって来た。


「聞き分けの良いおバカさんで助かったよ……本当、東の連中は真面目過ぎるねっ!」


 ドゥッ!


 くはっっ!


 強烈な一撃が私を襲う。

 ……しかし、これが致命的になるとは思えない。


 ……なんだ?

 ここまで無防備であるのなら、一撃で私を殺せば良い物を?……かはっ!


 そこから以降、私はヤツのサンドバック状態になって行く。


 途中で気付いた。

 ああ……そう言えば、映像の私はアチコチに打撲の跡や切り傷なんかがあったな。


 途中、手刀の要領で切り傷も幾つか受ける……はは、なるほど。

 私にどんな恨みがあるのか知らないが、楽には殺してはくれない訳か。

 心の中で乾いた笑いを出してしまう。


 ……そして。


 私を鼻で笑う様に答え、右手を私の腹部へと撃ち放つ。


 これは、映像の通りだった。


 どう、映像の通りか?

 最後の一撃……この一撃を受ける事で、私の腹に風穴が開いて……私の最期となる瞬間が、まさに今の状態その物だったんだ。


 死ぬ間際だったからか?

 最期の一撃になるだろう、ヤツの拳がやけに遅く見える。

 まるでスローモーションでも見ているかの様だ。


 水晶が導き出した映像では、この後……私はコイツの拳が腹を貫通する事で、身体の中にある臓器が飛び出して来て……絶命する。


 ……さよならだ、みんな。


 私は一足お先に、三千世界へと旅立つ事にするよ。

 絶対に、この世界を良くしてくれ……。


 そう思いつつ、私は目を瞑り……殺されるのを待った。


 待ったんだけど……あれ?


「……?」


 いや、おかしいだろ?

 いくらスローモーションで見えたからって、ここまで時間が掛かる訳がない。


 余りにも不自然過ぎた私は、片目を開けてしまった。


 果たして。


 ヤツの右腕は、私の腹部でピタリと止まっていた。


 それを止めていたのは……ユニクス!?

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