驚きの始まり【4】
私がどうして、皆の前から姿を消したのか?
私がそれからどうしたのか?
そして、どうして帰って来たのか?
これら、三つの内容を簡略的にではあるが、フラウに説明したのだ。
「なるほど……結局、リダは催眠を受けてないと分かったから、こっちに戻って来た……って訳か」
「そう言う事だ」
納得混じりのフラウに、私も軽く相づちを打ってみせた。
そこからフラウにそれとなく聞いて見る。
「それよりフラウ? 私がいない間に、学園の方では何か問題があったりしたか?」
「問題と言う問題ではないけど……うぅーん……そうだねぇ。リダが居なかった三日の間に、色々な暗殺者らしい生徒や教員とかいてさ? イリさん達が色々やってた見たい」
……なるほど。
「それは悪い事をしたな……」
私は顔でも申し訳ない表情を作った。
本当なら、その相手は私がする筈だったからだ。
きっと、イリは私が暗殺される事柄に関係する情報を色々と集め、その先に西側諸国から送り込まれた密入国者達を次々と撃破して行ったのだろう。
それにしても……捏造したんだろうが、この学園の生徒として侵入していたヤツもいたんだな。
そう考えると、ジャベリンの会社って……メチャクチャ悪どい事をしれっとやってた気もする。
まぁ、その罪は、こないだの騒動で粗方は精算したと思うし、密入国の仲介者をしていたのは、ジャベリンの元上司なのだろうから……ヤツを叩くのは私も本意ではないと言うか、何と言うか。
どの道、ここに関してはある程度までは目を瞑っておいてやろう。
世の中、清廉潔白な生き方ばかりが、正義ではないと言う事だ。
……悲しい事に、な?
どちらにせよ、その暗殺者集団に関しても、私は大本の供給源を断ち切り、更に暗殺を目論む連中のリストを正確に把握までしている。
これを鎮圧させる事に、そこまで苦労する事はないだろう。
……と、そう思っていた私だったのだが。
「そう言えば、イリは何処にいるんだ? 結構世話になったから、色々とお礼を言わないとな?」
こうと答えた私へと、フラウは言った。
「トウキの帝国医大病院だよ。一時は本気で死ぬかも知れなかったらしいよ」
呼吸するのを忘れてしまうまでに驚いてしまうまでの発言を……。
「……じ、冗談……だろ?」
顔から血の気が引いた。
あのイリが瀕死になった……だと?
イリの実力は折り紙付きだ。
睡眠学スキルによって、私の実力が向上した関係もあり……現状であるのなら、多少は私に分がある面もあるのだが、
「あいつは、実力的に見ても、私とそこまで変わらないんだぞ……?」
余りに衝撃的で……余りにも信じられない話だった。
しかし、フラウが嘘を吐いているとも思えない。
「そんな事を私に言われても……」
フラウは困った顔になって呟いた。
「イリが緊急入院してた関係で、ルミとルゥの二人も帝国医大に行ってるから……聞いてみなよ? イリさんがどんな感じで死ぬ一歩手前までの重体になったのかは、ルミやルぅの方が良く知ってるから」
「分かった! ありがとう!」
居ても立ってもいられず……私は超特急で、トウキの帝国医大へと向かった。
□○●○□
学園から、文字通り飛んで行った私は、トウキの中央エリアの一角にある巨大病院……トウキ帝国医大へとやって来ていた。
移動方法は色々あるのだが、馬車や飛竜と言った交通機関を使っている時間も惜しかった私は、そのまま滑空魔法を使った。
余談なのだが、飛行魔法と言うのが別にある。
……こっちは甚大な魔力を費やしている関係もあり、大体は魔導器を使用している(つまり原動機がある)魔法。
私の場合は、この原動機に当たる物を一切使わないので、根本的には滑空魔法となる。
……それでも、超高速で長距離を飛ぶ時は『飛行魔法』と言う表現をするんだけどな!
ちょっと紛らわしいので、敢えて答えて置こう。
……尚『別に統一で滑空魔法で良いのでは?』と言う、実に的を得た質問は……その、まぁ……その通りだとだけ述べて置こうっ!
ともかく、脱線もそこそこに。
私は学園から数分も経たずして、トウキ帝国医大へとやって来た。
物凄い勢いで受付に向かい、イリ・ジウムと言う患者がいないかを問い合わせた所……未だ集中治療室の中におり、面会謝絶状態にあると言う。
…………。
聞いてはいたけど……いざ、病院の受付で言われると、より生々しいと言うか……妙な実感が沸いてしまい、思わず絶句する私がいた。
一体……何がどうなっていると言うのだろう?
あのイリが、こうも簡単に病院送りとか……あり得ない!




