驚きの始まり【9】
一通り話を聞いた私は、そこから寮への帰路についた。
病院から外に出る途中で私は、
「ユニクスの事は恨まないでくれ……頼むよ」
真剣な顔でキイロやミドリの二人に懇願した。
すると、二人はにっこりと笑みと作ってから言う。
「大丈夫だよリダさん。私達はちゃんと、ユニクスさんが本意でやっている訳ではない事なんて、知ってますから」
優しさのある声音で言うキイロと、
「ユニクスさんの性質は、これでも多少は分かっているつもりです。もちろん理解もしてます。リダさんの事が好きだと言う所も含めて、しっかりと理解しているつもりです。つまり、親友でもあります!」
気合いを入れて言うミドリがいた。
……どうでも良いが、そこまでの理解力を求めてはいなかったんだけどなぁ……?
「私的に言うと、ユニクスの恋情と言うか、レズ行為だけは拒否して欲しいかな?」
口元を引き釣らせて言う私がいた。
どちらにせよ、キイロとミドリの二人がユニクスに変な確執を持つと言う事は無さそうで何よりだった。
私に対しても、何処と無くトゲトゲしい部分もあったのだが、そこからイリを交えて幾分かの会話を交えて行く内に、気付けばアッサリ霧散して行った。
やっぱり、しっかりとしたコミュニケーションと言うのは大事なんだなと言う事を思い知らされる。
ルミやルゥ……メイの三人は、今日の所は院内で寝泊まりをするらしい。
そんな場所あるんだろうか?
少し疑問に思ったが……まぁ、多分あるんだろう。
もし院内になかったとしても、この近くにはホテルの類いがそれなりにあるから、そっちに泊まるのかも知れないな。
何にせよ、私は帰宅する事にした。
さぁ……て、明日からは普通に授業を受ける事になって行くのか。
それが、最近の私にとっての日常でもあったが……何だか、少しばかり懐かしい気持ちになっていたりもする。
何てか……この学園に来てからと言う物、退屈しないと言うか、色々あり過ぎると言うか……。
願わくば、もう少し穏やかな生活ってやつを望んでいる私がいるんだが……今の所は、その願いが叶う様子はない。
仕方がないと言う訳ではないんだが……ここで無いものねだりをした所で、何も解決しないだろう。
それならそれで、しっかりと自分の足で前に進むしかない。
ともかく頑張って乗り越えて行こうか。
そんな事を考えていた時。
「……ん?」
私はある事に気付いた。
病院から学園へと帰ろうとしていた帰り道。
空の太陽は間もなく沈もうとし……夕暮れが周囲を覆っていた。
そして、自分でも無意識だったんだが……帰り道に選んだルートは近所の公園を通るルートだった。
これは、単純に近道であったからだ。
果たして、私はそこに来て、周囲を見渡して……ある事に気付く。
藤が咲いている……と言う事に。
「……これって」
そして、私の服装が制服である事にも気付いた。
当初は午後からの授業をちゃんと受ける予定でいた為、服装は学園の制服に着替えていたのだ。
近所の公園……咲いてる藤。
制服姿の私。
そして……夕暮れ。
この条件は、まさに水晶が示した状態だった。
「……まさか、な……?」
流石に笑えなくなった。
もう、完全に水晶が予知していたシチュエーションが完璧な位に出来上がっていた中、
「リダ様!」
ユニクスの声がした。
「…………」
私は無言になった。
……ああ、こう言う事だったのか。
ふと、納得してしまった。
「なぁ、ユニクス? お前はここに『何をしに』来たんだ?」
「……へ? い、いや……リダ様を探しに」
「それは言い訳だな? フラウから聞いていれば、私が何処にいたのかなんて直ぐに分かった筈。それなのに、お前は来なかった」
「……ああ、ちょっと用事がありまして」
「なら言って見ろよ? その用事とやらと、イリの緊急入院が見合う内容なのかを知りたい」
「…………」
ユニクスは押し黙ってしまった。
きっと、しっかりとした答えを作って来ていた訳ではなかったのだろう。
それ以前に、私がユニクスを頭ごなしに怪しんで来ると言う行為自体……もしかしたら考えてなかったのかも知れない。
少なからず、眼前にいたユニクスは動揺の色を隠せないでいる。
……そして。
「そろそろ白状したらどうだ? 私はあなたを殺しに来ました!……とな?」
好戦的な笑みそのままに私は言った。
その瞬間、ユニクスの表情が激変して行く。
「いつから気付いてた?」
声音も大きく変化していた。
ああ、間違いない。
コイツはユニクスであって、ユニクスではないな……と。




