真相究明の始まり【21】
……まぁ、最近は仕事してないから、地味にこの権限を使うのに気が引けるんだが!
ここらについては……えぇと……そのぅ……ちゃんと会長に復帰したらやろうと思う。
ともかく、会長権限でジャベリンの会社をバックアップして行く方向で、概ね決定して行った。
結果……しばらくは混乱が続くかも知れないが、大量の退職者を出す事には至らないとの事だった。
むしろ、遠い目で見るのなら収益が上昇して行くんじゃないかなと思う。
……そして。
「リダ様……この度は、弊社の危機を救って頂き、誠に有り難うございます」
翌日には自由の身になっていたジャベリンが私の邸宅を訪ね、深々と頭を下げて来た。
「別に感謝する必要はないぞ? 最初は完膚無きまで叩き潰すつもりで、お前の所にけしかけて行こうとしていたんだからな」
頭を下げて来たジャベリンに、私は軽く右手を横に振って答えた。
救ったのは私かも知れないが、潰そうとしたのも私なのだから……結果的にどっこいどっこいで良い様な気がした。
「最初は私達がリダ様暗殺に荷担したのが発端なのですから、自分達が相応の罰を受けるのは当然です……なのに、あなたはむしろ我々を救った……心からの敬服をしたいと思います」
そこは、せめて感謝と言う単語を使おうよ……。
全く……こっちが恐縮しちゃうよ。
慇懃なばかりに頭を下げて来るジャベリンに、私も返答に困る気持ちで一杯になっていた。
後日談になるのだが、一連の騒動が原因で会長が失脚。
まだ、討議中ではあるのだが、順当に行けばジャベリンが総代表として会長になる事が大方決まって行きそうだと言う話だ。
「約束通り……私は、リダ様の忠実な下部として、今後は粉骨砕身の気持ちで精進して行こうと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします」
「ああ、そう言えばそんな約束をしてたなぁ……」
何から何まで畏まっているジャベリンに、私は完全に根負けする形で声を返していた。
そんな時だった。
ガチャッ
リビングのドアが開いた。
「リダ様、お茶をご用意しました」
答えたのはユニクスだ。
ユニクスは、二杯の紅茶が入ったティーカップを盆の上に乗せた状態でやって来る。
そして、格好はまさかのメイド服だった。
「お前……まだそんな格好してるのか……?」
「当然です……アシュアには負けたくありませんからね」
どうして、変なトコで妙なライバル心を燃やしてるんだよ、お前はっ!
「ユニクスなのか?……まさか使用人の様な格好をして来るとは予想外だったが、何を着ても麗しい。私の屋敷に永久就職してくれたのなら、この上ない幸福なのだが」
「冗談でも同じ事を言うな……次言ったら、お前の屋敷を焼け野原にしてやるからな……」
ユニクスの格好を見た瞬間に恍惚の表情を作ったジャベリンに、にべもない台詞を剣呑な表情とセットで返したユニクス。
一見すると冗談めかした台詞に感じるが、きっと冗談でも何でもなく、本当にやりそうだから怖い!
「つれない事を言うなよ……今後は、互いにリダ様に仕える身同士、仲良くやろうじゃないか」
けれど、ジャベリンも負けてないらしく、明らかな敵意を見せているユニクスを相手に、全く気にする事なく声を掛けていた。
うむ!
その意気や良しっ!
「そうだな。今後はユニクスとも仲良くしてくれ。きっと色々と大変な事とかあるかも知れない。場合によってはジャベリンを頼る事もあるだろうし、こちらからも頼むよ」
「リ、リダ様ぁっ! 本当、そう言うの止めて貰えません? 私は、リダ様以外を慕う心は持ち合わせておりませんからっ!」
カラカラと明るく笑った私に、ユニクスは瞳から涙まで流して叫んでいた。
毎回思うが、お前……ちょっと泣き虫過ぎないか?
それに……だ?
「毎回思うんだが……お前って、男に惚れられる立ち位置って言うか、普通なら主人公の立ち位置って言うか……本当に色々な男に求愛されるよなぁ……?」
私はジト目になってユニクスを見る。
真面目な話……コイツの魅力に、沢山の男が群がるイメージしか私にはない。
……毎度毎度の事だけに、今更こんな事を言うのもアレなんだけど……どうして、いつもコイツなんだよ……?
たまには、私がその立ち位置になっても良いんじゃないか?
てか……私の場合、必ず大きなオチが待ち構えていて、もし私にお鉢が回って来ても、実は何らかのオチがフラグとして成立してるんじゃないかと、妙に勘ぐってしまう。
そんな心境に陥ってしまうまでに、悲しいオチが最後に待ってる事が多いからだ!……くそっっ!
他方、ユニクスはそう言う事もない訳だよっ!
一例で行けば、今回のジャベリンだ。
良い男で金持ちで玉の輿スペシャルな男だ。
私なら、もうこれで手を打っても良いんじゃないかとマジで思えるぞ!
つまり、ユニクス!
お前は贅沢者だっっ!




